Linの気まぐれトーク

映画と小説の観賞日記

映画『エルヴィス』

2022-07-02 16:42:00 | 映画
昨日、TOHOシネマズにて鑑賞。



プレスリーは子どもの頃のスーパースターだった。
が、それも海の向こうの話で、親近感は全くなく、彼はチャラチャラした男の代名詞でしかなかった。
あのもみ上げも派手な衣装も、軽蔑の対象。黄色い声を上げる女の子たちとは住む世界が違うと思っていた。
それは今でも変わっていないけれど。

でも映画なら観たい。
〈現象〉として当時を客観視してみたい。
それが接点なく同時代を生きたことだと思うから。

ファーストデイだったからか、同じ思いからなのか、年配男性の1人客が多かった。
どんな思いで受け止めたのだろう。
もしかして私と同じトム・ハンクス狙い?

オースティン・バトラーはエルヴィスになり切ったような好演だったし、マネージャーのトム・パーカー大佐がトム・ハンクスだとはしばらくわからなかったほど。
特殊メイクもあるだろうが、悪辣マネージャーになり切っていた。
トム・ハンクスといえば、最も好きな俳優の1人。トム・クルーズと並んで。
その彼が小狡い男になり切って、若いエルヴィスを手玉に取る憎まれ役なのだ。オスカーを再度手にした名優が、初めて演じる引き立て役。
彼のおかげで、エルヴィスが浮かび上がった。
悪辣で汚い立ち位置が、スターの脆さ儚さを強調する。

歌手の伝記風とはいえ、『ボヘミアンラプソディー 』とも違うし、ビートルズのそれとも違う。
レジェンドを謳い上げるのではなく、その裏側を描いているのは、もしかしたら主役は〈時代〉だった?
キング牧師が、ロバート・ケネディ上院議員が暗殺されたあの時代。
わずか半世紀前なのに、黒人差別問題がアメリカを揺るがしていたあの時代。
いや、わずかではないな。
今の若い世代はエルヴィスを知らないというから。
彼の活躍した時代を懐かしむことこそが、歳を取ったということなのだろう。
これも終活の一部なのだ。