アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

日々の読書記録を勝手きままに書き記す

逆まわりの世界 改訳版

2020-09-17 13:00:00 | フィリップ・K・ディック
ディック幻の傑作


「逆まわりの世界」“COUNTER-CLOCK WORLD ”  (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 2020/7
フィリップ・K・ディック (著)、小尾芙佐(訳)1967年作品



これも「幻」の傑作だそうな
同じ訳者による旧訳版(聖書じゃないですが)は1983年にハヤカワ文庫SFで出版されている
解説は神林長平でこれは旧版のままのように思われる
同じ訳者でどう違うのか
最初の数ページでかなりの部分が割愛されていた
前の訳の方が訳に一貫性がないようで
「カー無線」、「ビドフォン」とわずかな紙数の中で混乱がある
そういうものが直されている

文字の級数が大きくなり1ページ当たりの字数が減って
ページ数が増えるはずだが8ページ多いだけで
冒頭あたりだけでなく簡略化されているように思う
暇になったらいちいち調べても楽しいかもしれない

1983年の文庫は酸性紙で褐色化し
文字も小さく読みづらい
若いころはまったく平気だったけれど

ディックを読み直す
トールキンもですが
そういう日が近づいてきたけれど
根気と視力が保たれているか不安になってきた
時間が逆まわりしてくれると良いが


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市に虎声あらん

2020-09-16 10:00:24 | フィリップ・K・ディック
幻の第一長編、待望の文庫化


「市に虎声あらん!」“VOICES FROM THE STREET ”  (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 2020/6
フィリップ・K・ディック (著)、阿部重夫(訳)1952年作品



2013年発行に平凡社から発行された単行本の文庫化
1952年、23歳で書いた長編処女作で
この後に続くディックのSF作品に散りばめられる
数々の主題のエッセンス、作品を彩るギミックの原型が確かにこの作品に見て取れる
平凡社版の紹介はこちら→〇
「幻の第一長編」と腰巻に謳われている
ディックの再刊、再版にはやたらと「幻」と書かれている
作者自体が幻化しているのかもしれない

早川書房としてはディック作品の完全文庫化を目論んでいるのだろう
紙媒体が衰退する中で
ディックの本は一定数売れるという読みがある?
初刷何冊刷ったんだろう
そうい話に関心が移っていく

7月には「逆わまりの世界」の改訳版が出ている
月一では書店を覗かないと買い損ねてしまう
老後の楽しみだね
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タイタンのゲーム・プレーヤー再刊さる

2020-04-12 11:57:59 | フィリップ・K・ディック
「悪く言えば書き飛ばしの作品だ」


「タイタンのゲーム・プレーヤー」“The Game Players Of Titan ”
1963年作品 大森望訳  (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 2020/3



1990年に出版された創元SF文庫の再文庫化ですと
奥付の前に但し書きがある

昨年8月に再文庫化された「フロリクス8から来た友人」同様に
巻末にあった著作リストが省かれている
それとSF研究家牧眞司氏の解説がかなり短くなっている
省略されたのはディックの書誌的な解説部分で
“The World Jones Made“、“The Man Who Japed”はまだ未訳と書かれていたり
邦訳本の紹介はサンリオ文庫が多数であるなど
30年前(!!)の解説なので書き直すには骨が折れそう
しかし、そういう事情を断って残しておいてほしかった
日本での年ごとの出版数がグラフで示されていて

この表の後にさらに出版社が変わり新訳が見つかりと
修正が必要なことがわかるが
日本でのディックの評価や人気度が視覚的にわかる
面白い資料だと思う
私が「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を買った1977年以降
最初のブームが訪れ
忘れたころに(ファンは忘れているつもりはないが)主に映画化などと連動して
ブームが再燃するという現象を視覚化するために
このグラフをぜひ作り直して欲しかった

さて、以前どうアップしていたのかはこちら「タイタンのゲーム・プレーヤー」
メタメタ小説だったらしい?
それは読んでいる方の能力がメタメタだったのか訳の分からない文章だ
牧氏の解説には「悪く言えば書き飛ばしの作品だ」と書かれている
それもこれもディック
裏表紙の紹介末尾には
「ゲームが支配するディストピアを描く長編小説」とあり
「フロリクス8から来た友人」の紹介にも「鬼才のディストピアSF」と書かれている
今どきのSFはユートピアを描かないので
だいたいみんなディストピアになるのだろうが・・

