偏平足

里山の石神・石仏探訪

里山の石神端書133 蚕稲荷(群馬県片品村)

2022年11月04日 | 里山石神端書

群馬県片品村針山・穴観音の蚕稲荷

 針山は武尊山の南山麓、標高1000メートルの高原の集落です。ここからさらに30分ほど登った先にあるのが穴観音。登山口に立つ片品村の案内に、本尊の如意輪観音は寛政十年(1798)、越後国中蒲原郡の東福寺の通寛和尚が背負ってきたもの、とあります。

 沢沿いの穴観音の道を辿ると大きな赤い鳥居があり、扁額に「正一位蠶稲荷大神」の文字。この道は蚕(かいこ)稲荷への道でもあります。案内によると蚕の飼育法の一つ〝いぶし飼い〟という養蚕技法を発見し普及に努めた永井紺周郎の功績を称える稲荷のようです。この技法は蚕室内で火をおこして煙を充満させるもので、永井流養蚕術として群馬県北部や中部に普及したそうです。

 沢の流れが細くなったあたりの左手に立派な石段が現れます。これが穴観音への最後の登り。石段下に穴観音を越後から運んできた通寛の卵塔が立っています。

 この道は途中踏み跡程度になりますが、西の尾根目指して登ると大きな岩屋の下の観音堂と稲荷社が見えてきて到着です。

 古い建物ですが山中にしては立派な建物が並び、かつての信仰のほどがわかります。

 稲荷社の脇に建つもう一つの建物は陶器狐を納める奉納所。中には膨大な数の陶器狐が山のように積まれていますが、どれも割れているものばかり。満足な狐は一つもありません。想像するに、願いが叶っての奉納で、役目がすみましたとわざわざこわすのでしょうか。
(地図は国土地理院ホームページより)

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