
国立西洋美術館から、徒歩約10分で、東京藝術大学の上野キャンパスに到着します。

学生や教職員以外の一般の方も、入り口の守衛さんに一声かけて中を見学することが可能です。ただし、高価な楽器や芸術品が敷地内にあるため、盗難の恐れがあることや、音楽側のキャンパスでは既にプロの学生さんがいて、熱心なファンがいることもあり、立ち入れる所は、美術館やコンサートホール、アートプラザや生協など、お客さんの立場になれる場所のみになっています。

東京藝大上野キャンパスは、美術側と音楽側に敷地が二分されており、生協の売店と食堂は、音楽側になります。

アートな外壁に(藝大らしいな)と思いましたが、こじんまりした食堂に足を踏み入れて驚いたのが、ピアノが計三台置いてあったこと。

何かイベントの時に弾くのか、それとも誰でも、気が向いた時に奏でるのか。大学生協の食堂にピアノが置いてあるのは、日本全国でもたぶん東京藝大だけの気がします。

今回の一番の目的は、美術側の構内にある「藝大アートプラザ」に立ち寄ることでした。

行く道すがら、さっき国立西洋美術館でいろいろ見た、ロダンの手による彫刻がナニゲに置いてあることに気づいて、ココが東京藝大であることを実感します。

さてこちらのアート・ギャラリーでは、藝大関係者の方々による、多種多様な分野のアート作品を展示そして販売もしています。店舗形式なので入場無料、写真撮影OK、SNSでもどんどんシェアしてください、という貼り紙もありました。
「日本中の家をアートだらけにする!」ことを目標に掲げ、アートを皆にいろんな形で楽しんでほしいというコンセプトで、藝大と小学館が協同で運営されています。
🎨藝大アートプラザで印象に残ったこと🎨
ほとんど全てが購入可能なアート作品なので、服飾やアクセサリー、生活雑貨や小物なら1~2万円から買えるものもあります。
中には、数百万円の絵画もあったりして、作品とその値付けも興味深く拝見しました。

入口の左側奥が、『リハビリテーション』という作品のインスタ映えしそうなアート・スペースになっていて、四国在住の私には馴染みがある「瀬戸内国際芸術祭」を思い出しました。来られた人に、美術館に来たような気分を味わえるようなスポットをきちんと設定しているのが(さすがだな)と思いました。ちなみに、壁に飾ってある作品も、購入できます。

今回は、まずどういうものを実際に販売されているかを拝見にだけ来ておりましたが、何か買うつもりで来ていたら、この招き猫が「かわいい💛」と思ったので、ウチに連れて帰ったかもしれません。マツエクがバチバチのおめめですが、これぐらいインパクトがあった方が、実際に福を招いてくれそうに思います。色彩もいいな、と思いました。

それから、日本地図のイヤリング・ピアスも面白い。言われてみたら、なぜ普通のお店で日本地図モチーフって販売してないんだろう?と逆に不思議に思いました。

アートプラザに入ってすぐの場所に『藝大七福神』というステッカーを販売していて、木箱の中に入った原型のフェルトで作った七福神は非売品ですが、それを基に作成したステッカーは購入できます。ココでは唯一、気軽に買える価格だったので、皆へのお土産はこれにしました。アートプラザの別売り紙袋に入れて渡すと、喜んでもらえましたよ。

私の訪問時には『藝大動物園』というテーマで、動物の作品の展示がありました。

『自分がのり巻きだと気付いて衝撃を受けるハチワレ(ねがみくみこ、2024年)』が面白かったです。私の家では、ハチ割れ模様の犬を飼ったことがありますが、人間でいうと真ん中わけの前髪みたいに見えて、頭のハチ割れ模様は可愛いですね。人間でないから、猫や犬は「自分がハチ割れで可愛い」ことに無自覚で無頓着なのが、人から見たら他の動物のいいところです。
店内が広く、フラッと立ち寄って、いつまでも沢山ある作品や商品を見ていてもいいので、半時間ぐらいココで過ごしたと思います。

書籍の販売も、レジの向こう側でしています。そのコーナーの、大学図書館に向かう廊下の照明が暗めのスペースで、通路を行き交う人には背中を向けて、クジャクの羽のような植物の柄の絵を、Tシャツに彩色している方がいらっしゃいました。広い机の上には、絵の具や色彩があふれているパレットも置かれていました。
(実演販売かな?)と思って描いている姿に、そっと後ろから近づいてのぞき込むと、祈りを込めるように一筆一筆、この上なく丁寧に色を載せていっている姿がありました。
今この時は一瞬ですが、一瞬を永遠に遺すというか、そういう愛情にあふれた指先の動きで色を載せていきます。
私もそうですが、絵心が多少ある人なら誰でも子供の頃に、好きなマンガ作品やポスターなど絵画作品を模写したことがあると思います。(そうだなぁ、こうして一筆一筆、時間を忘れて輪郭を描いて、色をのせて絵を描いたなぁ)と、昔を懐かしく思いだしました。

そして、アートって、手仕事なんだな、とあらためて思いました。日頃、腕や手や指に感謝することも無いですが、手があるから世界に感動を与えるような芸術作品が生まれる。指があるから、キーボードを打って、こうしてブログも書けるし、言語芸術である文学作品が生まれる。腕も、人間はひじの所でグリグリ反転させれられますが、猫や犬など他の動物にはできない。だから、いろんな技術や技能が人間だけに発達した、と言われています。

話を元に戻して、この上なく大事なものに接しているような細心の注意をはらう筆使いに、自分の肌の上への化粧でも、こんな指使いでないな、と思いました。
愛情をもって、いたわるように筆を操る手が、本当に美しいと思いました。立ち居振る舞いの美しさって大事ですが、私も、できるだけ何事も丁寧に、心を込めて対処したいな、とつくづく思いました。
どこでも実際に行ってみると、いろいろともの思わせる出来事に思いがけなく出会い、日頃の自分を俯瞰して我と我が身を振り返ります。これも旅行で現地に足を運ぶ醍醐味ですね。