出版文化を守るため
ぜひ文庫版を買って未読の方はお読みください
すでに旧版を持っている方も記念にお買い求めください

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フロリクス8から来た友人 ハヤカワ文庫から

2019-11-27 16:52:29 | フィリップ・K・ディック
92年創元SF文庫版は650円税込 ハヤカワ文庫SF版は1350円+税

購入費用は倍以上になっている
これまであまり価格に目がいかなかったが
文庫が1,000円を超えるようになったころ
時代がかわったなあと思った覚えがある


フロリクス8から来た友人 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 2019/8
フィリップ・K・ディック(著)、大森望 (訳)



これは新訳版ではなく
「1992年創元SF文庫版を再文庫化したものです」とある
が著作リストは省かれている
2015年にだされた4版と同じということか
2015年の時点で1,200円+税と
初版からほぼ倍の価格になっていた

年老いて時間ができたら
みな読み返してみたいなと思っているけれど
ディックを読み切る知的体力が残っているか怪しい
「こんな雑で乱暴でつまらない小説だったのか?!」
ということにならないように
脳に十分な栄養補給を忘れないようにしたい
好奇心を失うなと・・
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ディック初期長編「いたずらの問題」

2018-10-02 23:31:16 | フィリップ・K・ディック
宮部みゆきの解説が載っていたということを知る


いたずらの問題 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 –2018/8
フィリップ・K・ディック (著)、 大森望 (訳)




最後に1992年に創元SF文庫から出版されたものの
再文庫化ですと書かれている
これまでのハヤカワSF文庫の勢いから
新訳で出されたのかと思ったら
そうではなく最近刊の帯に出版の予告もついていなかった

宮部みゆきの
「おまえは誰だ-サスペンス・ミステリーの側から見たP・K・ディックの世界」
という題の解説が巻末にある
これも1992年出版の際に書かれたもの
訳者のあとがきとディックの著作リストが省かれている

2010年にのブログを始めた時に
100日以上は連続更新すると決め
200日続けることができた
その時にはほぼ紹介するすべての本を
完全にではないが読み返した
200日で200冊とは大変なことだったと思う
今はディックの再版があれば
表紙を載せているだけだ・・

読書は体力だ!
とつくづくそう思う
で、内容のコメントはなし…です


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名著復活!名著復活?

2018-03-23 23:10:31 | フィリップ・K・ディック
本屋に行かないとわからないこと その3


フロリクス8から来た友人 (創元SF文庫) 文庫 – 1992/1
フィリップ・K・ディック(著)、大森望 (訳)



帯に名著復活とある
早川書房の最近の新訳とは違いこれは再版である
そしてカバーが変わっている
ただカバーが変わっただけでなく
初版にあった著作リストが省かれている
25年の間に邦訳の出版元が大きく変わったし
新刊、新訳の出版もあって作り直さなければならなかったろう
そこまで創元社も力が入っていないらしい

ディックのブームは周期的にやってくる
あるいは映画が封切られると本が並ぶ
そしてカバーが変わったりする
そういうのは本屋に行ってみないとわからないことだ
すでに何種類か見逃しているかもしれない

さてこの本は面白かったか?
前に紹介した時にも本の内容に触れていない
こちらも参照してください
本のあちこちに折って印が残されている
確かに読んだはずだけど・・ね
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カバーというのか帯がでかいと言うのか

2018-03-22 22:24:00 | フィリップ・K・ディック
本屋に行かないとわからないこと その2


流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 1989/2
フィリップ・K・ディック(著)、 友枝 康子 (訳)


これは新訳とかでもなく
ただ出版社の販促企画でカバーの上にさらにカバーが巻かれたもの
「アンドロイドは電気羊の夢をみるか?」では過去2回
ちょっと趣旨は違うがブレードランナー映画公開に合わせてカバーが作られた
ブレードランナー公開の時はカバー・オン・カバーでなく
違う本であるかのような扱いだった

