ソーダ
広東省に生まれ養子に出され、義父亡き後に梁(リョン)家に使用人として13歳で預けられてから
60年間で4代に仕えた桃(タオ)さん=鐘春桃(ジョン・チュンタオ)の実話に基づき映画化。
家政婦タオと雇い主の息子ロジャーの間で結ばれる親子のような絆を描く。
タオ役のディニー・イップはこの作品で第68回ヴェネチア国際映画祭主演女優賞を受賞。
第31回香港電影金像奨最優秀作品賞を含む主要5部門受賞作。
アンソニー・ウォンがロジャーの友人役で前半に少しだけ出ていて、
ツイ・ハーク、サモ・ハンなどが本人役で出ていたのが嬉しかった。^^
タオさん役の女優さん黒髪が豊かだからか70歳すぎには見えなかった。
(せいぜい、50代か60代前後にしか見えないよ。)
だけど、60年ぶりに新たな環境に移らざるおえなくなったタオの戸惑い、
その一方でロジャーが会いに来てくれるささやかな喜び(しあわせ)を凛と表現していたと思う。
アンディ・ラウはスターオーラ消して市井の中年男性になりきっていたね。
映画プロデューサーという華々しい職業ではあるけど、
普段は気取ったファッションではなく、カジュアルなのが庶民的だった。
タオさんは13歳から60年間一つの家に仕えていたという事は青春時代も働きづめだったんだよね。
そんなタオさんの青春時代の楽しみは
買い物先での市場の人達との関わりだけだったんだろうな。
それでも、結婚という逃げ道?もあったと思うんだけど、
家政婦であり続けたのは単にご縁がなかったからなのか?
それがこの家に仕えるのが自分の命運だと悟ったからなのか?
赤ん坊だったロジャーをおぶり、幼い頃はソーダをこっそりあげたりしてきた。
ロジャーが病気の時はタオさんが看病した。
普通だったら高齢の家政婦が脳卒中で倒れたらその時点で解雇するだけだろうけど、
雇い主側が費用を含めて親身になって面倒を見てくれたのは
タオさんが愛情をもって一家に尽くしてきたのを感謝して
タオさんの事を本当の家族のように思ってくれているからなのでしょうね。
“義母”と紹介している場面もあったけど、ロジャーにとっては本当の母親以上の存在なのでしょうね。
まぁ、ロジャーは映画プロデューサーなので、普通の会社勤めのサラリーマンよりかは
時間の融通が効きやすいというのもあるんだろうけどね。
それでも、タオさんが余命わずかの時に海外出張が入ったりしていたから
多忙な中で介護していたのでしょうね。
ただ、一つ気になったのは、手の施しようのない症状になったタオさんの薬を減らすって、
つまりは尊厳死だったのかしら?
香港映画といえば、ノワールやソードアクションなどの娯楽映画が多い印象だけど、
この作品は高齢化社会の庶民を描いていて大陸(中国)の家族映画ぽかったです。
私は香港の女性監督アン・ホイ監督作を観たのは初めてでした。
アン・ホイ監督は中国人の父と日本人の母をもつハーフだからか
少し小津映画の情緒もある朴訥とした趣きが印象深い作品でした。
本当にこの方は作品の内容が良ければ、こんなこともしちゃうんですから、見た目以上に中身が男前ですよね。
香港の俳優さんは『海洋天堂』のジェット・リーもそうでしたけど、
作品内容に惚れこめばノーギャラで気前よく出演されますよね。
情が厚い男性が多いからこそ、年配女性を敬愛し、献身的に尽くす作品を生み出せるのでしょうね。