煩的ひとりごと

定期更新型ゲーム False IslandについてPL視点から呟きます。
煩悩が人より多いらしいです。

Summer Vacation 夜の部 デート編

2007-07-21 10:20:08 | 偽島2期日記(PC視点)
―――Ese's date in Summer Vacation "藤花"

ひんやり。

額に感じる冷たい感触。
静かに瞼を開く。
心地よい風が、さらさらと髪を撫で。

背中に感じる砂の感触。どうやら砂浜で寝ているようだ。
身を起こそうとすると全身いたるところで痛みが走った。

「気がついた?」

呻いたところにかけられる声。首を動かすと少年が寝ていた隣に女性が座っていた。
ほんのりと月明かりに浮かぶ黒髪が美しい。
痛くてよく見れないが、水着じゃなく普段の格好のようだ。

「えっと……はじめましてだけど、何があってこうなったのよ……。」

呆れたような声。足元には布団が転がっていた。簀巻きにされたところを助けてもらったようだ。

「え、ええと、その………」

沈黙。どう言うべきか判らない。まさか覗きで捕まった、なんて言えやしない。

「全身痣だらけよ?まぁ、言いいたくないならいいけれど。」

そういわれた途端、身体中が痛くなった。呻いて身じろぎすると額から何かがずれ落ちる。
濡らしたハンカチのようだ。どうやら冷やしてくれていたらしい。

「あ、あの……ありがとうございます。」

起きようとしたが果たせず、寝ながら礼を述べる。
女性相手に無礼と思う一方で、顔を見て話したいという思いもあった。
ちらりと覗く横顔はほっそりとしている。

「別にいいよ。…君、名前は?」

女性は海を見たまま訊ねた。
何故1人なのか、なんて聞ける雰囲気じゃない。

「え、あ、僕はエゼ…エゼ=クロフィールドです。」
「そう。…私は柳破籐花。籐花、でいいよ。」

女性が名乗ると再び沈黙が訪れた。
痛みを堪えて首を起こすと……夜の海、そして美しい真円を描く月が見えた。
今日は満月。彼女はこの静かな海に何を思うのだろうか。
何か声をかけようと思うが、言葉がでてこない。
彼女は何かを待っている?この真っ暗い海を越えて現れる、何かを。

不意に女性が口を開いた。
「君、もう立てる?」
「え?え、あ、はい、大丈夫です」
「そう。それは良かったね。」

本当はとても痛かったが弱音を吐くわけにはいかなかった。
全身を軋ませながら、ゆっくりと身体を起こす。
ちょっと女性の身体が見えるようになった。……セクシーだ。
こう、肩まで出た服装とか、その胸とか―――

「ごめんなさいね、……けど、あまり女の子をエッチな目で見ちゃ駄目よ」
「えっ?」

ドキッ。心臓が飛び跳ねるかと思った。
こっちを見てないのにどうしてわかるんだろう。っていや、エッチな目なんて…っ。

「いえ、その、これは……」
なんて必死に抗議したその時。
彼女、籐花さんは急に声をあげた。
「あ……。そういえば、晩御飯火にかけたままだったっ!?」
「…え?」
きょとんとする自分をよそに、慌てて立ち上がる彼女。
「ごめんなさい、またね!」
こちらを1度見て、しきりに手を振って。そして、走り去った。

籐花さん、海をみて献立でも考えていたのだろうか。
あ、そう言えばハンカチ……

僕はぼうっと海を見ながら。
また会えるのじゃないかと少しだけ、期待に胸が脹らんでいた。
最後に見た籐花さんの顔は、とても綺麗だった。



―――Ese's date in Summer Vacation "ソニア"


それからどれくらいの時が経った頃だろうか。
落ち着いてきた頭の中で反省と記憶がごちゃまぜになっていた時のこと。
海辺にて痛んだ身体を休めていると、背後から声をかけられた。
赤い髪に、大きな身長、そして……見間違えるはずもない、ソニアさんだ。

「ここにいたのか」

顔は険しい。…気付いておられたのだろう。
返す言葉もなく項垂れる。あんなことをしておいてあわせる顔なんて無い。
それを見透かされるように、ソニアさんの言葉が飛ぶ。

顔をあげずにいると、強い語気で命令される。

「………とにかく、ついて来い。」

もう従うしか道は無かった。ビーチバレーどころじゃない衝撃が行く手に待っているとしても。
僕は暗澹たる気持ちで傷ついた身体を動かした。
途中で腕をつかまれ、ついたその先は岩場だった。
いよいよお仕置きだろうか。
もう今にも死にそうな気持ちでいた。逃げることはできない。全部自分の行いが悪いのd……

「さぁ、飲むぞ」
「へっ……?」

全く予想外の言葉と共に、ソニアさんは懐から何かをとりだした。
スキットルとかいう、飲み物をいれておく物だ。
え、ええと、じゃあお仕置きは無し……?

