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銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

「智恵子抄」を朗読する 〜高村光太郎と智恵子〜

皆さんこんにちは、長浜奈津子です🌸


今日もいろいろな作品にふれることができました。

小説、詩、童話… そうです、ポップに弾ける「賢治童話」も良かったですね。なんといいますか、色彩豊かでまるで絵本から飛び出してくるような。。。次回も楽しみです♪

夜の時間のさいごの方に、高村光太郎の詩を読んで頂きました。「智恵子抄」からです。

彫刻家の高村光太郎の詩は、その瞬間をみごとに刻み、永遠に輝かせる。

= 愛の結晶 =

ブログの表紙写真は光太郎の彫刻「白文鳥」ですが、この二羽の小鳥も、詩も…命の輝きを宿し、色あせることなく後世に残っています。


さて、私の余計なお喋りは…いらないと思いますので、今日読んで頂いた詩の中から、3つの詩をここに置いておきます。…案外、高村光太郎の詩にはじめて出会う方もいらっしゃるかも知れません。


……………………………………

『レモン哀歌』 高村光太郎

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で
わたしの手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう
(昭和一四・二)



……………………………………

『荒涼たる帰宅』  高村光太郎

あんなに帰りたがつてゐる自分の内へ
智恵子は死んでかへつて来た。
十月の深夜のがらんどうなアトリエの
小さな隅の埃を払つてきれいに浄め、
私は智恵子をそつと置く。
この一個の動かない人体の前に
私はいつまでも立ちつくす。
人は屏風をさかさにする。
人は燭をともし香をたく。
人は智恵子に化粧する。
さうして事がひとりでに運ぶ。
夜が明けたり日がくれたりして
そこら中がにぎやかになり、
家の中は花にうづまり、
何処かの葬式のやうになり、
いつのまにか智恵子が居なくなる。
私は誰も居ない暗いアトリエにただ立つてゐる。
外は名月といふ月夜らしい。
(昭和一六・六)



……………………………………

『亡き人に』  高村光太郎

雀はあなたのやうに夜明けにおきて窓を叩く
枕頭のグロキシニヤはあなたのやうに黙つて咲く

朝風は人のやうに私の五体をめざまし
あなたの香りは午前五時の寝部屋に涼しい

私は白いシイツをはねて腕をのばし
夏の朝日にあなたのほほゑみを迎へる

今日が何であるかをあなたはささやく
権威あるもののやうにあなたは立つ

私はあなたの子供となり
あなたは私のうら若い母となる

あなたはまだゐる其処にゐる
あなたは万物となつて私に満ちる

私はあなたの愛に値しないと思ふけれど
あなたの愛は一切を無視して私をつつむ 
(昭和一四・七)


……………………………………

・高村光太郎記念館サイト・
高村光太郎 作品集〜その愛と美の結晶







写真の前に挿した桜の花かげに、すずしく光るレモンを今日も置かう


最後までお読み頂きましてありがとうございました。





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