西條奈加の「心淋し川」を読んだ。
6つの連作短編。
江戸千駄木町の一角、淀んだ川沿い
に並ぶ貧乏長屋に住む人たちの物語。
と言っても、よくある人情話とは
少し違う。できればこんな場所から
抜け出したいと思う人の物語だ。
いわゆる不幸せな人が幸せになる
ファンタジーではないけれど、
違った形で救われる話に心が動く。
6つの話の中で、特に良かったのが
第2話の「閨仏」。幸せのあり方は
自分が思うほど単純じゃない。
6つの中にダークな話が1つある。
世の中全ていい話ばかりじゃない。
そんな著者の声が聞えてきそうだ。
その他の4編もそれぞれ好印象。
さすが2020年下半期直木賞だね。
良い本に出会えました。