~青いそよ風が吹く街角~

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『無言歌』...

2011-12-28 21:01:16 | 映画【中国・香港・台湾】


  『無言歌』:公式サイト

オオカミ
農場

ドキュメンタリー映画『鉄西区』『鳳鳴-中国の記憶』で
山形国際ドキュメンタリー映画祭グランプリをはじめ
国際的な賞を数々受賞した中国のワン・ビン監督の初の劇映画。
ヤン・シエンホイの小説『告別夾辺溝』と多くの生存者たちの証言に基づいて実話を映画化。

1949年に中華人民共和国を建国した毛沢東は独裁体制を布くが、
1956年にソ連でスターリン批判が始まった事により、
毛沢東は「共産党への批判を歓迎する」と“百花斉放・百家争鳴”という運動を推進した。
その後、知識人の間で中国共産党に対する批判が出るようになったが、
1957年6月、毛沢東は人民日報に「右派分子が社会主義を攻撃している」
という社説を掲載して、突然、方針を変更し、
それまで党を批判した人々を容赦なく粛清する“反右派闘争”が始まる・・・。

砂漠のような荒れ地でほとんど水のような雑炊だけが与えられ、
まるで戦時中の防空壕のような土中の洞穴に居なければいけない・・・。
つまり、ナチのホロコーストのように収容所のプレハブさえもなく、
ロクに食事を与えられる事もなく、放たれている・・・。
そして、亡くなったら土を被せられるだけだったり、
身ぐるみはがされて池?に投げ捨てられたり・・・。
夫を探しに訪ねて来た妻が夫の亡骸に対面し慟哭・・・。
砂埃が舞うなれの果ての地のそういった状況を淡々と映し出す・・・。

理不尽?な独裁政権によって虐げられた人々・・・。
それは、ナチのホロコーストも同様だが、
ホロコーストの場合はサディスティックな暴力を受ける場合が多いだろうけど、
反右派闘争によって虐げられた人々はそういった扱いとは少し違い、
行為によって傷めつけられるというよりも何かにつけ捨てられている・・・。
敵側(国家)が高圧的な感情すら切り捨てているという意味では
ナチよりもはるかに怖ろしく感じた・・・。

私は中国に関しては詳しくはないので
中国にこういう出来事があったのはこの作品を観て初めて知りました。
現在でも中国では反右派闘争はタブー視されているから、
ワン監督は中国政府の許可を得ずに中国の資本も受けずに極秘で撮影。
(この作品は今でも中国では劇場公開されていないそうです。)
ただでさえ、検閲が厳しい中国でこういう作品を撮る事は様々なリスクも伴うだろうけど、
果敢にも6年かけて完成させたのは
例え、中国の負の歴史であっても決して風化させてはならないという
監督の強い意志が伝わってくるような気がした作品でした。


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