厳密にはカバーではなく帯なのだろう
はずすとちゃんと今発行されている版のカバーがかかっている

「流れよわが涙、と警官は言った」の文庫カバーは
サンリオ版もいれれば4種類ある
こちらも参照してください

早川書房の「美しいタイトルのSF小説」という企画で
すでに出版されている文庫に幅広帯(というのだそうな)を巻いたもので
「世界の中心で愛を叫んだもの」
「くらやみの速さはどれくらい」
「たったひとつの冴えたやりかた」
「天の光はすべて星」
5冊が選ばれている
栃木県の進駸堂という書店の独自企画で
18冊の文庫にオリジナルカバーをかけたものを
早川書房が採用して実現したらしい
これは本屋に行かないとわからない

18冊の中には「アンドロイドは電気羊の夢をみるか?」もあり
油断すると書店に並ぶかもしれない
やはり本屋には暇がなくても行かなきゃいけない
読書のためにじゃないけれどもね
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ジャック・イジドアの告白

2018-03-21 21:56:52 | フィリップ・K・ディック
普通じゃない「普通小説」 ディックの普通ってなんだ?


ジャック・イジドアの告白 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 2017/12
フィリップ・K・ディック (著)、 阿部重夫 (訳)



これもブレードランナー2049公開記念の4か月連続刊行のラストを飾る1冊

32年前に晶文社から発行された「戦争が終り、世界の終りが始まった」飯田隆昭訳の新訳版
こちらも参考にどうぞ
ただ晶文社から出されていることからも分かるように
ディックが文学者として認められたいがために頑張って書いた
いわゆる「主流小説」でSF文庫で発刊されることに
彼は納得するだろうか?

ただ十分SF的でディック的混乱に満ちている
そもそも「主流小説」って何?
崇高で時代を超えて読み継がれる作品
SF小説は娯楽的読み物で劣っている
「フィネガンズ・ウェイク」は文学の金字塔だろうが意味不明
文学なんてみんなフェイクなんで
宇宙人が出てきても出てこなくても
それは虚構であることに違いない
ディック的に考えると「主流」と言わず「普通」の小説
そんなものが彼に書けるはずはなかろうと思う

この本の解説に「ディック自身の分身であるジャックを描く自伝的小説」とあり
人間であることの異常さを体現するディックの
「現実」を描いたということでは
かれにとっての「普通」を描いたものかも知れない

私はディックのSF小説の方が好きです
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シミュラクラ

2018-03-20 17:20:34 | フィリップ・K・ディック
30年ぶりの新訳・復刊 ディックは死なず


シミュラクラ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)文庫 -2017/11
フィリップ・K・ディック (著)、土井宏明(訳)



ブレードランナー2049公開記念?の4か月連続刊行第三冊目

初訳刊行は31年前になる?!
サンリオSF文庫から汀一弘訳で1986年に出版された
いい加減なコメントだけれど前に書いたものはこちらを
そこに書いてある事だけれどサンリオ版の裏表紙サマリーに
「P・K・ディック一流のガジェットやアイデアが複雑に入り組み、
メインストーリーすら容易に見さだめにくいが、間違いなくディックSFの
原点となる傑作である。」
と書いてあった
すごく書きなぐっていて稼がなければならない時代に
実は本人さえ意味不明になっていた駄作かもしれないのに
混乱と拡散の中から読者が意味を探るべく投げ出された迷宮として
ありがたく拝読する聖書になってしまう
稀有な作家なんだろうね


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銀河の壺なおし 新訳版

2017-10-28 16:01:04 | フィリップ・K・ディック
舞台は2046年!!


銀河の壺直し〔新訳版〕(ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 2017/10
フィリップ・K・ディック (著), 大森 望(翻訳)



帯には「ブレードランナー2049」の広告と
ブレードランナー2049公開記念の4か月連続新訳版刊行の予告がある

1983年に汀一弘訳がサンリオSF文庫から出版されている
タイトルは「銀河の壺直し」
他の長編はほとんどハヤカワSF文庫か創元SF文庫から再刊されているが
この作品は再刊されていない
古本屋でサンリオ版を探せばあったかもしれないが
手に入りにくいということで幻の長編という帯の惹句は分からなくもない

「ユービック」「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」と同時期の作品で
故に絶頂期に書かれたんだろう
(帯に「アンドロ羊」とあったがこの略し方はありか?!)

新訳まだ読み直していないので・・
汀一弘訳への感想はこちら
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