サマバケ夜の部、皆さんの日記へのリンクを併記しておきます。
籐花さんの分はちょっと前に転載許可をいただきましたので、転載しておきます。
今頃書いておけばしっと団にもやられまい…(笑)
959ソニアさん視点
158カレンさん視点
そして以下、籐花さん視点です。
Episode 籐花
はて、何故布団が夜の砂浜に転がっているのだろう。
不思議な遺跡に慣れた身は、一瞬、噂の歩行布団などと、明後日の方向に思ってしまうが、中から聞
こえる声に簀巻きにされているのだと気付き、少し慌てて開放する。
布団を開き、中身を見ると、目に付いたのは結構体格が良い、尖り耳の青年が一人。
……気を失っているみたいだけど。
見た感じでは簀巻きにされそうな雰囲気は持っていない、純朴そうな青年を砂浜に寝かせると、水筒
の真水でハンカチを濡らし、そっと頬にあてながら隣で青年が目を覚ますのを見守る。
「……厄介ごとじゃないといいかな。」
せっかくの良い月の夜に、縁あって道連れが出来たのだから。
そんなことを考えていると、海のほうから潮の香りを含む風が吹いてきて、後でまとめた黒髪をふわ
りと浮き上がらせ。
その風の中、寝ている青年がゆっくりと眼をまたたかせた。
「気がついた?」
起きようと身体を動かそうとして、痛むのか、呻きを上げた青年に声をかける。
「えっと……はじめましてだけど」
一旦言葉を切り、呆れたような声で話しかける。
「何があってこうなったのよ……。」
そこで、足元にある布団を一瞬見ると、好奇と呆れの混ざった視線を尖り耳の青年に向ければ、青年
の方は状況を理解し始めたのか若干戸惑い気味で。
「え、ええと、その………」
何処か気まずそうな顔で黙り始めた青年に対し。
「全身痣だらけよ?まぁ、言いいたくないならいいけれど。」
と、助け舟をだすことにした。厄介ごとなら巻き込まれたくもないし、少なくとも青年が悪人には見
えなかったのも、一つの理由だった。
その言葉で傷を思い出したのか、呻き、身を起こそうとする、青年の額から濡らしたハンカチがず
れ落ちそうになるのを横目に視線を夜の静かな暗い海へ移す。
――何時かまでは分からないが、きっと、きっと近い将来、この静かな黒暗淵に自分は沈んで行く
のだろう。
予感ではなく、そんな確信を抱き、その罰の訪れを待つ。
その、静かで暗い平穏を青年のお礼の声が破った。
「あ、あの……ありがとうございます。」
律儀で、素直なお礼の言葉に海を見つめたまま。
「別にいいよ。……君、名前は?」
と、返した。
「え、あ、僕はエゼ……エゼ=クロフィールドです。」
「そう。……私は柳破藤花。藤花、でいいよ。」
顔を海に向けたまま、青年の名を耳に入れ、名乗り返す。
無論知り合いではないが、何処かで聞いたような響きの名前を心中で繰り返し、記憶させる。
そのあいだも、視界に入るのは静かな夜の海と空、そして、満月の光。
昼間はあまり見上げぬ空を見上げ、やっぱり太陽の光は眩しすぎると感じてしまう。
海がしずかに鳴っている。
いつしか、こちらを見ていた青年の不意を撃つように声をかける。
「君、もう立てる?」
「え?え、あ、はい、大丈夫です」
「そう。それは良かったね。」
むしろこちらを心配そうな、そんな青年の声は強がりとは思えなかった。
海を見ながら青年の気配がゆっくりと時間をかけながら起き上がるのを感じ、身体に視線を感じた
所で予定していたように冗談の台詞を口に出す。
「ごめんなさいね、……けど、あまり女の子をエッチな目で見ちゃ駄目よ」
「えっ?」
驚かれてしまった。本当に見てたのだろうか?
