

数か月前、墓石クリーニングの女になって本当に良かったと心から思えた瞬間がありました。
しかし、それを紹介するには余りにも悲惨な事実を書かなければならず、なかなか文章にできませんでしたが、依頼主である友人の日記を転載させてもらえることになり、ここに紹介させていただきます。
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たった一人の最愛の妹が自殺してしまいました。
妹は、躁鬱病を患い、7年前に嫁ぎ先から実家に帰されてきました。
空港へ迎えに行った父は妹を見て仰天したそうです。空港のロビーを歩いてきた妹は、背中に0歳の娘を背負い、両手に6歳の娘、2歳の娘を連れて、別人のような表情でよろよろ歩いてきました。
両手をつないでいる2人の娘は、一体、いつ服を換えたのか分からないくらい薄汚れ悪臭を発していました。
お弁当屋さんを営む両親は、妹の世話をしながら、三人の子供を養育しました。
この頃のことを、本当に大変だったと父は繰り返し話します。献身的な両親の介護の末、妹は徐々に快復していきました。お店を手伝ったり、子供たちの学校でPTAのお友達ができたりしました。
しかし、妹は些細な言葉に傷つき、ある日首を吊りました。
助けた父に、ごめんなさいとおいおい泣いて謝り、その日は寝付きましたが、翌朝、妹を起こしに行くと、どこから出てきたのか薬の殻が散乱しています。父が、恐る恐る妹の頬に触れると、もうすでに冷たくなっていました。
東京で暮らしている私は知らせを受け実家へと駆けつけましたが、なぜか、妹の別れた旦那が妹にすがって泣いています。元義母が、遠いところをありがとうございます。と手をついて挨拶してきます。
お骨となった妹は、妹の精神を破壊した彼らのもとへ子供たちと共に連れて行かれました。全く理解できないけれど、父は実の父親に子供たちを託すほうがいいと考え、我慢したそうです。死人に口なしとは、こういうときに使うのでしょうか。
妹が憐れでした。
現在私は、東京での仕事を辞め、両親の下でお弁当屋さんの修行をしています。
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依頼を受け、社長と私は彼女の実家のお墓をクリーニングすることになりました。
完了後、親子三人でお墓参りに行くと、お父さんがこんなにキレイになるものなのかと感激してくださったそうです。
そして、妹さんのお骨が入っていないそのお墓に「お姉ちゃんが帰ってきたよ。」と話しかけて、遂にはおいおい泣きだし、お母さんに促されて「また来るからね。」とお墓を後にされたそうです。
私も涙が溢れました。
お墓とは亡くなった人のため以上に、生きている人の心の拠り所なのだと感じました。お骨は遠い知らない土地に行ってしまったけど、そこに手を合わせに来る人がいるなら、魂はそこにあるのです。
三人の悲しみが少しでも早く癒えます様、心から願っています。 合掌
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