御伽噺6  伽噺 6  'Different lovers also '

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「黒いYシャツと蒼いネクタイ」

2012-04-07 20:09:28 | リンク
「黒いYシャツと蒼いネクタイ」
私は17才で学校を辞めた。レールを踏み外す。「平日は」寝たい。しばらくは一人で。髪色は黒い。黒いYシャツと蒼いネクタイ。それにチノパンで外に行く。蜜柑ジュースを飲んでいると、しばらくは続きそうな男と一緒に暮らしたいが、いつもその場限りの切ない出会いで、彼氏と別れた傷を更に上に重ねる。「何でそんな感じの『格好』なの?」「蒼色が好きでさ。ネクタイの方が合っているし。しばらくは家で寝ているし、用があったらメール頂戴」「分かった」軽くなったものだ。恋人と呼べるのか。ただ安くていい服を買ってくれればいい。家で試してみる。中々似合うと思っている。
暑い日は外に出ない。小説と映画を独りで観ている。どうやって働こうかな。「女優」は奇抜だし。かといって「姫」にはなれそうも無いし。どんな感じで生きて行こう。17才の夏は涼しい場所で、規則正しく生活をしていた。学校の教科書はほとんど捨てた。生きる予定は何時までで。何才になったら迎えに来るのか正直分からない。だから、今が良ければ、後はいつか何とかと思っている。ならなければ、『割の合わない』仕事でもしようかななんて思っている。やっぱり、まともでは生きるのは難しい。彼氏だけは反対してくれた。「今辞めたら、将来が厳しいぞ」長い間付き合って来たから、一番辛い答えを言った。「私は女だから生きて行くのも苦労しないよ」「まあ、大学は違うから、どの道別れちゃうんだけどさ」いつも、一緒にいすぎて、大切な人と言う感じではなかった。だから、最後の最後で別れられたのだろう。もう会えないと思うと絶望になった。高校ぐらい行くべきだったかもしれない。私は後悔は日に日に強くなる。この格好も彼氏の「パクリ」だ。言い方を悪くすれば「マネした」と言ってもいいだろう。いつもこんな格好をしていたから、このような格好をするようになった。未練たらたらかもしれない。まともな恋はきっとこの先ないだろうから。蒼いネクタイは彼氏からの最後の誕生日プレゼント。「もっといいものがあったのに」「私は君を憧れているからね。服だけ」「君は飽きないな。楽しいと思う事の方が多い」そう言ってくれた事。素直に君といて欲しかった。別れる時。「嘘」をついた。「いい女作ってね」本当は君と離れたくなかった。辞めた気持ちは違うけど。辞めたのは、ただ勉強についていけなかったから。涼しい日に色んな男と会うのは、離れてしまったから。「大切な人」と。20になった。夜間の大学を目指して勉強する。初めてバイトした。「近くの」たこ焼き屋で。彼氏にたこ焼きを作って貰った事がある。その時の感覚を思い出していた。店なんて潰れてもいいし。ずっとここでバイトをしていた。大学に行ってから付き合おうとする男を見つけようと思った。そして、24才。入学式を迎えた。一応スーツを買った。真面目にその服を着た。また恋人が出来たら、「ネクタイ」を替える。夏は「いつも」と。違う格好で行くが。憧れはもうないけど。