COVID-19を合併した血液悪性疾患患者における、重症化と関連した臨床的特徴とリスク因子:イタリアにおける多施設共同後ろ向きコホート研究

2020-09-26 15:56:25 | COVID-19

Clinical characteristics and risk factors associated with COVID-19 severity in patients with haematological malignancies in Italy: a retrospective, multicentre, cohort study
Lancet Haematol. 2020 Aug 13;7(10):e737-e745. doi: 10.1016/S2352-3026(20)30251-9.
PMID: 32798473

背景
血液悪性疾患にCOVID-19を合併した患者に関する研究は小さなものがいくつかあり、高い死亡率が報告されている。The Italian Hematology Alliance on COVID-19は、COVID-19のために入院が必要となった成人の血液悪性疾患患者からデータを収集することを試みた。

方法
今回の他施設共同、後ろ向きコホート研究はWHOの定義による血液悪性腫瘍と診断された成人患者(18歳以上)で、かつ2020年2月25日から5月18日までの間に検査で確定された症候性COVID-19のためにイタリアの66病院に入院した患者を対象とした。データ収集は2020年6月22日で打ち切った。主要評価項目は死亡率と、死亡率を予測する可能性のあるパラメータの評価とした。研究コホートにおいて観察された死亡と、イタリアの各層に特異的なCOVID-19の死亡率、イタリアの血液悪性腫瘍コホート(COVID-19罹患なし、2019年3月1日までのデータ) 31,993人の間で標準化死亡比を計算した。多変量Cox比例ハザードモデルを用いて全生存と関連する因子を同定した。この研究はClinicalTrials.gov(NCT04352556)に登録されており、前向き研究の部分は現在実施中である。

結果
536人の患者が登録され、データ打ち切り時点におけるフォローアップ期間の中央値は20日(IQR 10~34)、85人(16%)が外来で管理可能だった。入院患者451人のうち440人(98%)で入院が終了(退院または死亡)していた。536人のうち198人(37%)が死亡した。イタリアの一般人口におけるCOVID-19感染者と比較すると、標準化死亡比は研究コホート全体で2.04(95% CI 1.77~2.34)、70歳未満の患者では3.72(2.86~4.64)だった。COVID-19に感染していない血液悪性疾患コホートと比較すると、標準化死亡比は41.3(38.1~44.9)だった。高齢(ハザード比 1.03, 95% CI 1.01~1.05)、疾患の増悪(2.10, 1.41~3.12)、急性骨髄性白血病(3.49, 1.56~7.81)、インドレント非ホジキンリンパ腫(2.19, 1.07~4.48)、アグレッシブ非ホジキンリンパ腫(2.56, 1.34~4.89)、形質細胞腫瘍(2.48, 1.31~4.69)、重症のCOVID-19(4.08, 2.73~6.09)が不良な全生存と関連していた。

結論
今回の研究により、血液悪性疾患患者は一般人口におけるCOVID-19の罹患者やCOVID-19を罹患していない血液悪性腫瘍患者よりも予後が悪いというエビデンスが増した。COVID-19のために入院した血液悪性疾患患者の高い死亡率は、少なくとも有効なワクチンや治療戦略が利用可能になるまではアグレッシブな感染症予防戦略が必要であることを浮き彫りにした。

Funding: Associazione italiana contro le leucemie, linfomi e mieloma-Varese Onlus.


実臨床におけるAxicabtagene Ciloleucelの治療成績

2020-09-20 12:19:21 | 悪性リンパ腫

Axicabtagene Ciloleucel in the Non-Trial Setting: Outcomes and Correlates of Response, Resistance, and Toxicity
J Clin Oncol. 2020 Sep 20;38(27):3095-3106. doi: 10.1200/JCO.19.02103. Epub 2020 Jul 15.
PMID: 32667831

目的
Axicabtagene ciloleucel (axi-cel)は、臨床試験集団における持続的な寛解率が約40%という結果に基づき、アグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫の再発に対してFDAにより承認された。この有効性と毒性の割合が、より適格性が緩くかつブリッジング治療を伴うような市販後セッティングでも変わらないのかは分かっていない。今回の研究では、このセッティングにおける有効性と安全性の関連と治療成績について記述する。

