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桜
河瀬直美監督がドリアン助川の同名小説を映画化。
どら焼き屋で粒あん作りを任されたハンセン病患者の徳江〔樹木希林〕の姿を、
季節の風景を織り交ぜた映像と共に描く。
今回は原作有りの作品でしたが、
自然(特に木々)の中で人生観を反映させているのは河瀬直美監督らしい作風でした。
私はハンセン病(昔はらい病と言われていたそうです)の事は映画『砂の器』で初めて知ったのですが、
詳しくは知りませんでした。
自分ではどうする事も出来ない病気で隔離され、自由を奪われる・・・。
後年、法が撤廃されても差別が一気に解消されるわけでもなく、
社会(世間)の理解を得られない・・・。
結局、社会は一つしかないんですよね。
各人に応じて社会が区分されていないから、大多数の健常者中心の暗黙のルール?がまかり通る。
だから、一つしかない社会の中で健常者ではない人は差別される・・・。
その中でも命ある限りは生きる意味を見出していかなければならない。
誰も悪くない誰も責められない、そういう社会だから・・・。
そう割りきっていても、そう割りきってしまえばしまう程、
それでも社会の中で自分の存在意義を感じたい、輝きたいと願うのが人間の摂理。
町で働く、健常者で仕事している人なら当たり前の事でも、
健常者ではない人にはそれが大きな夢だったりする。
徳江さんは短い期間だったけど、店で働けて接客も出来たのは幸せだったんじゃないかなと信じたい。
子供を授かっても出産させてもらえない・・・。
病気の拡大を防ぐにはやむ得ない策だとされていたのかもしれないけど、
後年に遺伝性はあまりないと証明されたそうなので、
この世に生を受ける事がなかった子供達も法律の犠牲になったわけですよね・・・。
それにしても、ハンセン病の人はお墓も作ってもらえないなんて・・・。
そうやって、何十年に渡り隔離される中でも
施設の入所者の方達が孤立して暗い顔はしていなくて、
普通に笑顔で談笑している。
徳江さんには佳子ちゃん〔市原悦子〕という親友がいる。
施設内も整理整頓されていて清潔な感じ。
そういう生活風景に救われる思いがした。
佳子ちゃん役の市原悦子は久々に観たな。
しかも、主役じゃないのは意外だった。
昔は映画『青春の殺人者』にも出演されていたけど、
私がスクリーンで市原さんを拝見したのは初めてだと思う。
出番は多くはないけど、穏やかで温かみのある良い演技されていたな。
女子中学生ワカナ役の内田伽羅は樹木希林のお孫さん。
樹木さんに勧められてこの作品のオーディションを受けたそうです。
つまり、お父さんはモックン(本木雅弘)なんですよね。
くっきりした目元がお父さんによく似ていたな。
演技も安定感ありますね。
私が最もせつなくじーんときたのは千太郎〔永瀬正敏〕のこの言葉
「世間よりももっとヒドイのは俺だ。(徳江さんを)守れなかったんだ俺は・・・。」
千太郎が徳江さんが辞めてしまった事に関して後悔する場面。
男の人って女性を守らないといけないという意識があるんだろうな。
徳江さんも子供が生きていたら千太郎ぐらいの年齢だったので、
千太郎を助けたい想いで働いていたんだよね。
相手の為に力になりたいと思う。
そういう気持ちが純粋で美しく、尊い絆を感じたし、
心洗われる思いがした作品でした。