「いえ、その、これは……」
必死の抗弁を何処ふく風と、振り返り、青年――エゼ君で決定、の赤い顔を視界に入れ、やっぱり
見ていたのねと、思ったその時。
潮風に混ざる美味しそうな匂いに気づき、なし崩しに晩御飯の事を思い出し、声を上げてしまう。
「あ……。そういえば、晩御飯火にかけたままだったっ!?」
え?との驚きの声を上げる、エゼ君を他所に慌てて駆け出そうとする。
「ごめんなさい、またね!」
一度、青年と目を合わせると、一声を残して走り去る。
お別れの言葉を言う気になれなかったのは彼がこの遺跡に集う冒険者たちのひとりである事に気付
いたからと、青年の抗議をもう少ししっかりと聞いて見たかったからで。
つまり、ハンカチはまた逢ったときに返してもらうのだ。
それだけを思いながら、私は漆黒の奔流と化し、仮宿への道を急ぎ駆けた。
籐花さんの分はちょっと前に転載許可をいただきましたので、転載しておきます。
今頃書いておけばしっと団にもやられまい…(笑)
959ソニアさん視点
158カレンさん視点
そして以下、籐花さん視点です。
Episode 籐花
はて、何故布団が夜の砂浜に転がっているのだろう。
不思議な遺跡に慣れた身は、一瞬、噂の歩行布団などと、明後日の方向に思ってしまうが、中から聞
こえる声に簀巻きにされているのだと気付き、少し慌てて開放する。
布団を開き、中身を見ると、目に付いたのは結構体格が良い、尖り耳の青年が一人。
……気を失っているみたいだけど。
見た感じでは簀巻きにされそうな雰囲気は持っていない、純朴そうな青年を砂浜に寝かせると、水筒
の真水でハンカチを濡らし、そっと頬にあてながら隣で青年が目を覚ますのを見守る。
「……厄介ごとじゃないといいかな。」
せっかくの良い月の夜に、縁あって道連れが出来たのだから。
そんなことを考えていると、海のほうから潮の香りを含む風が吹いてきて、後でまとめた黒髪をふわ
りと浮き上がらせ。
その風の中、寝ている青年がゆっくりと眼をまたたかせた。
「気がついた?」
起きようと身体を動かそうとして、痛むのか、呻きを上げた青年に声をかける。
「えっと……はじめましてだけど」
一旦言葉を切り、呆れたような声で話しかける。
「何があってこうなったのよ……。」
そこで、足元にある布団を一瞬見ると、好奇と呆れの混ざった視線を尖り耳の青年に向ければ、青年
の方は状況を理解し始めたのか若干戸惑い気味で。
「え、ええと、その………」
何処か気まずそうな顔で黙り始めた青年に対し。
「全身痣だらけよ?まぁ、言いいたくないならいいけれど。」
と、助け舟をだすことにした。厄介ごとなら巻き込まれたくもないし、少なくとも青年が悪人には見
えなかったのも、一つの理由だった。
その言葉で傷を思い出したのか、呻き、身を起こそうとする、青年の額から濡らしたハンカチがず
れ落ちそうになるのを横目に視線を夜の静かな暗い海へ移す。
――何時かまでは分からないが、きっと、きっと近い将来、この静かな黒暗淵に自分は沈んで行く
のだろう。
予感ではなく、そんな確信を抱き、その罰の訪れを待つ。
その、静かで暗い平穏を青年のお礼の声が破った。
「あ、あの……ありがとうございます。」
律儀で、素直なお礼の言葉に海を見つめたまま。
「別にいいよ。……君、名前は?」
と、返した。
「え、あ、僕はエゼ……エゼ=クロフィールドです。」
「そう。……私は柳破藤花。藤花、でいいよ。」
顔を海に向けたまま、青年の名を耳に入れ、名乗り返す。
無論知り合いではないが、何処かで聞いたような響きの名前を心中で繰り返し、記憶させる。
そのあいだも、視界に入るのは静かな夜の海と空、そして、満月の光。
昼間はあまり見上げぬ空を見上げ、やっぱり太陽の光は眩しすぎると感じてしまう。
海がしずかに鳴っている。
いつしか、こちらを見ていた青年の不意を撃つように声をかける。
「君、もう立てる?」
「え?え、あ、はい、大丈夫です」
「そう。それは良かったね。」
むしろこちらを心配そうな、そんな青年の声は強がりとは思えなかった。
海を見ながら青年の気配がゆっくりと時間をかけながら起き上がるのを感じ、身体に視線を感じた
所で予定していたように冗談の台詞を口に出す。
「ごめんなさいね、……けど、あまり女の子をエッチな目で見ちゃ駄目よ」
「えっ?」
驚かれてしまった。本当に見てたのだろうか?
「いえ、その、これは……」
必死の抗弁を何処ふく風と、振り返り、青年――エゼ君で決定、の赤い顔を視界に入れ、やっぱり
見ていたのねと、思ったその時。
潮風に混ざる美味しそうな匂いに気づき、なし崩しに晩御飯の事を思い出し、声を上げてしまう。
「あ……。そういえば、晩御飯火にかけたままだったっ!?」
え?との驚きの声を上げる、エゼ君を他所に慌てて駆け出そうとする。
「ごめんなさい、またね!」
一度、青年と目を合わせると、一声を残して走り去る。
お別れの言葉を言う気になれなかったのは彼がこの遺跡に集う冒険者たちのひとりである事に気付
いたからと、青年の抗議をもう少ししっかりと聞いて見たかったからで。
つまり、ハンカチはまた逢ったときに返してもらうのだ。
それだけを思いながら、私は漆黒の奔流と化し、仮宿への道を急ぎ駆けた。