すっかり覚悟を決めていた自分にとって、それは甘い誘惑だった。
あれほどお酒を飲むなとフォウトさんに止められていたにも関わらず、言われるがままに飲んでしまう。
げほげほっ!喉が灼ける。冗談じゃなく本当に熱い。咽ながら半分くらいを飲み込んだ。
途端、お腹の底から熱くなり。それが全身にじわじわと広がっていったんだ。
すぐになんともいえない感覚に包まれる。なんというか、雲の上に座っているというか。

ふわ、ふわ。

身体がかっか、かっかと燃えるように熱い。体中を覆っていた痛みは嘘のようにひいていた。
ソニアさんの顔も優しい。

うーん、なんだか頭がぽわーっとする。なんだか世界が揺れているような…

うーん、それにしても今日のソニアさんは綺麗だなぁ。こう、お酒でほんのり酔っているのが…

うーん、浴衣っていいなぁ。ソニアさんはちきれそう。なんていいおっp……

うーん、さわりたい……

うーん…………

(以下

 赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤涎赤赤赤赤赤涎 )


気がつくと僕は岩場の平坦な部分に寝かされていた。
うーん、なんだか頭がフラフラする。
ぼんやりと身体を起こすとソニアさんの姿が見えない。
もうどこかへ行かれたのだろうか。

自分がいたはずの位置を思い出そうと目をやると……
何故だか、どす黒い液体でてらてら光っていた。

あれは………血?しかも大量の。

一体、何がおきたのだろうか。
僕は新たに加わった頭の痛みに苛まれながら、しきりに首をひねっていた。
そういや手に何か感触が――――

ブッシャァァァァッッッ。

再び僕の意識は遠ざかったのだった。
とても、今まで味わったことの無いような幸福感に包まれながら。
やっぱりあの感触は………



―――Ese's date in Summer Vacation "カレン"


やっぱり、どれくらいの時間がたったころだろう。
またしても意識を失っていた僕は完全に時間感覚が狂っていた。
ええと、ソニアさんは。花火とか、もう終わったのかな?
うーん。まあいいや。籐花さんは綺麗だったし、ソニアさんは……

なんて僕が今日の出来事に思いを馳せていると。
またしても声をかけられたんだ。

「鼻の下がのびまくっているわね 坊や?」

女性の声。びっくりして周りを探すと、そこには……カレンさんがいた。
海岸をゆっくりこっちへ歩いてくる。なんだか雰囲気が違うような…?

どーん。

向こうで花火が上がる音。最初の花火が始まったらしい。
確かプログラムは2部構成だって聞いた。じゃあ今晩御飯後、くらいだろうか。

花火に気をとられていた間に、カレンさんはすぐ近くまでいらっしゃっていた。
す、凄い水着だ。こう、胸元が開いて、ドーンというか。
そういや昼間、あそこでばっちr―――

急速に鼻に圧力を感じ、慌てて押さえる。
それをカレンさんは黙って見ていて、少し笑った。なんだか艶っぽい…

「ど、どうされたんです?」

ごまかし加減に僕が聞くと。

「ふふふ アナタに会いに来たの…」

なんて。僕の胸がドキドキする。こ、こんなこと普段のカレンさんが言うわけがない。
でも、これって…なんて僕の頭が一通りぐるぐるした後。

「嘘、夏を満喫しに来たのよ。」 

なんて仰って、くすり、と笑うんだ。あーびっくりした。こういう冗談は勘弁して下さい。
それにしても今のカレンさんは雰囲気が違う。
いつもの優しい瞳と違ってこう、何か色っぽいと言うか、えっちと言うか……

「あら、何を考えてるのかしら?」

ドキッ。まるで考えをみすかれている気がする。
ああダメだ、変なことかんがえちゃ。で、でも、その格好じゃ……
僕が逃げるように目を海へ向けると、カレンさんはふふと笑って同じ方向を見た。
何だか首がくすぐったい。…生暖かい。これ、もしかして……

「ちょ、ちょっとカレンさん、そ、そんなくっつかないでください!」

カレンさんがとても近くにいらっしゃった。息が当たる距離。カーッと頬が熱くなる。
慌てて離れると、カレンさんはまた可笑しそうに笑った。

「ふふ、エゼさんは可愛いわね。花火を見るのに近づいちゃ悪いかしら。」

振り返ると、遠くの海上で大きな大輪の花が夜空に咲いていた。
ああ、花火か。さっき見たはずなのに全く意識の中に入ってこなかった。
確かに耳を澄ませば、どーん、ぱらぱら…と花火の音がする。