患者と方法
米国の7施設においてaxi-celで治療された122人の患者をmodified intent-to-treat (mITT)解析の対象にした。76人(62%)がZUMA-1試験の適格条件を満たさなかった。奏効と毒性の割合、奏功の持続(DOR)、生存、そして共変量をmITT集団に基づいて記述した。奏功や治療抵抗性のバイオマーカーになる可能性があるものを探索するため、血液や腫瘍のサンプルを用いた相関研究を行った。

結果
フォローアップ期間の中央値は10.4ヶ月だった。mITT集団において、最良の全奏効率と完全奏効(CR)率はそれぞれ70%と50%だった。奏功持続期間と無増悪生存期間(PFS)の中央値は、患者全体では11.か月と4.5か月で、CRに達した患者では到達しなかった(NR)。全生存期間の中央値は未到達(NR)で、1年全生存率は67%(95% CI, 59%~77%)だった。奏効率はZUMA-1適格群と不適格群で類似していたが(70% vs 68%)、CR率、奏功持続期間、PFS、OSはZUMA-1適格群の方が統計学的に有意に良好であった(CR率 63% vs 42%, P = 0.016。奏功持続期間中央値 未到達 vs 5.0か月, P = 0.014。PFS中央値 未到達 vs 3.3か月, P = 0.020。1年OS 89% vs 54%, P < 0.001)。grade 3以上のサイトカイン放出症候群と神経毒性の発生率は16%と35%だった。

結論
Axi-celは市販後セッティングと臨床試験セッティングで類似した全奏効率と毒性を示したが、CR率と奏功持続期間はZUMA-1適格患者の方が良好だった。


標準治療における、再発・治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫リンパ腫に対するCAR T療法

2020-09-19 13:16:40 | 悪性リンパ腫

Standard-of-Care Axicabtagene Ciloleucel for Relapsed or Refractory Large B-Cell Lymphoma: Results From the US Lymphoma CAR T Consortium
J Clin Oncol. 2020 Sep 20;38(27):3119-3128. doi: 10.1200/JCO.19.02104.
PMID: 32401634 PMCID: PMC7499611

目的
Axicabtagene ciloleucel (axi-cel)はCD19を標的とした自家キメラ抗原受容体(CAR) T細胞治療であり、単アームの第2相試験であるZUMA-1試験の結果に基づいて再発・治療抵抗性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の治療として承認されている(ZUMA-1試験での最良全奏功率は83%、最良完全奏効率は58%)。著者らは、承認された適応に対する標準治療のセッティングにおける、axi-celの臨床的治療成績を報告する。

患者と方法
米国の17施設において、標準治療としてaxi-celを実施する目的で2018年9月30日までに白血球除去を実施した再発・治療抵抗性LBCL患者の全員のデータを後ろ向きに収集した。毒性のグレード評価と管理は、各施設のガイドラインに従って行われた。治療効果は2014年のLugano基準によって行った。

結果
白血球除去を受けた患者298人のうち、275人(92%)がaxi-celによる治療を受けた。登録制のZUMA-1試験と比較して、今回の標準治療研究においては129人(43%)が白血球除去を行った時点での併存症によりZUMA-1の適格基準を満たしていなかった。axi-celで治療された患者のうち、グレード3以上のサイトカイン放出症候群や神経毒性を呈した患者はそれぞれ7%、31%だった。非再発死亡率は4.4%だった。最良の全奏功率と完全奏効率は82%(95% CI, 77%~86%)と64%(58%~69%)だった。CAR-T細胞輸注からのフォローアップ期間の中央値は12.9ヶ月で、無増悪生存期間の中央値は8.3ヶ月(95% CI, 6.0~15.1)であり、全生存期間は中央値に到達しなかった。単変量解析と多変量解析において、ECOG-PSが2~4と不良な患者と、LDHが上昇していた患者は無増悪生存期間と全生存期間が短かった。

結論
再発・治療抵抗性LBCL患者に対するaxi-celの安全性と有効性は、標準治療セッティングにおいても登録制のZUMA-1試験に匹敵するものだった。


限局期DLBCL患者に対する、PETに従った治療に関する臨床試験結果(S1001研究)

2020-09-09 14:45:07 | 悪性リンパ腫

Positron Emission Tomography-Directed Therapy for Patients With Limited-Stage Diffuse Large B-Cell Lymphoma: Results of Intergroup National Clinical Trials Network Study S1001
J Clin Oncol. 2020 Sep 10;38(26):3003-3011.  doi: 10.1200/JCO.20.00999.  Epub 2020 Jul 13.
PMID: 32658627

