偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏984麓山(福島) 矢大臣、左大臣

2021年07月12日 | 登山

麓山(はやま) 矢大臣、左大臣(やだいじん、さだいじん)


【データ】 麓山 670メートル(国土地理地図に山名無し)▼最寄駅 JR磐越西線・関都駅▼登山口 福島県猪苗代町壺楊字壺下▼中腹にある社殿入口、地図の赤丸印▼地図は国土地理院ホームページより▼この案内は拙著『里山の石仏巡礼』(平成18年、山の渓谷社)から転載したものです

【里山の石仏巡礼97】 麓山は端山・羽山・葉山とも書き、東北地方の南部に多い農耕の神が棲む山である。先祖を祀る祖霊信仰と作物の豊作を願う作神信仰の上に、修験道や神道の儀式が習合して、独特の信仰形態を生み出したのが羽山信仰といわれている。この山は、奥山に対してその端にある山との解釈があるとおり、ほとんどは集落近くの里山にあり、山中に社を構える。それは大きな社殿のところから石祠までさまざま、多くは小さな石祠で済ませている。信仰内容も集落により違いはあるが、集団で精進潔斎した後に登山をし、社に五穀豊穣を祈願する祭りを執り、管理から祭礼まですべて集落の住人で行なう点は共通している。祭礼の日以外、人が立ち入ることを嫌う山もある。
 猪苗代湖畔近くにある麓山は壺下集落の山。杉林の中の道をしばらく登ると石段があり麓山神社の大きな社殿に着いた。山を登る人にとってはアッという間の登りである。石段の下、左右にあるのが石像隋身(ずいじん)。平安時代の貴人の護衛姿とされる隋身は、隋身門に祀られる。しかし麓山の隋身は露座で、向かって右が門を守る閽(かどのもりがみ)・矢大臣、左は罪人を捕らえる看督長(かどのおさ)・左大臣。麓山の隋身は胡簶(やなぐい)を背負い弓矢を持ち、台座に座るが左足を踏み降ろしている。いつでも立ち上がれるポーズをとる細かい細工である。これを刻んだのは信州高遠の石工。猪苗代町の案内には「保科正之公が信州高遠より会津に移封した際、石工を伴ってきたことを証明するもの」とあった。高遠石工は腕がよく、各地に出稼ぎに出て藩の財政を支えたことで知られている。
 麓山のふもとの関脇には安産の神・優姥夷尊の御堂もある。この御堂こそ会津に広く点在する姥神の総本山的なお堂で、かつて会津の人は初産のときは近くに姥堂があっても、この御堂のお札をいただくのが習わしだった。ここも集落の人達が交代で管理している。


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