僕らは永遠とも呼べる長い長い旅路の中を生きる。その中で、たまたま見つけた可愛らしい花を愛で、たまたま聞いたメロディーを口ずさみ、たまたま触れた手を握り生きていく。そのたまたまの出来不出来こそが人生の鮮やかさである。
たまたま観に行った演劇で、内容の素晴らしさに胸を振るわせた少し癖の強い髪質の若いイタリア人が、「Bravo」と発する。
たまたま観に行った演劇で、内容の素晴らしさに言葉を失った直毛を綺麗に分け目を付けた初老の日本人が絞り出すように「べらぼう」と発する。
たまたま乗った鈍行で、目の前で化粧を始めた女性を見て顎が綺麗に縦に割れたアメリカ人が「Cheek show」と見遣る。
たまたま乗った鈍行で、目の前で化粧を始めた女性を見て顎が綺麗に横に分かれた日本人が「ちくしょう」と訝しむ。
僕らは一瞬とも呼べる短い短い一点の灯火である。その中で、溜まりに溜まった洗濯物を睨み、溜まりに溜まった吸い殻を蹴散らし、溜まりに溜まった未読の本を足の甲に落とした僕は、「Oh,my god」と神に嘆けばいいのか、「お前がっ」と鏡に向かって片付けしてない自分を叱責すればいいのか判らないままでいる。
多分きっと、それはどちらも同じことなのだけれど。
たまたま観に行った演劇で、内容の素晴らしさに胸を振るわせた少し癖の強い髪質の若いイタリア人が、「Bravo」と発する。
たまたま観に行った演劇で、内容の素晴らしさに言葉を失った直毛を綺麗に分け目を付けた初老の日本人が絞り出すように「べらぼう」と発する。
たまたま乗った鈍行で、目の前で化粧を始めた女性を見て顎が綺麗に縦に割れたアメリカ人が「Cheek show」と見遣る。
たまたま乗った鈍行で、目の前で化粧を始めた女性を見て顎が綺麗に横に分かれた日本人が「ちくしょう」と訝しむ。
僕らは一瞬とも呼べる短い短い一点の灯火である。その中で、溜まりに溜まった洗濯物を睨み、溜まりに溜まった吸い殻を蹴散らし、溜まりに溜まった未読の本を足の甲に落とした僕は、「Oh,my god」と神に嘆けばいいのか、「お前がっ」と鏡に向かって片付けしてない自分を叱責すればいいのか判らないままでいる。
多分きっと、それはどちらも同じことなのだけれど。