古川元久内閣府副大臣 講演
2010.3.11
古川元久内閣官房国家戦略室長兼内閣府副大臣を招いた特別セミナー(産経新聞社・ブルームバーグ共催)が2月26日、東京都千代田区の丸ビルで開かれた。
■新成長戦略「三方良し」カギ
日本は人類史上初と言っていい、人口減少と高齢化が同時進行する社会に突入している。08年の人口減少は8万人程度だが、30年までの減り方を平均すると約60万人。40年以降、年間100万人を超える人口減少が起きる。これは、中規模の都市が毎年ゴーストタウン化する状況だ。
生産年齢人口も現在の8152万人から、50年には4930万人に減る。一方、50年には10人に4人は65歳以上になる。私たちが感じている社会と違う社会になるのは、明らかだ。
これまでの成長戦略は、基本的に過去の延長線上で現在と未来をとらえていたが、私たちが目指す新成長戦略は、未来のあるべき日本の姿を描き、その姿を実現するためには何をなすべきか、未来からの視点で成長戦略を描いていく。
2008年のダボス会議で、米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が「創造的資本主義」を提唱した。資本主義の仕組みのなかで生まれるさまざまな弊害を解決する仕組みを作り出そうというのが、その中身だ。
こうした考え方を、日本人は古くから持っていた。商売が成就するためには売り手良し、買い手良し、世間良しの「三方良し」という近江商人の発想は、ゲイツ氏の提唱する創造的資本主義と共通する。
◆高齢化 新市場創出
高齢化社会を逆に生かす形で、世界で最も健康で、最も長く生きられる健康長寿の社会システムも目指したい。
医療や新薬の分野での需要増大や介護を含めたマーケット、高齢化だからこそ広がってくるマーケットもある。長寿化の進展に伴って新しい産業や雇用を生み出し、最終的に定年などという概念のない、人を年齢や性別で区別しない、だれもが居場所と出番が与えられる健康長寿の社会システムを構築したい。
企業では「トリプルボトムライン」という概念がある。経済的な利益のみならず環境保全や、社会への貢献を同時に達成することが重要との考え方だ。これを国に当てはめると、新しい時代の「三方良し」は環境良し、社会良し、そして経済良し。そのことによって国民が真に幸せを感じられる、そうした日本を目指す。世界の範となる国の姿だ。