『うつせみ』・・・ ※ネタバレ含

　　　

　　　心の闇に侵入し、心の鍵を解き放つ・・・
　　　この世を彷徨う愛の幻影（夢幻）・・・
幻想的な究極の愛を描いた作品ですね。
神秘的な余韻が残る作品です。(*^-^*

暗くどんよりした瞳、夫婦生活の束縛？（呪縛？）に疲れきって、正気がなく、
ねけがらの状態の人妻が謎めいた若い青年と出会い追いすがる様に寄りかかり行動を共にする。
青年が落ち込んでいる時はさりげなく支え母性を取り戻し、
髪の毛先を切ってもらって綺麗になりたい女心を取り戻す。
終盤は天使の様な神々しい微笑のソナ〔イ・スンヨン〕。
二人の愛は聖天するかの如く・・・。

台詞が少ない作品だったけど、全く眠たくならなかった。
観ていて、よどんだ空気に溶け込むようにひたひたと引き込まれていった。
（↑キム・ギドクはやっぱり凄いよぉ！）
私は元々、ハードな作風は苦手なので、
本来ならば鬼才と言われるパク・チャヌクやキム・ギドクは苦手なタイプのハズなのですが、
観るとハマってしまう作品が多いです。
色彩感覚が独特でブラックユーモアを交え、動的なテンポで誘導し、
“哲学的な寓話”に昇華させるパク・チャヌクも才気溢れる監督だと思いますが、
テンポ感（演出の緩急）は乏しいけど、人間の心の闇や突発的な（数奇な）運命を情的かつ静的に抉り出し、
“哲学的な神話”に昇華させるキム・ギドクの作風に私はどちらかと言うと惹かれます。(*^-^*

一緒に観に行った友達が
「イ・スンヨンって、『初恋』〔1996～1997年の韓国ドラマ〕の時と全然イメージが違うね。ビックリしたよ！」
と驚いていました。
私は『うつせみ』の人妻：ソナ役のイ・スンヨンの過去の出演作は『初恋』しか見ていないのですが、
『初恋』の時の彼女は台詞を捲し立てて話すし、思いっきり泣く。
わがままなお金持ちのお嬢様役で感情を真っ直ぐにぶつける演技だった。
『うつせみ』では成熟した大人の色香を漂わせ、セリフも少なく内に感情を溜め込むような物静かな演技。
対照的な演技だけど2作共、表現力は凄みが有り、風格を感じます。(*^-^*

青年役のジェヒの目ヂカラも凄い☆
性格俳優路線を歩めば確実に大成しそうな将来性のある俳優さんだと思います。(*^-^*