答えは身体が知っている

セラピスト兼アスレティックトレーナーが自分の好きな事や日々感じた事を書く、息抜きブログ

世界陸上競技選手権テグ2011 第8日&最終日(9/3・4)の感想

2011-09-05 17:40:40 | 陸上競技
大会大8日(9月3日)でもっとも大きなニュースは、
何と言っても男子50km競歩決勝で、
森岡紘一朗選手が6位入賞したことであろう。
その上、谷井孝行選手9位、荒井広宙選手10位も
入賞に迫る結果であり、
日本人3選手すべてが成功レースだった(と言って良いであろう)こと。
これは、優勝と準優勝選手を出したロシアや
3位と5位のオーストラリアなどと並び、
国別の成績としても素晴らしく、
日本競歩界の強化の成功と言えるであろう。
(ルール通り歩いているという意味では、
 両国を上回っていると言えそうだ。)

日本選手の技術は、世界的にも高いのではないだろうか?
特に、森岡選手の技術は世界最高水準にあると思う。
競歩ではルール上、
両足が地面から離れてはいけないことになっている

しかし、スーパースローの映像を見た方もいると思うが、
実際には今の競歩では
両足が地面から離れていない選手はいない(であろう)。
速過ぎて肉眼では判断しにくいから、
(良く解釈すれば)失格者が限られているだけである。
歩型が良ければ警告を受けにくいということは言えるようである。

優勝したロシア選手は、
実際には両足がかなり浮いていた。
(3位の選手も。また女子20kmの1位、3位の選手も。)
スピードが上がる程両足が地面から高く離れる傾向があるようで
ペースアップして競り合っている時や
上位入賞者には両足が地面から浮く度合いが大きかった。
その入賞者の中で、
森岡選手の両足の浮き具合は最も小さかった。
恐らく、両足が浮いている時間は
他の選手の1/3くらいしかなかったであろう。
(以上、各選手の両足の浮き具合は、
 スロー再生で何度も確認した上で書いている。)


女子100mハードルに優勝した
サリー・ピアソン選手(オーストラリア)は、
その技術の高さと予選からの積極的な走りが
大きく印象に残った。

男子1500m決勝は、
準決勝で素晴らしいラスト1周のスパートを見せたバアラ選手(フランス)が
決勝では思いの外生彩がなかったのが残念。
このレースも、ケニア勢の強さが目立ったレースだった。

男子200m決勝でのウサイン・ボルト選手の優勝タイムは、
僕の予想を大きく上回った。
”遅いトラック”かと疑いを持っていたが、
勘違いだったのだろうか?
フランスルメートル選手の19秒代突入しての銅メダルは、
見事であるのはもちろん、
日本人(非黒人)選手にも希望を与えてくれたのではないか。
(かつてイタリアに、メンネアという名選手がいたこともあるが。)


最終日(9月4日)、
4×100mリレー日本が男女共に、
バトンパスの面で上手くいっていなかったことが残念。

男子三段跳では、
テイラー選手(アメリカ)が素晴らしい記録(17m96)で優勝したが、
2位のイドウ選手(イギリス)と3位のクレイ選手(アメリカ)も、
上手に着地できていればもっと良い記録が出たはずである。
イドウ選手は上体が前に突っ込むので
重心位置よりも着地地点が手前になって損をしているし、
クレイ選手も4回目のジャンプでは
右手を両足や身体よりもずいぶんと手前に着けてしまい、
恐らく40cm位は記録を損したのではないだろうか?

女子800m決勝は、
準決勝後の予想が当たり、ちょっと嬉しい。
優勝したロシアサビノワ選手は、
1周目をややペースを押さえて後方に位置していたが、
恐らく57秒2~3で回っている。
ゴールタイムが1分55秒87なので、
2周目を58秒5程度で走っている。
前後半の400mのタイム差が約1秒3というのは、
あの展開の中では理想的なペース配分と言える。
また、後半400mを58秒5で走るのは
女子としては素晴らしい力であるし、
なおかつラスト100mでのスピードを持っている。
やはりレース巧者であるし、
真の実力者である。

ケニア
ジェプコスゲイ・ブジェネイ選手は、
2周目が60秒57もかかった計算で、
前後半の400mのタイム差が4秒87もある。
これでは、いくら潜在能力があっても
中距離(800m)レースでは勝てない。
中距離は、頭を使った者が勝つ種目でもある。

