Co-BusinessMate

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店舗データって何?(概略編)

2024年07月26日 20時00分00秒 | あえて誰も言わない雑記
近年、日本でも市場調査(マーケティングリサーチ)が可能な店舗(常設もしくはPopUpストア)というのもが増えているようです。なかでも2000年に上陸した「b8ta」は、よく知られていると思います。そして現在では、リサーチ主体の体験型店舗だけでなく、販売を主とした売場などでもデータ収集と提供を謳ったサービスがあるようですね。
 ◀動線追跡が可能な体験型店舗
「データが取れる」という事に興味を持つ経営者の方は多いようで、私たちも過去に何度かそうした店舗を利用しました。そこで改めて「データが取れる」とはどういう事なのか?を考えてみたいと思います。何故なら「店舗データ」が示す意味、そしてそれらデータの活用については、存外、理解が浅く、なかなかその後の事業成果に結びつけられないといったケースが多かったという印象があるからです。

【店舗データあれこれ】
1.POSシステム
店舗データとして、最もよく知られるのは「POS(販売時点情報管理 )システム」でしょう。
これはその名の通り、実際に販売が成立した時点でのデータとなります。
POSの活用は、CVS(コンビニ)がその母体であるSM(スーパーマーケット)の売上を凌駕する躍進を遂げるに至った主要因とされます。その後はPOSレジの普及により個人でも販売データの取得が可能となりました。
POSから得られたデータは、効率的な仕入れや在庫の管理に利用できます。
 ◀レシート枚数も重要基軸の一つ
データには、商品とその販売数や価格のほか、客数や日時、天候、顧客の年代や性別などのデモグラフィックデータなどが含まれます。以前は年代や性別を店員さんの主観で手入力していましたが、現在はAIカメラによる判定が主流で、これがまた相当に正確だったりします。年齢不詳と言われる筆者も一発で実年齢を判別されました 😅 
またID-POS分析により顧客の特定(ポイントカードはお持ちですか?ってやつです)も可能となり、感覚に頼っていた頻度の数値化も実現され、売れ筋と頻度品を正確に判断できるようになりました。

2.AIカメラによる動線追跡
 ◀商品毎のデータ取得が可能
近年、重要な店舗データのひとつに顧客の動線(挙動)追跡があります。
顧客が店舗内をどのように動くのかを追跡する事で、特定の商品(棚)にコミットしたか?しなかったか?を判別します。POS同様、デモグラフィックデータの取得が可能なAIカメラもあります。
動線追跡は主に購入に至らなかった顧客の「心理フェーズ」の解析に利用します。
要は、商品に気付いたか?() 興味を持ったか?() 購入を検討したか?() などを数値化するというものです。
上の推移グラフは店舗全体の動線データを分析した一例ですが、実に多くの人が商品に気付きながらも、その半数しか興味を抱かず、さらに購入を検討した人は数%だったという事実が解ります。そして実際に購入(POSにデータを残す人)する割合は、さらに少ないのです。

3.デジタル端末(スマホ、タブレット、PC)の位置情報
スマホの位置情報を利用する事で、店舗外の人流を知る事が出来ます。
 ◀Wi-Fiのアクセスポイントなどで取得
もちろん全ての人の位置情報を取る事は出来ませんし、法的な問題もありますが、仮に1割程度であっても人通りの何%が入店したか?などを気象条件や時期、時間帯とともに知る事ができます。

4.アンケートや聴き取り(定性データ
アンケートの自由記述や聴き取りによって顧客から直接得られるデータですが、これはやや取扱いの難しいデータと言えます。
設問や接客の在り方によりデータの信頼度も変わってきますし、取得データの解析にも特別なスキルを必要とします。しかしながら、非常に重要で有力な情報である事に間違いはなく、特に商品やブランド(店舗)のファンから得られる情報というものは非常に貴重です。逆に大量サンプル数のデータを平準化するリサーチのみで、個社が現在のマーケットを切り開いて行く事はひどく難しいかもしれません。
 ◀回答を話題と是非で定量化
私たちは比較的少ないサンプル数や短いリサーチ期間で得られた定性データを、複数のTOPIX(話題)で切り分け、是非のランクで定量化する事である程度のマーケット傾向を読み取るノウハウを持っています。

5.結論
店舗データについて最も重要な事は「データの取得」ではありません。
「データから~が解った」
で終わっては何ひとつ解決はありませんし、また活かせない情報を得ても意味はありません。
もしPOSデータの活用によりCVSが飛躍したのであれば、全てのCVSが躍進したはずです。皆さんが知る事実はどうでしょうか?
データとは単なるツールでしかありません。その使い方こそが重要となります。
使い道は大きく分けて、以下の2通りになると考えます。
「自社の都合が有利になるように使う」
・例)在庫を絞り、発注を絞り、売れ筋と頻度品を増やし、低頻度品は扱わない
「顧客の都合が有利になるように使う」
・例)顧客タイミングを考慮した発注と品出し、一定頻度が在れば品揃えを増やす
もちろん二極に分けて、どちらを選択するのか?という話ではありません。
前稿でもお話しました通り、事業の躍進にはお客さまの事を知る必要があります。
店舗データは、そのための一つの術であると私たちは考えます。

次回は、物を「買う」という行為について考えてみます。