
ちょっと下品なことを書きます、
と、予めお伝えしておきます。
中学2年の夏休みに担任の先生の引率で
クラスメイト8人と富士五湖の西湖へ
キャンプに出かけた。
2日目の夜中にぼくは不思議な夢を見た。
どこかのハイキングコースを歩いていて
急にものすごい空腹感に襲われた。
ふと見上げると目の前に
大きな桜の木があって
木にはリンゴくらいあるサクランボが
たわわに実をつけている。
ぼくはその桜の木に登って
太い幹の間で実をもぎ食べていたら
突風でバランスを失い2メートルの高さから
真っ逆さまに・・・落ちなかったんだ。
どうしてかというと、
ぼくのお尻から生えた長い尻尾が
桜の木の枝に巻きついていたから。
おかげでぼくはバンジージャンプで
垂れ下がった最後の格好みたいになって
それから巻きつきを弛めながら
地面にソフトランディングしたってわけ。
不思議なことに尻尾はぼくの身体の
一部なのに別の意思をもっているみたい。
クエスチョンマークのカタチになって
背骨にぴたり寄り添う尻尾は
なんだかとてもカッコいいと感じた。
ぼくが歩いたり走ったりジャンプしたり
回転したりするたびにバランスを取る尻尾は
突然できた親友みたいだった。
みんな僕の尻尾を見て羨ましがるだろうな。
ただでさえ運動神経のいいぼくの2学期の
体育の成績には、もしかしたら
"6"がつくかも知れない。
新聞社の人やテレビ局の人たちが
やってきて取材を受けたら
ぼくは有名人になるに違いない。
早くみんなに"親友"を紹介したくてぼくは
飛ぶようにハイキングコースを下っていく。
やがて視界が開け目の前に湖が広がった。
立ち止まって一呼吸置いて目を凝らすと
遠くにクラスメイトたちが縄跳びを
しているのが見えた。
ぼくが合流するとみんなは
「どこに行ってたんだよ!」って顔してる。
ぼくはみんなをびっくりさせてやろうと
クルリと背中を向けた。
「・・・・・・・?」
みんなキョトンとしている。
「これ、これ!これが見えない?」
「お前のアホそうな後ろ姿なら見える」
クラスメイトのひとりがそう言うと
みんな一斉に笑った。
「お前らどこに目をつけて・・・」
ぼくがそう言いかけて肩越しに
背中へ目をやると、えっ?ウソだろ?
・・・な、な、ない!尻尾が見えない。
急いで左手で尻尾のつけ根に触れてみる。
手応えもなかった。
ぼくはすっかり意気消沈し涙目になった。
「なんでなくなっちやつたの?」
ぼくの叫び声はそのまま寝言となって
部屋中のみんなを叩き起こしてしまったらしい。
あまりにも本当の出来事のような夢だった。
それ以来ぼくは誰も見ていない時に
ひとりこっそりと左手を背中側に回し、
ズボンの中に突っ込んで中指の爪で
尾骶骨を触る癖がついてしまった。
誰にも見られないところでやるから
誰からも注意されることなく
今に至るまで生き残った癖。
下品だし見つかればみんなドン引き状態に
なるだろうことは容易に察しがつく。
やめようと思えばやめられる癖なのに、
気がつけばたまに左手が思い出すように
ぼくの尾骶骨を探している。
あれがあったらバランスの取れた有名人に
なっていたかも知れない。
だけど回数は意識的に減らしてる。
大の大人のやることじゃないからね。
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