男子4×100mリレー決勝は、
ジャマイカアサファ・パウエル抜きで世界新記録で優勝した。
この種目は、しばらくはアメリカよりもジャマイカ
優位に立ち続けるのだろうか?
アメリカが第3走者の転倒で脱落、
その上にそれに巻き込まれたトリニダード・トバゴ
せっかく3番手だったのに大きく遅れてしまった。
4×100mリレーは、
どうにも無事に終わりにくくなって、
波乱のおき易い種目になっている。

アメリカの第3走者が転んでしまったのは、
イギリスのアンカーと接触したからであるが、
昔と比べて選手が大型化(縦にも横にも)しているので、
1m20cmというレーンの幅はもう狭いのかもしれない

男子110mハードル決勝で、
劉翔選手(中国)の左腕と
ロブレス選手(キューバ)の右手がぶつかったのも、
両者の身体の大きさと腕の長さが大きな原因の一つであろう。


ともあれ、一人ひとりの人間の感情などに関係なく、
残酷なまでな結果が起きるのがスポーツであるが、
また一人の人間(選手)の思いが劇的なくらいに結実するというのも
リアルなスポーツの世界であるから面白い。
今回の世界陸上も、
世界一を決める戦いはまことにリアルで厳しく、
かくも美しいことを見せてくれたのであった。

世界陸上 何故か目につくキネシオ(?)テープ

2011-09-04 19:24:41 | 陸上競技
去年あたりもテレビで見て気づいていたのだが、
陸上競技の国際大会に出場している外国人選手が
キネシオテープのテープを貼っているのを
見かけるようになった。
今回の世界陸上2011テグでも、
多くの外国人選手がキネシオテープ
テープをしているのが目につく。
黒やピンクや水色をしたテープが
選手の肌に張ってある。

私は、キネシオテープを信用していない
従って、トレーナーとしてもまず使用することはない。
稀なケースで
通常のアスレティックテープでは締め付けが強いという選手に
キネシオテープで対処したことはある。
選手自身が希望する場合もある。
そんなケースでキネシオテープを使用することはあるが、
シビアな痛みには効果がないと思っている
ところが、外国人選手が現に
キネシオテープのテーピングをしているのだから、
これをどう解釈すれば良いのか?

私は、初め、海外でもキネシオテープ
トレーナーフィジオに認められ、
導入されてきているのだろうかと考えた。
しかし、先に書いたように、
あの類いのテープを信用していないので、
諸外国のトレーナーフィジオ達が
そんなに認めるだろうかと疑問も生じた。

「溺れるものは藁をもつかむ」
「イワシの頭も信心まで」
切羽詰まれば、そう言うこともあるだろう。
それにしたって、どうにも納得がいかない。

全くの想像だが、こんな可能性を考えた。
一つは、世界陸上テグ大会の大会メディカルスタッフが、
あのテープを採用したということ。
それによって、
大会のメディカルサービスを受けた選手に、
フィジオ等のスタッフが
あのテープを積極的に使用しているのではないか。

もう一つ可能性がありそうなこととして、
あのテープを提供販売する会社がIAAF国際陸連)と交渉し、
大会スポンサーなり公式サプライヤーなりになるなどして、
展示・体験・無料提供等を行なうスペース(ブース)を設け、
筋肉や関節等に不安を持つ選手達がそこを訪れ、
テーピングサービスを受けているのではないか。
その結果、あの独特のテーピングを貼られた選手が
今大会では目立っているのではないかと想像している。

だれか、真相を知っている人はいないだろうか?

