御伽噺6  伽噺 6  'Different lovers also '

Copyright:(C) 2010-2014 shinya komatsu. All Rights Reserved

「蒼く染めた男が教えてくれた」

2012-04-13 16:56:41 | リンク
「蒼く染めた男が教えてくれた」
別に気に入っていた訳じゃない。でも、必要としてくれた。「好きだよ」と言ってくれた。蒼く染めた髪の男だった。私がよく行く公園でベンチで何か描こうとする男がいた。缶コーヒーをこぼしていた。ダサイ奴。第一印象はそんな感じだった。こんな時にそんな男を見かけた。高校時代の日曜日。留年が決まり、もう辞めようかなって思っていた。そんな頃。私は毎回あっていた。声もかけないで。ただ学校を辞めたらどうしようかな。そんな事まで考えている。私は髪を染めた事もピアスをした事もない。だけど、学校はよくさぼっていた。そのつけが回ってきたのかも知れない。彼氏だった男と結婚を約束をしていた。そんな時期もあったけど。
その蒼髪の男は、何故か苦しそうだった。缶コーヒーをまたこぼしている。勿体ない奴だな。蒼く染めたのかなとか思うようになってきた。だんだん忘れていく彼氏がどうでもいいようになってきた。好きだけど、もうそろそろ忘れないといけないから。馬鹿だね。会いたい人が目の前の男になってしまって。涙がつーと顔を通過して、苦しい思いをしている。
いつか声をかけてくれた。毎日会っているから気になっていた。ちょっと病気でさ、我儘言って病院に行く事辞めて、ここで絵を描いているんだ。彼氏も絵を描いていたっけ。そんな事を思い出した。家でただ彼氏の写真を観るようになった。この人は本当に格好良かった。だから、惚れたのだろう。馬鹿だね。一人で逝く勇気もない。今なら会えたり出来るかもしれないのにね。君はただ墓参りさえしないで欲しいと言っていたらしい。結婚を考えていた。指輪を外していた。今度は幸せになれるのかな。そして、公園で遊ぶ事にした。デートでもないけど、告白してくれた。私は理解している。知っている。「恋」だけじゃいつか滅びると。コーヒーを飲みながら、絵を観ていた。楽しいと思う心を抑える毎日。18才になった。普通であれば大学生になっていただろう。でも、いい。どこで染めているの?薬の副作用。後10年ぐらいは持つらしいよ。「プロになれるといいね」私は何時か逝った時に思い出になればいいなと思った。
30を過ぎた。蒼い髪にするのは髪が痛むから。染めなかった。一応高卒の資格を取って、今は記憶を風化するのを待っている。今は未亡人だ。結局二人も愛してしまった。これで良かったのだろう。今ならそう思う。どちらにも逝かないのは決定している。「人生を楽しみに生きたら。俺の事は思い出せなくていいよ。俺は絵と共に過ごすから寂しくないし」何で死後の事が分かるの?「さあね。勘だけど」「缶コーヒー一杯あるといいね」そんな会話をしていた。きっと、元彼より好きになった。だから、これからは幸せになろうと思った。フォトグラファーを夢見ながら。あの公園にはもう行くつもりもない。今は「カメラ店」で働いているけど。いつか泣いた日を思い出しながら。