偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏836臼杵山(東京)狛犬

2019年02月08日 | 登山

臼杵山(うすぎさん) 狛犬(こまいぬ)


【データ】 臼杵山 842メートル▼最寄駅 JR五日市線・武蔵五日市駅▼登山口 東京都檜原村上元郷▼石仏 山頂北の小ピーク、下地図の赤丸印▼地図は国土地理院ホームページより▼この案内は拙著『里山の石仏巡礼』(平成18年、山と渓谷社)から転載したものです
【里山の石仏巡礼52】 昭和19年に出版された『奥多摩』で、臼杵山にある狛犬は猫と紹介された。著者の宮内敏雄は昭和10年代の奥多摩研究の第一人者。まだ交通網が発達していない時代に、奥多摩に通って山や谷の名称から山中に祀られている神仏まで丹念に調べ上げた。それをまとめた『奥多摩』は、いま地元の人ですら忘れたしまった里山の貴重な民俗資料となっている。しかし宮内はこの本を見ることなく戦死、資料は山仲間の手で編集、出版された。
 宮内は戦後の登山ブームも見ることなく逝ってしまったが、『奥多摩』の影響は大きかった。この本が出た後、登山案内書で臼杵山の山頂にある狛犬はかならず猫と紹介されるようになった。それは今も続いている。犬に見えるがほんとうに猫なのだろうか? それを確かめに何度か臼杵山に登ってこの狛犬を見た。ドングリまなこに小さな耳、短い足に胴長と不恰好ながらどう見ても犬で、口をアーと大きく開けた阿形(あぎょう)と、ウンと結んだ吽形(うんぎょう)、つまり阿吽の狛犬だった。
 狛犬は神社を守るのが役目、獅子がその原型であるが、それ以外にも稲荷社の狐、比叡山の猿、熊野社の烏、八幡社の鳩などがよく知られている。これらの動物は、神が祀られる前からその地に住んでいた地主神とされている。奥多摩から秩父にかけての神社は山犬を神の使いとしてきた。この地方には古くから、山犬が山麓に暮らす住民の生活を守るという信仰があった。山犬は狼をさしている。これを信仰に高めたのが秩父の三峰神社で、獣除けのお札を出し、鹿・猪除けとして関東甲信越に広まった。
 昭和10年代の奥多摩は養蚕が盛んだった時代。宮内は臼杵山山麓の養蚕農家が、この狛犬を養蚕の守り神として信仰されていた事実をみて猫とした。猫は蚕を食い荒らす鼠を退治するとして期待され、石像になって祀られた地方もあるので、宮内の紹介が間違っていたわけではない。
【参照】大口真神、お犬様


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