「座りましょ?」

笑顔でそう促されたら、身体が勝手に動いていた。
砂浜に腰を降ろして花火を見る。
赤、緑、橙、桃……色とりどりの光が夜空を照らす。
はじめてみるような、綺麗な花火。

でも正直、僕はそれどころじゃなかった。
だってほら、カレンさんの方を見れば、水着が……そこに昼間見たことが色々重なって。
いけないことだと心の中で叫ぶのだけれど、身体が勝手に動く。
ああだめだ、夕方散々な目にあったばかりだっていうのに……

「さっきは大変だったわね。」

ギクゥッッ!! こ、心が読まれた?いやそんなわけは。
カレンさんはいつもどちらかというと、正直な人だし。
…それは関係ないか。とにかく、ものすごく驚いてカレンさんの顔を見る。

「私のも見たのかしら?」

ぴきっ。顔中の筋肉が凍りつく音。ああ、やっぱり…
さっきどこかで見られたんだろう。どういう顔をしたらいいか判らなかった。
素直に謝るべきだ。でも、言葉が出てこない。違う意味で顔を見られなくなってしまった。

「………じゃあ、私からもお仕置きが必要ね。目を瞑りなさい。」

僕は、観念した。女性の裸を覗きみると言う最低の行為をしたのだ、当然の報いがあるだろう。
殴られるのか、斬りつけられるのか、それとも……
ゆっくりと瞼を閉じる。全身が緊張で固くなり、俄かに手が汗ばんでいた。
それからほんの少しの間をおいて――――

耳に息がかかる。くすぐったくて全身の力が抜けた瞬間、触れる熱い感触。
やわらかくて温かい……これは、唇……?
目を開けると、カレンさんの顔が、うなじが、身体がすぐ近くにあった。

「え、え、ええっっ?!」

全身が一気に熱くなり、反射的にずざざざざと後ずさる。
きっと顔は真っ赤だったに違いない。もうもうと砂煙が舞う。

「ふふ、冗談よ。まだまだ子供ね?」

僕が呆然とするのを他所に、カレンさんは笑って立ち上がった。
丁度花火が弾ける。とても眩しい。まるで女神みたいな……

まったく僕が言葉を返せずにいると、カレンさんは艶やかな笑みを浮かべ。
1度大きく手を振ると、砂浜を外れの方へ歩いて行かれて……ついには姿が見えなくなって。

海岸に刻まれたカレンさんの足跡を、僕はいつまでも見続けていた。



―――Ese's date in Summer Vacation "ロザリー"


果たしてどれほどの時間がたったころだろうか。
なんだか随分と海岸にいた気がして、僕は腰をあげた。
もう砂浜には誰の足跡も残っていなかった。
今はどれくらいの時間なんだろう。花火はもう終わってしまったんだろうか。

そんなことを漠然と考えながら僕が港の方を見ていた時。
やっぱり、後ろから声をかけられんだ。

「あら? ……エゼさん? でしょうか……。」

柔らかい声に丁寧な言葉遣い。
聞き覚えのある越えに振り向くと、ロザリーさんが立っていらっしゃった。
キャラバン隊の女性だ。父さんとおなじ街出身の人で、ロザリーさんのお母様が父さんと知り合いだったらしい。
最初は白いローブ姿で全身を覆われていたのだけれど、脱がれたらかなり可愛い人でびっくりした。
なにせ、胸が、その……

「あの…?」

不思議そうな顔をされた。
いけない、鼻が熱くなっている。慌てて笑顔を返す。

「は、はい、こんばんはっ!」

ロザリーさんはようやく安心されたのか、笑顔になった。
そんなロザリーさんの服装は、水着姿にパーカー。
……その、なんというか。顔から下を見れない。見ちゃ、いけない……

「どうかしました?」

ちょっと心配そうな顔。そう言うロザリーさんこそ、何だか疲れていらっしゃるような。

「いえ、別に。それよりロザリーさんこそ疲れてらっしゃいません?」

話を聞くと、昼間からずっとアイス売りで忙しかったそうだ。
今まで仕事とその後片付けに追われていたとか。
本当に大変そうだ。僕と同じ年なのに、自分で糧を稼ぐなんて…
なんとか元気付けてあげたい。あの街のこととかご存知なんだろうか。
そう思って聞いてみたら、もっと小さい頃に街を離れられたそうだ。
懐かしそうに話される様子がとても楽しそうだったので、自分の知っていることを話してみることにした。


