御伽噺6  伽噺 6  'Different lovers also '

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「茶髪の女と一緒に逝く」

2012-04-05 18:49:31 | リンク
「茶髪の女と一緒に逝く」
綺麗な茶髪の女と仲が良くなっていた。私たちは逝ったらさ、また遊ぼうよ。いいね。病院食にステーキをと注文したのに、常識が足りないのかな。「普通、ステーキは出てこないだろう」「あの世で注文しよう」「相変わらず馬鹿だね」病室が一緒でいつも下らない話をしていた。いいな。君は彼氏が出来て。「何で作らなかったの」「別に要らないから」「格好いい人が食事に誘ってくれたじゃん。一人と言わずに、幾人も」あいつら、ただ女なら誰でもいいんだよ。そう考えると嫌だった。プライド高い女。「君の彼氏なら付き合ってもいいかな」「まあ、100%盗られる気がするが、いいよ」「そんな事する訳ないじゃん」「後お互い一年だね」「そうだね」「あの世で結婚しようかな」「呼んでね」そんな話をずっとしていた。初めて喋った時も楽しかった。ロリコンは嫌いだと言っていた。でも、いつも大人に惚れていた。矛盾だったようだ。
私は、休憩時間に彼氏と飯を食う。「観覧車でしよう」「無理だって」彼女が嫌いな身体だけの目当ての男だ。でも、させる気はないし、彼氏も気付いている。病気さえなければ結婚しても良かったのに。子供をがんがん産んで欲しかったね。「はいはい」私と同い年のようだ。まあ、年上っぽい人だ。「君は逝く前にしては明るいね」「本音は怖いけど親友がいるからね」「そっか。あの世では会えそうもないね」「やっぱり恋愛より友情が欲しいからね」「なら、今日で別れようか」「そうだね。普通の女の方がいいよ」「葬儀には出るよ。『供養』して欲しいだろう」「まあ、それが良い恋愛の終わり方だね」最期にキスをした。病院の駐車場で。「じゃあね」誕生日に振られた。後一年で卒業できたのかも知れない。全日制の学校で。親友と言っていた普通の世界。憧れた。でも、大丈夫。あの世で二人暮らしするだろうから。そして、君と一緒に逝く予定で良かったよ。「私達はあの世でも一緒にいる。今ならそう思える」最期に、恋愛したかった。そう言っている時彼女の顔は暗く感じる。私は逝くのが怖くなった。一緒にいられる保証はない。どうなるのか想像も出来ない。ただ独りでいる予想も考えられた。「ステーキの味が忘れられない」「私が作ってあげるよ」「どうやって?」「病院抜け出すか」「嫌だ。外寒いし」「ステーキを食べたくないの?」「君がデートしていた時にこっそり、近くのステーキ屋に通っていたんだ」「嘘」そんな話をしながら、私は最期に会えた人が「君」で良かった。逝った時に何やら雪が降っている。眼を閉じてからこの世の人じゃないと気が付いた。そして、雪は「桜色」に変化する。「誰か男が来るといいね」願いは叶った。退屈はしない。孤独でもない。私の一番大切な人は、きっと私じゃなくて、好きだった男が一緒にいてくれた方がいいのだろうけど。「男来ないね」「好きだった人に『祈ったら』」いいね。そう言っている。気心が知れている。景色を観に行こうよ。そして、雪の向こう側を歩き出した。私よりずっと綺麗な人と。