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PARALLEL WORLDS

(旧名 whatIFstories)
FanFiction based on Video/PC Games

<FanFicNovel : I’m not gonna cry ‘bout some stupid guy who thinks he’s all that.>

2017-03-05 | 二次創作・biohazard4 / Resident Evil 4

<FanFicNovel : I’m not gonna cry ‘bout some stupid guy who thinks he’s all that.>

※この二次創作小説には弄りシーンやヘイト表現が含まれています。キャラクターのイメージを保ちたい方は閲覧しない事を強くお勧めします。

※並行世界謎時空

※オリキャラ

 

(出演)

Leony Scotty Kennedy:主人公(?)

Jhack Krauser:主人公の元同僚(?)

Qoolla:プレイヤーの立ち位置にいる戦乙女。ゲームではクライアントの任務遂行に支障が生じた際、特殊能力で時間を巻き戻して何度でもやり直させ、確実に任務を全うさせる役目を果たした。

 

 

 

 

 

 彼女は今はっきりと認識した。これは怒りだと。今まで表には出さなかった。悪口など言わなかった。遠回しな恨み言なら言ったかもしれないが。嫌われたくない、鬱陶しい奴だと思われたくないから抑えてきたのだ。しかし、これはあまりにも理不尽だ、あまりにも報われない。

 四限終了のチャイムが鳴り、起立・礼の後すぐさま教室内は活気づき、教師の存在はかき消された。生徒たちはぺちゃくちゃ口を動かしたり奇声を上げたりしながら昼食の為に移動している。クーラは席を立ち、主人公用の席――窓際の一番後ろの席で荷物を鞄に詰めているレオンに向かって直進した。

「ちょっと来て」

 彼は特に抵抗もせず、彼女の後について教室を出た。一部始終を見ていた数名が早くも勘違いしてはやし立て、瞬く間に教室内にさざ波が起こった。まるで感染症のアウトブレイクのように。

 騒々しい廊下を通り抜ける間、幾対もの目が監視カメラの役割を果たし、二人の姿は行く先々で短期記憶に記録された。……気まずいな。レオンは早々に沈黙ゲームから降りた。

「クーラ、待て」

 前を行く長い髪が揺れるリズムは少しも乱れない。

「これじゃ構図が気持ち悪い。まるで俺が……」

「いいからついて来て」

 案の定、聞く耳も無い。レオンは足を速め、この屈辱的な配置を変えようとしたが、クーラはさらに早足になり、追いつかれまいと小走りで階段を駆け下りた。

 彼女は一階まで降り、整然と並ぶ靴箱の陰に消えた。レオンは軽く舌打ちし、外から戻って来る土と汗の入り混じった臭いのする体操服の連中を掻き分け、急いで靴を履いて外へ出た。一体何処まで行く気だ? 童心に返って追いかけっこって訳でもないだろう。何かに腹を立てているようだが、はっきり言葉で言えばいいものを。

 玄関で待っていたクーラはレオンが出て来るや体育館の方へと歩き出した。レオンはもう一度試みた。

「当ててみせようか。また例の教師から嫌味を言われたのか」

 規則正しく揺れる彼女の髪の光沢が一瞬だけ大振りになった。それはハズレという意味か?

「じゃあ誰だ? 昨日バーで会った女達の事か」

 角を曲がった所で突然クーラが振り向き、勢いよくレオンの胸を突き飛ばした。体育館の壁に後頭部と肩甲骨をぶつけ、よろけた両腿の間に彼女の片膝が突き立てられた。

「お前の設定が気持ち悪いんだよ」

 聞いた事のない低く唸るような声音に、胸骨の辺りがぞわぞわし始めた。おいおい待てよ冗談だろ。ヤンキーの恐喝の真似なんかすんなって。

「お前さ、あのインチキおばさんの事どう思ってんの」

「インチ……? 誰の事だ?」

 それとオマエ呼びはやめてくれ。

「二十年で三回しか会ってないのに執着して貞操守ってるって本当?」

 ああ、遂にその噂を耳に入れてしまったか。それとも目に入れたか。ファンが面白がって無責任に言い散らかす事などレオン本人はとっくに気にしなくなっているというのに。

「向こうはお前の事どう思ってると思ってんの? まさかお前の為に操守ってるとか思っちゃってんの? んなわけねーだろフジコのパチモンなんだからよ。てかスタッフのモエを詰め込んだワイフだろあれ」

 鋭く目を尖らせた彼女は巻き舌気味にまくし立てる。クーラにしてみればこれは会心の質問、溜め込んだモヤモヤを一気に爆発させたのだ。レオンは何とか泣けるぜをこらえた。キャラの人間的側面などC△PC○Mは即席で作っているだけなのだから、そんなむずかしいことあほきゃらのれおんにはわからないうえ、きゃらげーのそくめんのあるげーむであるため、きゃらのいめーじをそこなうことはけいやくじょうできないのだ。