目的
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は患者の25%〜35%が限局期で、進行期と比べて全生存(OS)は良好だが、治療法に関わらず持続的な再発を伴う。推奨されている治療はR-CHOPと放射線治療である。PETの結果に従った治療アプローチの有望な成績結果に基づき、著者らは治療成績を改善し毒性を軽減することを目的にNational Clinical Trials Network (NCTN)の研究をデザインした。

方法
非バルキー(< 10 cm)の1期または2期の未治療DLBCL患者に標準的なR-CHOPを3サイクル行い、中間PET-CT(iPET)を行い中央でレビューした。iPETが陰性の患者はR-CHOPを1サイクル追加し、iPETが陽性の患者にはinvolved field radiation therapyを行った後イブリツモマブ チウキセタンによる放射免疫療法を行った。

結果
158人の登録患者のうち132人が適格で、128人がiPETを受け、このうち14人(11%)が陽性だった。フォローアップ期間の中央値は4.92年(range, 1.1〜7.7年)で、増悪は6人のみで3人がリンパ腫により死亡した。11人がリンパ腫以外の原因により死亡し、年齢の中央値は80歳だった。5年無増悪生存率の推定値は87%(95% CI, 79%〜92%)、5年OSの推定値は89% (95% CI, 82%〜94%)であり、iPET陽性とiPET陰性の患者で結果は類似していた。

結論
著者らの知る範囲において、S1001研究はリツキシマブ時代の米国における限局期DLBCLに関する最大の前向き研究であり、この疾患サブセットにおけるNCTNの最良の結果を伴っていた。PETに従った治療を行ったところ、iPET陰性だった89%の患者がR-CHOPを4サイクル受け、11%のみがiPET陽性で放射線治療を必要とし、両群ともに優れた治療成績を示した。今回の研究は、R-CHOP 4サイクルのみの治療が限局期患者の大多数にとって新しい標準的アプローチであることを確立した。


FLT3-ITD陽性AML患者を対象とした、同種造血幹細胞移植後のソラフェニブ維持療法

2020-09-09 14:02:51 | 急性骨髄性白血病

Sorafenib Maintenance After Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation for Acute Myeloid Leukemia With FLT3-Internal Tandem Duplication Mutation (SORMAIN)
J Clin Oncol. 2020 Sep 10;38(26):2993-3002.  doi: 10.1200/JCO.19.03345.
PMID: 32673171

目的
FMS-like tyrosine kinase 3遺伝子における遺伝子内縦列重複変異(FLT3-ITD)を伴う急性骨髄性白血病患者は、同種造血幹細胞移植(HCT)を行なっても予後が悪く、再発しやすく、AMLにより死亡する。複数の標的を持つチロシンキナーゼ阻害剤であるソラフェニブのようなFLT3阻害剤を用いた維持療法がHCT後の治療成績を改善するかどうかは現在分かっていない。

患者と方法
ランダム化・プラセボ対照・二重盲検第2相試験(SORMAIN; German Clinical Trials Register: DRKS00000591)において、FLT3-ITD陽性の急性骨髄性白血病の成人患者で、HCT後に血液学的完全寛解を達成した83人を、ソラフェニブを24か月投与(n = 43)またはプラセボを24か月投与(n = 40)のいずれかにランダムに割り付けた。無増悪生存を今回の研究の主要評価項目とした。再発または死亡のいずれか先に発生したものを「再発」と定義した。

結果
フォローアップ期間の中央値は41.8か月で、再発または死亡についてのハザード比(HR)はソラフェニブ群対プラセボ群で0.39 だった(95% CI, 0.18〜0.85; log-rank P = 0.013)。24か月無増悪生存率はプラセボ 53.3% (95% CI, 0.36〜0.68)に対してソラフェニブは85.0%(0.70〜0.93)だった(HR, 0.256; 95% CI, 0.10〜0.65; log-rank P = 0.002)。探索的データではHCT前に微小残存病変(MRD)が検出できなかった患者とHCT後にMRDが検出できた患者がソラフェニブによる恩恵を最も強く受けていた。

結論
ソラフェニブによる維持療法は、HCT後のFLT3-ITD陽性AML患者の再発と死亡のリスクを減少させた。