~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

*『普通に生きる~自立をめざして~』* ※ネタバレ有

2012-01-29 23:08:35 | 映画【日本】


  『普通に生きる~自立をめざして~』:公式サイト

福祉の担い手

“どんなに重い障害を持っていても、本人もその家族も普通に生きてゆける社会をめざす”
という理念のもとに作られた
重症心身障害児者の為の生活介護事業所のドキュメンタリー。
2つ目の通所施設建設計画が持ち上がってからの5年間を映し出す。

私は映画を本格的に観始めてから20年経ち、数多くの障害者映画を観てきたけど、
重度障害者を映しだした映画は初めてのような気もします。
(障害者映画はなぜか健常に近い人を描く事が多いので。)
私の妹よりも重度の障害者が描かれている映画を観るのは初めてだったもの。

鼻にチューブを挿入している幼い女の子の絆創膏に
チューリップの絵が書いてあって真心を感じましたね。
以前のテレビドキュメンタリー『ゆっぴいのばんそうこう』を思い出しましたよ。

障害者が特別支援学校(養護学校)を卒業した後の進路は
入所施設か自宅介護の二つに一つに限られていたが
親御さんは自宅から通所させて社会とかかわっていく事を希望される事が多いので
通所施設開設にのりだしていく過程が描かれています。
それに向かって動き出した人の多くは障害のある子を抱える親達でした。
“福祉の受け手”に甘んじるのではなく、
自らが“福祉の担い手”にならなければならない。
親代表として行政に携わる為に市議会議員になった女性もいる。
とは言え、その女性がキャリアウーマンという感じでもなく、
家では割烹着を着て家事をしていたりするお母さん。
その女性と夫、長女は障害者で、次女と息子さんは健常者。
次女が「お姉ちゃんのほうが先に自立しそうだよ。」
というような事を冗談半分?に言うんですけど、
実は私も親に同じような事を言った事があったの。^^
映画で描かれる障害者や家族はガムシャラに頑張っていたり、
感動を煽る演出が入る事もありますけど
この作品は世話をしている様子も描かれているけど日常を淡々と映しだしている。
カメラが入っていても構えたりせずにありのままの家庭の様子を撮ってもらっている。
そういう“普通”を映しだしている。

入所施設のように社会から隔離してしまうのではなく、
保護者が健在の間は障害のある子を家に抱えるという過保護というわけでもない。
自宅から通所施設に通い、慣れてきたら、
親元を離れて医療介護も行き届いたケアホームで暮らすようにする。
(昼間は通所施設、夜はケアホーム。)
つまり、健常者が高校卒業以降に独り暮らしを始めて
社会へ出ていくのと同じ普通の感覚。
これならば障害のある子も社会と関われるし、
親も一生障害のある子に縛られる事はなく安心して自分の老後の人生設計も出来る。
まだ自宅に障害のある子を抱えている親もショートステイ(短期入所)があれば、
少しの間は子供の世話から離れて余暇を味わえる。
理想的な福祉の形ですね。
だけど、その理想にたどりつくまでは時代の流れと共に変化していく法律や
それと折り合いながら予算確保といった
シビアな面を乗り越えていかなければならない実情も描かれています。

重度障害者を抱えて死のうと思うほどの絶望感に陥るが、
それを乗り越えるとこの子がこの世に生を受けた事で教えられる事もあった事に気づく。
障害者の世話は大変だけど、必ずしも不幸ではなく、
親の会などで同じ障害を抱える子供の親御さんたちとの交流を持つ事で人脈も広がるし、
健常者の親では経験出来ない世界を知る事が出来たという意味では至福とも言える。
結局は感じ取り方次第なんですよね。

私が常に思ってきた事(障害者のいる家庭であっても普通に暮らしている)を
映画にまとめてくれたような印象で純粋に共感できた作品でした。


P.S.
上映後、ロビーで施設の所長さん、映画のプロデューサーさんを囲んで
10名近く残られていた観客(重度障害者を抱えるご家族)との輪が出来、
貴重なお話しを聞く事が出来、勉強になりました。
所長さんには個人的な事情も聞いて頂き、アドバイスをして頂きました。
何気に抱えていた不安もふっきれたので、
心に灯りがともったような温かい気持ちになりました。
映画のプロデューサーさんにも帰る時に挨拶して頂き嬉しかったです。
ありがとうございます。


2 コメント

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ありがとうございました (小沢映子)
2012-02-01 18:25:15
映画を観て下さってありがとうございました。その上、ブログにこんなに素敵な感想まで書いていただいて、とっても嬉しいです。
一人でも多くの方に観ていただきたいと思っています。
返信する
とても嬉しいです。 (BC)
2012-02-01 22:52:53
小沢さん、はじめまして。
こちらこそ、私のブログに来て頂けてとても嬉しいです、ありがとうございます。

普段は色んな映画の感想やミーハーな事も語っているお気楽なブログなのですが、
映画ファン同士で良い映画をオススメしあったりもしているので
私のブログやツィッターを通じてこの作品を紹介していければと思っています。
上映劇場が増えていって、より多くの方達に観てもらいたいですね。
返信する

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