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PARALLEL WORLDS

(旧名 whatIFstories)
FanFiction based on Video/PC Games

<FanFicNovel : Get Over It in Another Future>

2017-12-26 | 二次創作・biohazard4 / Resident Evil 4

<FanFicNovel : Get Over It in Another Future> ※戦乙女ご機嫌斜め

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クーラはサムネイルを見てまた胸がざわついた。ファンが勝手に作った動画だ、こんなの初めてじゃない、免疫が無い訳じゃないと、事の矮小化を試みる。やり場のない感情が燃え上がる。

 ゲーム動画巡り自体久しぶりだった。十数年前の若いレオンがいる、クラウザーがいる、スペイン村懐かしいなぁ等と、眠りについていた一部の記憶が再燃する。その矢先、見たくもないものを目にしたのだ。先程も書いた通り、無理も無い。ファンの活動を止める事はできないのだから。

 例えて言うならそうだ、今は「彼女」の忠実な下僕であり公私共にパートナーであり永遠の恋人である「彼」が、若い頃に恋に落ちた事があるとする。彼女が訊ねた時、彼はこう言った。当時は確かにその女性を愛していると思っていた。周りから羨ましがられ、得意になっていた。だけど、一日一緒にいただけで冷めてしまったんだ。見た目にのぼせ上がって虚像に憧れていただけで、素顔と中身は言葉にするのを控えるが、唾棄すべき記憶だと。彼女は深く追及することはできなかった。

 だが、目にしてしまうのだ。あれっ、似てるなと思ったらすぐさま一致してしまったのだ。二人のサムネイル。いい雰囲気のや裸のを見てしまうのだ。合成、捏造だと知っていても、動画の内容など見なくても、逆流に値する。

 彼女は相手の女性の惨殺動画を検索する。嫌いな人物の名前も猥雑なものも自分の指で入力する事すら避けていたのにあっさり解禁する。憎悪の炎が静かに速やかに広がる。やった、需要があるようだ。たった一瞬のアクシデントの為に三時間も流し続けている。ある種の感覚麻痺が起こっているようだ。机の上に珈琲がこぼれた。今まで一回も無かったのに。彼女は急いでふき取りながら、このミスと抑えつけた動揺とを結び付けた。そこから浮上したのは単純に面白い動画を見つけた時だった。健全な、元々見ようと思っていた類の。

 クーラはあの時、怒りを抑えてしまったから伝わらなかったのだと少し後悔している。他人に感情を飲み込む事を強いるのと自分の感情を飲み込む事は同じくらいに残酷だ。そうは言っても仕方がないとも思っていた。レオンが金の無い若い頃にゲーム会社との間で取り交わしたキャラクター契約は非人道的な拘束であると今は断言できる。無期刑のようなものだ。終身刑になる可能性もある。しかし情けない彼はその契約を破棄するどころか内容の変更すらできずにいる。これは彼の仕事上の事だから彼女にはどうしようもない。

 時間の経過によって悪感情が落ち着いてきた。彼女は自分の機嫌の取り方を知っているが、それと事なかれ主義とどう違うのかとも思っている。ともあれ、表出と自尊については今後も考えて行動するだろう。心を動かすものと関われば何かしら刺激を受け、変化があり、事は動いていくものだ。ともあれ、彼女が彼の味方であろうとする意思はこんな事では破壊されなかった。彼女が彼の心臓を抉り出し、別世界へと送り出す日はまた延期された。