街に現れた怪盗の話。傭兵王の旅物語。英雄達の悲劇。

城へ入り込んだ下着泥棒の話。戦いに明け暮れた傭兵達の詩。

怪しい服を売る店の話。貴族とエルフの姫の恋物語。

全部父さんから聞いた話だった。下着泥棒の件は非常に詳しく知っていたので楽しく話せた。
………まさか父さんが犯人じゃ、なんて思ったほどだ。そう言えば半分くらいは何だか…
まあそれは置いておいて。僕の下手な話だったけれど、ロザリーさんは喜んで聞いてくれた。
よかった、少し元気になったみたいだ。

そして最後に僕が覚えている、街の様子の話になった時。
ロザリーさんがとても強く頷かれたんだ。
「私、そこにいた気がします」って。
聞けばロザリーさんの一家は商売の家らしく、あちこちと取引があったらしくて。
丁度住んでいたところが僕の父さんの酒場の近くだったみたいだ。
そういわれれば父さんも色々やってるみたいだし、商品のことで顔を会わせたのかもしれない。
ひょっとして小さい時会ったことがあるかも?

そんな話になって、凄く話が弾んだんだ。
怖いおじさん、なぜかよくみかけた命の瓶モンスター、にこにこマークの商品。
あの街にいればみんな知ってること。知っている相手がいる、ってだけで嬉しくなる。
でもロザリーさんが「よくスカートめくられて…」と話された時はドキッとした。
僕は小さい頃、父さんに言われて女の子のスカートを何回かめくったことがあるからだ。
父さんが言うには「スカートもめくれないようじゃ立派になれない」って…
僕はそれが嫌でたまらなかった。シリルが気付いて父さんを懲らしめてくれたんだけれど…
……まさか、ね。

いつの間にか砂浜で座って話ているうちに、夜が少し冷たくなっていた。
そして、夜空に光が上った。

どーん。

花火だ。…第二部なんだろうか。時間感覚がわからないままに、ロザリーさんと二人で見ていた。
少し遠いけれど、それでも迫力ある光に圧倒されている。
言葉もなく、ただ綺麗な光の花が上がり、そして散る様子を眺めていた。

ふと隣を見ると、ロザリーさんの横顔が見える。……可愛い。
でもそこで止めておけばよかった。
そのまま視線を降ろしたら……む、むねが……

ぶふっ。

慌てて鼻を押さえる。
ようやくロザリーさんが気付いて、少し笑いながら「どうかしましたか?」って。
でもちょっとして僕の視線に気付いたんだろう、そっぽを向いてしまったんだ。
ご、誤解です! そう言おうとしたけど、血が喉に入って咽てしまう。
こほこほ咳き込んでいると、背中を撫でてもらった。手が温かい。
ちょっと怒ったような、心配そうな顔が見えた。花火の音はもう、聞こえなかった。


「……すみません……」

ようやく落ち着いた僕が謝ると、ロザリーさんは無言で何かを取り出して。
細い、少し色彩のある管。昼間売店で見た線香花火だ。犬耳の女の子が配っていた気もする。

「………花火、しません?」

僕はもちろん頷いた。
最近練習している魔法で、手から火を出してみる。
緊張のせいか、なかなか火が出ない。
と思ったら突然予想より大きい火が出て、びっくりして後ろに転がる。

「ふふっ」

…笑われた。ちょっとどきどきした。

それから二人で、線香花火に火をつけて……
ぱちぱちと弾け、綺麗に燃えて、そしてぽとり、と落ちる。
それをずっと見ていた。言葉はないけれど、なんだか、楽しかったんだ。


やがて線香花火を全て眺めた時。
冷たい風が足元の砂をさらう。
もうすっかり夜。月も随分と高くなっていた。

「ずいぶん遅くなってしまいましたね」

月を見てロザリーさんがそう仰った。
もう帰らないと。アーヴィンさんに見つかったら何を言われるか判らない。

「私は仲間が待ってますから、海の家へ向かいますね」

僕とは逆方向だった。こういう場合女性を送るのが礼儀なんだけれど……

「大丈夫です、1人で帰れますから。それじゃ、また」

ロザリーさんはにっこり笑って、月に背を向けた。
僕がその背中に挨拶を送ると、1度振り返って手を振ってくれた。
疲れた瞳じゃなかった。よかった……


……僕も帰ろう。今日はたくさんのいいことがあった。
これでまた、明日から頑張れる。今日のことは忘れない。
帰る前。夏の海に、砂浜に、月に、頭を下げる。

そして僕と遊んでくれた、話してくれた皆さんに………


「ありがとうございました」



こうして夏の一日は終わった。

僕は走って夏の海と別れを告げる。

「またいつか、必ず来るんだ」

新しい約束を胸に刻みこんで―――――