世界陸上競技選手権テグ2011 第7日(9/2)の感想

2011-09-03 13:26:02 | このブログについて
この日、いや本大会(まだ終わっていないが)の最高の戦いは、
女子やり投げ決勝であろう。

世界記録保持者チェコシュポタコバ
1投目から68m80という好記録でリードする。

ロシアアバクモワは右足にテーピングをしていて
怪我をしていることがうかがわれ、
予選の2投と決勝の1投目と投てきに生彩がない。
ところがアバクモワの2投目は、
全身をしっかりと使った見違えるような投てきで、
71m25という世界記録に迫る記録で逆転!
この1投で優勝が決したかと思われた。

ところが、ベスト8に入ってからの5投目。
シュポタコバの渾身の1投は、
71m58という大投てきでアバクモワを逆転!
怪我を抱えるアバクモワには、もう逆転は不可能ではないかと思われた。

アバクモワは、北京オリンピックでも、70m78を投げたのに、
71m42を投げたシュポタコバに敗れている。
70mを投げて負けるということはまず起こりえないことである。
不運と言って良いだろう。
それが、今度は71mを投げて敗れようとしている。
こんなことは史上初であろう。

ところが、アバクモワシュポタコバの大逆転の投てき直後の5投目、
71m99を投げて再々逆転してしまったのである。
狂喜するアバクモワ
これにはシュポタコバも、呆れたように力なく笑うしかない。

さすがに6投目は両者共に記録は伸びず、
世紀の名勝負は、アバクモワの勝利に終わった。
 
 アバクモワの投てき:TBSサイトより
 シュポタコバの投てき:TBSサイトより

両者の執念、集中力、技術の高さに、拍手を送ろう。


女子200m決勝は、ジャマイカベロニカ・キャンベル=ブラウンが、
オリンピック王者(2連覇)の意地を見せて優勝した。
 女子200m決勝の映像:TBSサイトより

世界陸上4連覇を目指したアリソン・フェリックス(米)は、
走りに冴えが無く3位に終わった。
手足が長くスマートな体型と伸びやかな走りは、
ロングスプリントの素質をうかがわせてきたが、
彼女のスプリントフォームは、
現代の走理論から言えば時代遅れ。
25歳になるのにフォームを改良してこなかったのが残念である。

2位に入ったカルメリタ・ジーターは、
100mでは素晴らしいスプリントフォームで優勝したが、
200mは彼女にとって長かったようだ。
直線に入ってからベロニカ・キャンベル=ブラウンに迫ったが
直線の後半ではスピードが鈍ってしまい、
逆に直線で一旦力を温存したキャンベル=ブラウン
最後にまた突き放しに掛かるとジーターは離されてしまった。
200mの走り方を熟知しているキャンベル=ブラウン
執念の勝利だった。

とにかく、今回の200m決勝は、
ベロニカ・キャンベル=ブラウンが総てに於いて勝っていた。


女子800m準決勝で、
またもや解説者が中距離レースについて無知であることを露呈した。

第2組で、ケニアジァネス・ジェプコスゲイ=ブジェネイが1周目をぶっ飛ばし、
56秒53というラップで回った。
これは明らかに速すぎる。
その証拠に、ゴールタイムはトップが 1分58秒45であるから、
2周目は61秒92掛かっていることになる。
実際には、トップのサビノワ(ロシア)は1周目は最後尾にいたので、
1秒くらいジェプコスゲイよりもラップが遅いとみれば、
2周目は61秒程度であろう。

前後半のバランスが一番良いサビノワでさえ、
1周目と2周目のラップの差が3秒5程あると言うのは、
これは前半飛ばし過ぎの典型的なレースである。
こういうレースをするとレース後の疲労が大きくなる。
イーブンまたは後半少し速いぐらいのレースをした方が、
エネルギー節約になる。
こうしたことを、解説者が指摘しない(できない)。

恐らくサビノワは、ジェプコスゲイが前半から飛ばしてくることを読み、
自分は出来るだけ省エネレースをしようと
スタートからゆっくりと走り、
1周目に追いつけば良いというレース展開。
セオリー通りバックストレートで順位を徐々に上げ、
第3コーナーまでにスパート勝負し易い位置に付け
直線でスパート勝負で勝つ。
これは確たる読みと作戦に基づいた素晴らしいレースの実行である。
(思ったとおりに実行できるだけの経験と自信がある証拠)            ※1

それなのに、解説者は1周目の第3・第4コーナーの間のタイミングでは
「二人を離した」(二人が遅れた)とコメントしている。
さらに、2周目の第3コーナー前では先行していたクロコワ選手(スロバキア)を
サビノワと勘違いし、
アナウンサーの発言をわざわざ訂正しているが、
間違っているのはさんの方。
ユニフォームは似ているが、髪の色が全然違うのだから、
そんな間違いはして欲しくない。
総てに”見たこと”よりも”紙の上の知識”を優先し
頭の中が予断に満ちているから間違いを犯すという好例。

