~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

*『ぼくたちのムッシュ・ラザール』* ※ネタバレ有

2012-08-14 23:36:30 | 映画【スペイン・ラテンアメリカ・カナダ】


  『ぼくたちのムッシュ・ラザール』:公式サイト

世界各地の映画祭で絶賛され、本国カナダ・アカデミー賞で主要6部門受賞、
第84回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた作品。
モントリオールの小学校を舞台に担任の女性教師の教室首吊り自殺に動揺する生徒達と
その後任となった中年男性教師との交流を描く。

観る前は『金八先生』シリーズや『いまを生きる』みたいに
熱血的な学園モノなのかと思っていたんですけど、実に淡々としたものでした。
女性教師首吊り場面は一瞬の遠映しで生徒達も激しく取り乱すわけでもなく、
台詞は控え目で間(余白)を読みとっていくヨーロッパ映画風の作り。

代用教員バシールはアルジェリア移民で祖国から逃れる為に難民申請をしている間に
家族はテロ集団に放火され殺害されてしまった過酷な過去を背負っていて、
自分自身の現実と折り合いながら、生徒達とも哲学的な授業を通じて向き合っていく。

女子生徒は「(首を吊った)先生が最後にした事は椅子を蹴った事。」と無表情で冷静に応えていて
子供らしさがまるでなく、サイボーグみたいで怖かったけど、
後半では第一発見者の男子生徒は自分を責めたり、
「牛乳当番の自分が一番先に来る事は先生は知っていたはず。」
と慟哭していた様子は子供らしい気もした。

自殺した女性教師の動機は不鮮明だが、
自殺者の中には遺書を残す人ばかりではないだろうし、
大きな理由はなくとも衝動的な場合もあるのかもしれない・・・。
その場合は却って周囲の人達にとっては訳がわからず、残酷の極み・・・。
ましてや、子供達にとって神聖な場であるはずの教室で起きた出来事なのだから。

だけど、残された者たちはそれを受けとめて生きていかなければならない。
人間は生まれてきて生きていける限り、
何があっても生きる使命を全うするのが定めなのだから。

人間の根源である“生と死”を真摯に突きつけられたような気がした作品でした。


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