~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

*『最愛の子』* ※ネタバレ有

2016-02-21 21:40:41 | 映画【中国・香港・台湾】


  『最愛の子』:公式サイト

3歳の息子が失踪し、三年後に人里離れた田舎で他人の子として育てられていた息子を発見し再会した両親、
事情を知らず三年間暮らしてきた育ての母親双方の葛藤や苦悩を描く。
実際に起きた事件をベースにピーター・チャン監督が映画化。

子供がさらわれて何年か後に戻ってくるという展開は
日本映画『八日目の蝉』を思い出したりもしたんだけど、
『八日目の蝉』は誘拐犯の女が育てるけど、『最愛の子』は夫が連れてきた子を育てるというのが異なる。
前者はいつかは捕まり、引き離されるのはわかっているだろうけど、
後者は突然、明確な理由がわからないまま子供と引き離される・・・。
しかも、子供の実の親は事件当時、離婚していて母親は再婚もしていた中、
元夫婦が協力して子供を探し続けていたので、複雑に入り組んだ状況・・・。

確か、『八日目の蝉』では赤ん坊の頃に連れ去られていたけど、
『最愛の子』は3歳の時なので少しは物心ついているだろうし、
突然、何者かに連れ去られた先で抵抗はしなかったのだろうか?
それとも、元の家が良い環境ではなかったので、
裕福ではなくても田舎の農村のほうが家庭らしさを味わえて居心地が良かったのかしら?

実の両親が子供を見つけて、実の両親とホンチンが子供を引っ張り合う形相になるんだけど、
普通は子供が痛がっていたら、少なくともどちらかの親は手を放すよね。
(心底子供を愛しているなら、特に母親は。)
でもまぁ、それは日本人の感覚で観るからなのかな?
韓国や中国の映画観ていると
子供の様子はお構いなしに自我を押し付けているというか。
子供を手元に置いておきたい一念でそれが全てなあまり一心不乱で・・・。
子供を慈愛してというよりも子供を傍に置く為に必死な自分に酔っているようにも感じてしまうのよ・・・。

主演はヴィッキーなのに中盤までは全く出てこなくて、中盤から出ずっぱり状態。
ざく切りしたようなショートカットに顔のお肌がかさかさのノーメイク、
体重は増量したのか少しふくよか。(所謂、おばさん体型。)
知的で艶のあるロングの洗練された美人である才媛の面影は全くなく、
頭が少し弱そうだけど人一倍子供思いの田舎の農民役を熱演していました。

ヴィッキー演じるホンチンは中卒で世間知らずな感じで、男性を見極める目もなさそうだけど、
夫が死ぬ前に言った言葉で具体的にはピンとこなかったとしても、もしかしたら・・・と察知する直感はある。
まんざら、無能ではないだけに、ラストはアイロニーでしかなく、辛すぎた・・・。
(『灼熱の魂』ほど悲惨ではないけど、女としたらかなり・・・。)

ヴィッキーの役がインパクトあったので、印象が霞んでしまったけど、
終始沈痛な表情を貫きつつも感情の機微を的確に表していた実の母親役のハオ・レイの演技も良かったな。
ロウ・イエ監督の『天安門、恋人たち』『二重生活』に出演していた女優さん。
アート映画の女優さんなイメージだったから、今作のようなメジャー映画?は意外な気もした。

鑑賞後にパンフレットを読んで、ラストは映画ならではのフィクションだと知って、少しは安堵した。
これが現実だとあまりにもホンチンが気の毒すぎるから・・・。
誰を何を信じたら良いのかわからなくなるだろうし・・・。
何が希望なのか絶望なのかも・・・。
思わず言葉を失うような息を呑むやるせないラストに考えさせられた作品でした。


P.S.
香港映画にさほど詳しくはない私でもピーター・チャン監督の作品は
『ラヴソング』『THREE/臨死』『ウォーロード/男たちの誓い』は観ています。
ラブストーリー・ホラー・武侠史劇
今作の社会派まで
多岐にわたるジャンルを手掛ける監督という印象です。

ノワール・純愛・コメディ・証券映画まで
幅広いジャンルを手掛けるジョニー・トーもそうだけど、
香港の監督は型にハマらない自由なスタンスの方が多そうですね。


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