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診断から治療までの時間は新たに急性骨髄性白血病と診断された患者の予後に影響するのか?

2020-08-20 12:27:04 | 急性骨髄性白血病

Does time from diagnosis to treatment affect the prognosis of patients with newly diagnosed acute myeloid leukemia?
Blood. 2020 Aug 13;136(7):823-830.  doi: 10.1182/blood.2019004583.
PMID: 32496541

新たに急性骨髄性白血病(AML)と診断された、治療に適した患者については、速やかに治療を開始することが推奨されている。これは未治療の急性白血病の予後が不良なためである。著者らは診断から治療開始までの時間(time from diagnosis to treatment start, TDT)と予後の間の関連について、German Study Alliance Leukemia-Acute Myeloid Leukemia (SAL-AML) registryから得られた実臨床の大規模データセットを用いて探索した。

強力な誘導治療を受けて12ヶ月以上のフォローアップを受けた、急性前骨髄球性白血病以外の全患者を選択した(n = 2263)。著者らは、既知の予後因子を調整した上で、TDTを0〜5日、6〜10日、11〜15日、>15日の群に分け、TDTが寛解、早期死亡、全生存(OS)に及ぼす影響について、単変量解析で解析した。

TDTの中央値は3日(4分位範囲2〜7日)だった。調整前の2年全生存率は、TDTの群で層別化すると、それぞれ51%、48%、44%、50%だった(P = 0.211)。既知の予後因子に従った多変量Cox回帰分析では、連続変数としてのTDTのハザード比は1.00だった(P = 0.617)。
全生存についての解析では、年齢が60歳以下または60歳超え、あるいは最初の白血球数が多いまたは少ないで別個に層別化しても、TDTの群間で有意な差はみられなかった。

著者らの研究は、TDTが生存と関連していないことを示唆している。AMLの強力なファーストライン治療の層別化は進歩しているため、TDTのデータは、臨床的に安定している患者に利用可能な最善の治療選択肢を割り付けるために遺伝子検査やその他の検査の結果を待つことが許容可能なアプローチであることを示唆している。

This trial was registered at www.clinicaltrials.gov as #NCT03188874.


未治療の成人バーキットリンパ腫を対象とした、リスク調整DA-EPOCH-Rの多施設共同試験

2020-08-17 13:44:36 | 悪性リンパ腫


Multicenter Study of Risk-Adapted Therapy With Dose-Adjusted EPOCH-R in Adults With Untreated Burkitt Lymphoma
J Clin Oncol. 2020 Aug 1;38(22):2519-2529.  doi: 10.1200/JCO.20.00303.
PMID: 32453640  PMCID: PMC7392744 (available on 2021-08-01)

目的
バーキットリンパ腫はアグレッシブB細胞リンパ腫であり、小児の白血病レジメンに由来した用量強化化学療法により治癒し得る。治療には急性毒性と晩期後遺症がある。著者らは、用量調整EPOCH-R (DA-EPOCH-R)により成人のバーキットリンパ腫治療において用量を高度に強化した化学療法が不要になる可能性があると仮説した。

方法
著者らは未治療のバーキットリンパ腫成人患者を対象とした、DA-EPOCH-Rの多施設共同・リスク調整試験を実施した。低リスク患者はCNS予防なしで化学療法を3サイクル受け、高リスク患者はCNS予防のための髄腔内投与を併用した6サイクルの化学療法を受けた。主要評価項目は無イベント生存で、副次評価項目は毒性と、EFSと全生存(OS)の予測因子とした。

結果
2010年から2017年までの間に、22施設の113人が参加した。このうち98人(87%)が高リスクに該当した。年齢の中央値は49歳(range 18〜86)で、62%が40歳以上だった。骨髄またはCSF浸潤がみられたのは29人(26%)で、28人(25%)はHIV陽性だった。
観察期間の中央値は58.7ヶ月で、EFSとOSはそれぞれ84.5%と87.0%、そしてリスク別では低リスク群のEFSは100%、高リスク群のEFSは82.1%だった。治療はいずれの年齢群においても同様に有効であり、HIV感染の有無やIPIのrisk群間でみても同様に有効だった。
CSF浸潤が急性毒性関連死亡または治療失敗の最大のリスクであった。治療中の治療関連死亡が5件(4%)みられた。発熱性好中球減少症がサイクルの16%でみられ、腫瘍崩壊症候群は稀だった。

結論
リスクで調整したDA-EPOCH-Rは成人のバーキットリンパ腫患者に対して年齢、HIV感染状況に関わらず有効であり、忍容性も良好だった。CSF浸潤のある成人に対する治療戦略の改良が必要である。
funded by the National Cancer Institute; ClinicalTrials.gov identifier: NCT01092182


骨髄腫腎による急性腎傷害を呈した患者を対象としたボルテゾミブベースに2剤または3剤併用レジメンの比較試験

2020-08-17 12:18:50 | 多発性骨髄腫

Randomized Trial Comparing Double Versus Triple Bortezomib-Based Regimen in Patients With Multiple Myeloma and Acute Kidney Injury Due to Cast Nephropathy
J Clin Oncol. 2020 Aug 10;38(23):2647-2657.  doi: 10.1200/JCO.20.00298.
PMID: 32574117

目的
骨髄腫腎(myeloma cast nephropathy; CN)と、透析を必要としない急性腎傷害を呈した患者を対象に、ボルテゾミブをベースとした2剤併用レジメンと3剤併用レジメンについて腎機能の回復と忍容性プロファイルを比較した多施設共同・比較対照試験の結果を報告する。

方法
対象患者に対症療法と高用量デキサメタゾン投与を行った後、ボルテゾミブ+デキサメタゾン(BD)またはBD+シクロフォスファミド(C-BD)のいずれかの治療にランダムに割り付けた。3サイクル後に血清遊離軽鎖(sFLC)の減少幅が50%未満の患者に対しては、化学療法を強化した(BD群ではシクロフォスファミドを追加、C-BD群ではサリドマイドを追加)。

結果
各群に92人ずつが参加した。ランダム割付時点で、両群の患者背景は類似していた(年齢中央値はいずれも68歳、血清クレアチニンレベルの中央値はBD群で305.5 μmol/L、C-BD群で273.5 μmol/L)。
3ヶ月時点で、主要評価項目である腎機能の奏効率に差はみられなかった(奏功者はBD群 41人、C-BD群 47人; relative risk [RR], 0.87; P = 0.46)。very good partial response (遊離軽鎖が90%以上減少)もしくはそれ以上の効果がみられた患者は、それぞれ36人と47人だった(RR, 0.76; P = 0.10)。化学療法を1サイクル行った後、BD群の69人とC-BD群の67人はsFLCレベルが500 mg/L以下になっていた。
重篤な有害事象がみられたのは各群それぞれ30人、40人だった。12ヶ月時点で、19人が死亡していた(BD群 9人、C-BD群 10人)。このうち10人(BD群 6人、C-BD群 4人)は骨髄腫増悪のため死亡し、3人(BD群 0人、C-BD群 10人)は感染症により死亡した。
中央値27ヶ月のフォローアップ中、各群43人、42人がそれぞれ新しい治療に切り替えた。全体として、50人(BD群 24人、C-BD群 26人)が亡くなった。

結論
今回のランダム化試験では、透析を必要としない初発CN患者の腎機能回復という点において、C-BDはBDと比較して有益性を示さなかった。シクロフォスファミドの追加は、効果と毒性のバランスを十分に改善しなかった。急性腎傷害を合併した骨髄腫患者は脆弱であり、2剤併用または3剤併用レジメンの適応は脆弱性に適合させるべきである。