~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

*『パパの木』* ※ネタバレ有

2013-06-22 18:49:25 | 映画【フランス】


  『パパの木』:公式サイト

木曜日の子供

長編監督デビュー作の『やさしい嘘』でセザール賞の新人監督賞を受賞した
ジェリー・ベルトゥチェリ監督の2作目。

突然、大木の前で心臓発作を起こし急死した父を目にした子供と残された妻が、
大木を通じて哀しみを乗り越えていく姿を美しい映像で描く。

シャルロット・ゲンズブールはアラフォー3児の母にして、
スレンダーな体型を維持出来ているのは凄いね~。

妻:ドーン役のシャルロット・ゲンズブールは
近年の作品では明るい役も少しは演じるようになったけど、元々は繊細なイメージ。
この作品でも大半はシリアスな表情を浮かべている。
だけど、子供と接する場面はふと笑顔を見せる時もある。
特に、長男が試験に合格した事を報告する場面のドーンの笑顔は少女のようにあどけなかった。
反抗的で気が強い長女シモーンよりもドーンのほうが可憐にさえ感じる。

つまり、監督としてはそれが狙いのようにも感じた。
すなわち、ドーンを“母性”ではなく、
“永遠の少女”として存在させたかったのかもしれない。
ドーンの心は亡き夫:ピーターと出逢った頃の10代のまま。
だから、ドーンは突然ピーターを亡くしても、
4人の子供の為に気丈に立ち直らないといけないと踏ん張る意識ではなく、
男を亡くして寂しくてたまらない女という心境なのだろう。
ドーンは新しい男ジョージと出逢わなくても、
いずれは別の男を求めてしまっていたかもしれない。
つまり、男なしでは生きていけない女。

その一方で、長男は将来の事を見据えて自立しようとしているし、
長女シモーンは亡き父が忘れられずに新しい男ジョージを断固として受け入れようとはしない。
まっ、8歳のシモーンはパパへの愛着心やママを他の男に取られちゃうという
普遍的な子供ならではの嫉妬心からくる必死な抵抗もあるんだけど、
大木伐採を強行しかけるジョージの本質を見抜いていたのならば
人を見る目があるようにも感じる。
フラフラしていて頼りなさげな母ドーンよりも
意志がハッキリしているという面ではシモーンや長男のほうが大人かもしれない。

結構シビアな題材ではあったけど、オーストラリアの田舎を舞台にしているからか、のどかな空気。
フランス映画特質のどんより感はカエルのエピソードぐらいだったな。。。
大木も本物を使っているので大地のスケール感があり、
まるで、絵本童話を実写化したような映像は美しかった作品でした。


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