~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

*『アリラン』* ※ネタバレ有

2012-04-07 01:10:29 | 映画【韓国】


  映画『アリラン』 - シネマトゥデイ

 
上り坂 下り坂

2008年の『悲夢(ヒム) - goo 映画』を最後に3年間の沈黙を保っていたキム・ギドク監督が
隠遁生活を送る山中の小屋を舞台にその間の生活や心情を語る。
カンヌ映画祭<ある視点>部門最優秀作品賞受賞作。

1人のギドクが厳しい問いかけをし、もう1人のギドクが泣きごとを言っている・・・。
ドキュメンタリーなんだけど、1人2役のフィクションを観ている感じ。

端的に言えば、田舎の小屋で暮らしているヘタレな中年男が
世界の映画祭で高評価を受けてきた映画監督だったという事なんですけど、
意欲的に次々作品を発表し、駆け抜けてきた映画界の寵児だった彼が
撮影中に起こりかけた危険な出来事や育てた弟子監督が利益や商業主義に流され去っていったショックが重なり、
映画作りのアイデンティティ?を見失い、 一貫していたテーマの根源が崩れ落ちてしまう・・・。
映画を撮れないから自分を映画に撮ったギドク。

日本版ポスターでは“もがき、苦しみ、道はひらける。” というキャッチコピーだけど、
まだ道は開けていない気もする・・・。
この作品で世界三大映画祭を制覇したけど、
彼の心の傷は形式的なモノではそう簡単に癒えない気もするから。

前半、「韓国映画は世界の映画祭では日本が撮っているようなグランプリはない。」 というような事を語ったギドク。
カンヌでは『オールド・ボーイ - goo 映画』がグランプリ(最高賞パルムドールに次ぐ賞)だったけど、
作品で頂上の受賞はないという意味なのでしょうね。

後半、『春夏秋冬そして春 - goo 映画』で壮年期の僧を自ら演じたギドクのモニター映像を見ている今のギドク。
そのモニター映像には日本語字幕が映っている。
つまり、ギドクは韓国語版DVDではなく、日本語版DVDを観ていたの。
それも一種のカタルシスなのだろうか?

ある意味、自分の情けなさをさらけ出す自虐映画でもあり、
後輩が裏切った内情をぶちまける内部告発映画でもあるような気もする。
なので、後味は決して良いとは言えないけど、
方向性を見失っても映画を撮りたい本能は消えないものなのでしょうね。


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