「あいつなんてレオンが出るって聞いて逸早く駆けつけてレオンの隣の席を確保してるオバサンにしか見えない! 金魚の糞! 参観日のオカン! お前もいい加減乳離れしろよもう四十だろ! 四十になっても自立できない情けないmummy's boyが!」

 留まる所を知らない暴言に連動して彼女の二つの膝が交互に彼を脅迫する。レオンは突然ぶつけられた新発想に面食らい、返しの言葉も思いつかない。

「ママはまだ来ないの? 助けに来てくれる筈って期待してるんでしょ? オラ、呼べよ。ロケラン頂戴~ってお願いしろよ!」

 レオンは彼女の両肩に手をかけ、押し返した。女に手を上げたくはないし、彼女が心を傷めていたという事はよく分かったが、これは駄目だ。彼は万感の思いを込めて睨みつけた。まるで虐待されて人間不信になった犬を心を鬼にして躾けるように。クーラはその目を見て意地の悪い笑みを浮かべた。

「あは、泣いちゃった? レオン、かわいい」

 彼女は再びレオンのパーソナルスペースに侵入し、人間の弱みに魅せられた悪魔の優しさで彼の目尻に冷たい指をそっと添えた。睫毛から獲物をさらった爪先が頬骨の上でくるくる踊り、頬を滑り下りていく。その指ともう片方の氷の鉤爪が首に這いより、二人の目が合った。項に八本、喉に二本、小さな凶器がめり込んでいく。しかし、彼女の両手は徐々に力を抜いて下がり、彼の胸と彼女の額の間で静止した。今、彼の目を捉えているのは彼女の天使の輪の揺らめきだ。

「気が済んだか? すまないが、これは大人の事情って奴で、聞き分けてくれないと困る」

「分かってるよ。大人になれって事でしょ」

 クーラは身を離した。落ち着きを取り戻したというよりは、儚く弱くなったように見える。レオンは体勢を直し、俯きがちに目を逸らしているクーラの頬にそっと手を触れた。

「お前ら! そこで何をしている!」

 レオンが無粋な声の飛んで来た方を見ると、憤怒の形相のクラウザーがun forastero! していた。彼の後方の校舎の角には数人のクラスメイトが隠れ、にやにやと覗き見している。クーラがレオンを教室から連れ出した後、教室内は面白い事が起こるのを期待して騒然となった。クラウザーは興味ない素振りで食堂に行こうとしていた所を餓鬼どもに囲まれ、レオンの元同僚である事を理由に、様子を見に行くようけしかけられたのだ。

「クラウザー君なら先生でも怖がって言うこと聞くじゃん」「レオンを助けに行ってやれよ」「コインのアタリとハズレなんだろ」――彼等は無邪気な顔で強要した。

 クラウザーとしては複雑な思いがあった。大統領、その娘、中国婆、B.S.A.A.、C△PC○M、世界中のバイオファン、世界中のレオンファン……、みんなみんななんであいつばっかり! いつも注目を浴びるのはあいつだ。あいつは光の道を歩いている。俺は影どころか道具扱いだ。しかも欠陥品。なんで……、なんで、なんで、いつもあいつなんだよ……!!

 この隙にクーラはレオンの手をはねのけ、通路を奥の方に数歩逃げてから猫のように振り返った。クラウザーはクラスの皆の期待を背中に感じながら近づいていく。後には退けない。退いたらブーイングだ、知らない内にクラス内の順位が下方修正され、それを思い知らされる陰湿な仕打ちが予想される。

「ヴァルキリーよ、レオンをいじめるのはやめろ」

 代わりに俺をいじめてくれ。

「いじめてないよ」

「嘘つけ。泣かしてんじゃねぇか」

「レオンが泣き虫なだけ。ね」

 クーラはレオンに目をくれる。レオンは泣けるぜを発動していない筈の自分の感覚に疑いが生じたのを隠し、クラくてウザい奴に背を向けて歩き出した。

「待てレオン、これが事案なら学級会で扱うが……」

「はは、思ったより馴染んでるようだな」

 笑われた。あの鉄面皮に笑われた。クラウザーは餓鬼どもの頼みを引き受けた自分の真面目さを恥じた。ああ、クーラ、俺を罵ってくれ。

「それも面白そうだが、必要は無い」

 レオンが指し示す方にクラウザーが目を向けると、グラウンドでクラスの連中がボールを蹴って遊んでいるのが見えた。先ほど奴等が隠れていた校舎の角を見ると、誰もいない。もう一度グラウンドに目を遣った後、レオンに目を戻すと……。

「あ!」

 奴は体育館裏の通路を一目散に逃げていく所だった。ヴァルキリーの姿ももう無い。クラウザーは両の拳を握り締め、空に向かって吼えた。

「くそったれ―――――ッ!!!!」