 女子800m準決勝第2組のレース:TBSサイトより

この女子800mの準決勝の第3組では、
南アフリカセメンヤ選手がやはり1周目を後方につけて走った。
スパートに自信があるのだろう。
この組だけは1周目よりも2周目が速い、
ネガティブ・スプリットのレースであった。
セメンヤは2周目が58秒5を切っており、
ロシアコステツカヤ選手が59秒ちょっとで走っている。
途中で書いたように、
このようなレースでは疲労度が低くて済む。

 女子800m準決勝第3組のレース:TBSサイトより

決勝では、ロシア勢とセメンヤの優勝争いになるように思うが、
セメンヤのスパートは切れがあるという風には感じないので、
レース巧者のサビノワ選手が優勝するような気がしている。


※1 思ったとおりに実行できるだけの経験と自信がある

いくら集団に付いていくと速すぎるとわかっていても、
集団から離れて独自のペースで走るということは、
不安なども心をよぎり実際には難しい。
実力と経験と勇気と決断力があるということ。
また、バックストレートまで最後尾で走っているが、
ハイペースに付いていけなくなってスピードが鈍るのは、
バックスストレートからが多い。
その時点で集団に入っていると、
そのスピードの鈍った選手が自分の進路の邪魔になるので、
直線まで最後尾にいて遅れる選手を外側から抜いていく方が
安全で確実である。
そうしても先頭の選手達もスピードが落ちてくるので、
充分残り100mまでに追いつけると読んでいたのであろう。

世界陸上競技選手権テグ2011 最終日(9/4)のタイムテーブル

2011-09-03 10:09:34 | 陸上競技
9月4日午前の部
(トラック種目)       (フィールド種目)



9:00 男子マラソン 決勝    
   (日本選手:堀端 宏行川内 優輝谷井 孝行中本 健太郎尾田 賢典



9月4日夜の部
(トラック種目)       (フィールド種目)



                     18:15 女子ハンマー投 決勝

18:30 女子4×100mリレー 予選(全3組)
   (日本チーム:福島 千里市川 華菜高橋 萌木子
         岡部 奈緒今井 沙緒里=1組


19:00 男子4×100mリレー 予選(全3組)
   (日本チーム:高平 慎士齋藤 仁志江里口 匡史
         川面 聡大小林 雄一=2組
 19:08 start予定)

                     19:05 男子三段跳 決勝

19:40 男子5000m 決勝

20:15 女子800m 決勝

20:35 女子4×100mリレー 決勝
   (日本チーム:福島 千里市川 華菜高橋 萌木子
         岡部 奈緒今井 沙緒里
 厳しいが、、、)

21:00 男子4×100mリレー 決勝
   (日本チーム:高平 慎士齋藤 仁志江里口 匡史
         川面 聡大小林 雄一
 期待を込めて)



<参考>
日本陸上競技連盟サイト:タイムテーブル(全日程/日本語)
IAAF サイト:TIMETABLE(9/4)(英語)
TBSテレビサイト:競技スケジュール(9/4)(日本語)

世界陸上競技選手権テグ2011 第8日(9/3)のタイムテーブル

2011-09-02 19:01:40 | 陸上競技
9月3日午前の部
(トラック種目)       (フィールド種目)



8:00 男子50km競歩 決勝    
   (日本選手:荒井 広宙森岡 紘一朗谷井 孝行



9月3日夜の部
(トラック種目)       (フィールド種目)



                     19:00 女子走高跳 決勝

                     19:10 男子やり投 決勝

19:15 女子100mハードル 準決勝(全3組)

19:45 女子800m車椅子 決勝
   (日本選手:Wakako Tsuchida

19:55 男子400m車椅子 決勝
   (日本選手:Jun Hiromichi

20:15 男子1500m 決勝

20:40 女子4×400mリレー 決勝

21:00 女子100mハードル 決勝

21:20 男200m 決勝



<参考>
日本陸上競技連盟サイト:タイムテーブル(全日程/日本語)
IAAF サイト:TIMETABLE(9/3)(英語)
TBSテレビサイト:競技スケジュール(9/3)(日本語)