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~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

◆『シマウマ』◆ ※ネタバレ有

2016-05-29 21:32:14 | 映画【日本】


  『シマウマ』:公式サイト

都市伝説
成仏

ダークな世界観と過激なバイオレンス描写の小幡文生による同名漫画を
竜星涼主演・橋本一監督・高橋泉の脚本で映画化。
美人局(つつもたせ)で仲間達と一緒に金稼ぎをしていたチンピラの竜夫〔竜星涼〕は、
ある日ヤクザを引っ掛けてしまったことから、
“回収屋”の“ドラ”として、裏社会へ足を踏み入れることになる過程を描く。

無駄な装飾を省いたセットや俯瞰的な画の構図は
韓国のパク・チャヌク監督の復讐三部作やキム・ギドク監督の映画ぽいけど、
怨恨が絡んでも押しつけがましさを感じさせず、対決の応酬なのは往年の東映任侠映画ぽかった。

ヤバイ場面の公式動画がいくつか公開されていたけど、
私的にはそれらの映像よりも恐ろしく感じた場面がありました。
前半、ドラが消火器で相手の肩辺りをぶん殴る場面が怖すぎました。。。
ドラは回収屋になってから悪に染まっていったのではなく、元から凶暴性を秘めていた男なんだなと。
常に荒っぽいわけではなく、普段はクールだけど、
内面のマグマが沸点に達すると一気にキレて暴力を振るうタイプなのかなと。
なので、アカが「ドラはこっち側の人間(回収屋になるべき人間)」という旨言ったのも説得力を帯びていたなと。

黒スーツインテリ眼鏡ドラとキイヌ〔日南響子〕のシーンはアクションもラブシーンも
フランスのノワール映画ぽい洗練された雰囲気がありました。
この二人の場面だけは別の映画のようでした。
(作品的には良いのか悪いのかはわからないけど。。。)
日南さんは特徴的な声。
艶があるけどクールで哲学的な台詞回し。
個性的な女優さんだなと。
大人びて見えるけど、まだ22歳で竜星くんよりも1つ年下なのですね。

グロさだけがウリで何も考えずに観られる作品かと予想していたけど、
グロの描き方は一瞬でドーンと突きつける感じで、ねちっこさはなく、
意外と台詞が奥深く、制裁の定義について考えさせられましたよ。
シマウマの語り「死んでいい人間はいないが、長く生きてはいけない人間はいる」旨、
網川とドラのやりとりの「成仏」云々など。
状況説明的な台詞は主にキイヌが担当していて、
他のキャストの台詞は紋切り型な分、何気ない台詞が妙に印象に残ったりもしました。

 一気に死に至らしめるのが絶望なのか?
 外見を痛めつけ社会に出られない風貌にして人生を破壊するのが絶望なのか?
後者のほうが後味悪いけど、回収の巻き添えになった網川の妻のように自ら死を選ぶ者もいるだろうし、
長生きしないケースのほうが多いだろう。
なので、回収屋の原則であった“殺しはしない”は一見、カッコ良い主義だけど、
実は手を下すのが怖いだけ臆病なだけにも思えて、
カッコつけていても実はカッコ良くない(情けない)ある意味人間らしい集団だなと。
ドラが彩を回収出来なかったり、
回収されて醜い姿で呻いている彩をドラ自身では殺せないのがそれを物語っていたような気もした。
それにしても、裏切った女である彩を回収するのをドラは躊躇する・・・。
一度は愛した女には弱いものなのかな?男って。
男女逆ならあっさり回収しそうな気もするけどね・・・。
彩役:高橋メアリージュンさんの「たっちゃん。」という呼び方竜夫(ドラ)への愛情がこもっていて良かった。
だからこそ、最初は計算だったろうけど、
本当に竜夫に惹かれてしまったのかもしれない女心も伝わってきてせつなかったな。

対決は闘うのではなく、どちらか片方が一方的に倒すか、倒されるか。
その瞬間の立場をお互いが悟っているかのよう。
だから、相手がその場に来た時点で運命を悟ってしまう感じ。
クライマックス、網川がやって来て、
言葉にならない言葉を発して動揺しているドラは瞬間的に死の危険を感じたんだろうな。
前半、腕吊るされて、人間花火されそうになって、よだれ?落とすほど恐怖を感じても、
白目剥いて睨みつけて、アカの顔面に口から血しぶきを吹きかける強気で怯まない男。
自分が追い詰められても制裁乞いではなくて、仲間の生死を問う。
そういう人情の熱さをひた隠すように
いつも渋くキザな口調でカッコつけていたドラが
子供のように狼狽えて逃げていく姿が妙に印象に残った。
ドラは短気ではあるけど、喜哀楽は表に出さないがゆえに
苛立ちや不安をタバコ吸う事で紛らわせている。
決して見栄えだけのカッコつけているわけではなくて実は人一倍繊細な気もした。

網川役:福士誠治さんとドラ役:竜星くんの二転三転する対決が圧巻。
誠治さんのリアルな表情上手すぎだし、気迫も凄い。
手加減せず本気でぶつかってくる役者さんとの共演は
竜星くんにとっては刺激的だったと思うし、勉強になったんじゃないかな。
  網川がドラに言った「成仏しろよ。」はせめてもの情けをかけたのか?
 それとも、生まれ変わってもお前を倒すと言う意味なのか?
  ドラが言った「俺たちが成仏できるわけねぇだろ。」は
 生まれ変われるわけがない、俺達には絶望しかないという意味なのだろうか?

シマウマ役:雅也さんの瞬きなしで、感情を全て排除したような冷徹な台詞回しにも痺れたよ。
ドラ役:竜星くんのシマウマへの対抗心を眉間に皺を寄せぎゅっと口角を結び、
眼底から発する静かながらもメラメラ尖った目力や低音の声も良かったけど、
それをも受け止めた上でストンと一気に地に落とすような雅也さんの低音の台詞回しは鳥肌が立つほど圧倒的で
ベテランの貫禄だけではなく、ヴァイオレンス(ハードボイルド)映画における
映画俳優の在り方を若手に示してくれたような気もする。

雅也さんの出番は少なかったけど、雅也さんが登場すると画面がピリッと引き締まる感じでした。
竜星くんが数々のインタビュー雑誌で雅也さんの事を
「シマウマの迫力が凄かった」「現場に緊張感を与えてくれた」
との旨で誉めてくれていたのはそれがちゃんと伝わったからだと思います。
雅也さんは自身のラジオで
一場面だけ「ドラー!」と声張ってしまったのを後悔していたけど、私はそれはそれで良かったと思う。
淡々と話しているだけではボスらしくはないし、時には威嚇的な口調でシマウマの威厳を示した方が、ボスらしいから。
竜星くんも本当にビクッときて立ち止まった感じだったし。^^

ドラが異常にシマウマに対抗心をもっていたり、
ラストでシマウマがドラではなく「竜夫」と呼んでいたりしたのが意味深・・・。
原作では二人は過去に因縁があるらしいけど、映画ではそこまでは描かれていなかったので
もし、続編の製作が実現出来るのであれば、
ドラとシマウマの関係性も掘り下げて描いてほしいなとは思いますね。
 


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