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組織の中でフローを起こすには

2006年02月05日 | MBA

う~疲れた。。。Managing Flowの予習、引き続きGood Business第六章です。相当長かったです。割合面白くはありましたが、日曜の昼間の時間がほとんどとられてしまいました。。。いい加減チクセントミハイ教授のフロー論は掴めたので、若干繰り返しの要素に飽き飽きしてきています。。。この本が終われば名著とウワサのGood to Greatに教科書が変わるので楽しみです!

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Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning

Penguin USA (P)

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Chapter6: Building Flow in Organizations
Good Business -Leadership, Flow, and the Making of Meaning
Mihaly Csikszentmihalyi
Penguin

[Essence]

マネジャーの主要な仕事は人々が効率的に働けるようにすることである。そして、理想的な組織とは、それぞれの従業員が自分の潜在的な力を発揮する余地を見つけられるような場所である。このような組織を創る最も優れた戦略は、従業員がフローを経験できるような条件を整えることである。

1. 組織の目標や価値観を明確化する

組織の目標や価値観が明確でなければ、もしくは正しく理解されていなければ、従業員がそれに意識を集中することは困難である。従業員が会社のビジョンや価値観に対するリーダーのコミットメントを信じることができ、リーダーも部下たちを信じることが出来なければ、その組織は自滅するだろう。

多くの組織においてこのような目標が明確でない状況はいくつかある。

第一に、組織のミッションが誰にとってもクリアでない場合である。つまりトップマネジメントが組織の目標を明確化するという仕事をしていない場合である。このような場合には、次のレベルのマネジメントがこの問題を解決すべくトップマネジメントに対して問題提起しなければならない。うまく経営されている組織においては、組織のコアとなる価値観がリーダーの言動の中で示されるとともに、書面のステートメントや言葉でのコミュニケーションを通して継続的に強化されている。

第二に、ラインマネジャーがチームや部門のミッションを理解していない場合である。このような場合、ラインマネジャーは、時間を割いて自問自答してみる、同僚、部下、上司と話をしてみる等の方法で、自らのチームや部門のミッションの明確化に努める必要がある。

第三に、自分の部下がミッションを明確に理解していない場合である。我々は自分が状況を理解している場合、当然に他の人にとっても状況は明らかであると考えがちである。マネジャーは、すべてのスタッフが十分に情報やミッションを共有できるように努めなければならない。

しかし、まるで伝言ゲームのように、最高の状態の下でも情報は急速に腐食する。これを避ける唯一の方法は、オープンなコミュニケーションをシステマティックに維持することである。また、自分自身が無意識に部下たちに情報が届かないような状況を創り出していないかどうか省みてみることも有用である。さらに、組織の長期的な目標は極めて安定的であるが、日々の優先順位は変わりやすく、それが徐々にであるため誰も気づかないという場合もある。組織を正しく導いていくためには、マネジャーたちはこのような変化について従業員にきちんと伝え続けていかなければならない。

2. 個別の仕事に関する目標

組織としての目標を明確化することは、フローを経験する十分条件ではない。というのも、フローを経験するためには、その一瞬一瞬に、何を、どのように為さなければならないかを知る必要があるからだ。工場の組立ラインの仕事のように、事前にすべてのステップが明らかにされているような仕事もあるが、ほとんどの仕事の場合、どのように取り組むべきかについては大きな裁量の余地がある。

しかし、多くの場合、人は自分自身でそのようなゴールや仕事のルールを設定するということができないものだ。また、彼らは指示を受けたことに誠実に従うことはできるが、それでいて行き詰まった際に即興的に戦略を変えることに対しては非常に警戒心を持つ。

後者のような業績目標の柔軟性を人々に受け入れやすくさせるため、マネジャーには何が出来るだろうか。最も良い方法は、実践の中で、もし必要なら失敗の中で、学ばせることである。例えば、細かい指示をせずに仕事をさせてみることから始めるのも意味がある。

たまに仕事においてフローを経験することに長けている人もいる。彼らは、非常に制限の強い仕事を引き受けても、彼らにしか気づかないような自分自身のニーズに合致した業績目標を打ち立て、仕事を非常に興味深いものへと変えてしまうのである。

このような目標を設定する能力は、自分のやっていること及びその結果に対して自ら十分に注意を払うことによって強化される。ただ、残念なことに多くの従業員は自ら効果的な戦略を立てるのに十分な心的資本psychological capitalには恵まれていないから、そのような従業員に対してはマネジャー自らが、断固たる決意を持ちつつ、手助けをしてやるとよい。

3. フィードバック

それぞれの仕事において何が為されるべきかを知ることは、同時にそれぞれのステップにおいてその目標に近づけているかどうかを知ることが出来なければ役には立たない。このように、仕事の進展を常に評価・確認し、目の前の仕事に集中し続けるためには、以下のような3つのフィードバックが有用である。

第一に、他人からのフィードバック、つまり、コミュニケーションである。

トップ・エグゼクティブの中には、定期的に、もしくは常に、関連する企業の同僚、部下等と、フォーマルもしくはインフォーマルにコミュニケーションを取る続ける工夫をしている人も多い。

また、マネジャーの仕事として、即座の、具体的なフィードバックを与えることは、従業員のパフォーマンスを高める上で非常に効果的である。ただし、そのためにはマネジャーは多くのエネルギーを部下の観察に割く必要がある。メンターによるフィードバックシステムはこれを補完することができる。メンターといっても、メンター役を任命された人ではなく、経験があり、気質や価値観が本人と似ているような同僚がその役割を果すことが多い。なお、マネジャーもしくはメンターによるフィードバックにおいては、フィードバックのための技術を学ぶことも必要である。

第二のフィードバックの源泉は、仕事そのものである。ただし、仕事自体の中にパフォーマンスを測る指標が組み込まれている場合もあるが、ほとんどの職業においては仕事の成果はそれほど明らかではない。

フィードバックのためのどのような技術が採用された場合でも、期待される成果について詳細に説明し、従業員がそれを理解し、自らどれだけ達成できたか評価できるように状況を整えることはマネジャーの責任である。同時に、マネジャーは自分自身の同様な目標も立てなければならない。

第三のフィードバックの源泉は、自分自身の基準である。真のリーダーは、外的な指標にはあまり頼らず、自分の心の中にある「良い仕事」に関する感覚に従うのである。

マネジャーがこういった感覚を従業員に植え付けることは簡単ではない。最良の戦略は、マネジャー自身の基準を明確に定め、あらゆる機会を利用してその基準を実践し、周囲の人がそれを認識し、そこから学ぶことが出来るようにすることである。

4. その他の条件

残るフロー経験を実現する条件の第一は、スキル(単に技術的ものを指すのではなく、価値観、感情、ユーモア、同情等、ヒューマン・スキルを含む)と目標の高さとのバランスである。マネジャーは、部下のスキルの成長に注意を払いながら、両者のバランス取れるように責任の配分を考えていく必要がある。いわゆる燃え尽きは、仕事が多すぎることよりも、少なすぎることから生じるのである。

最適な責任を負わせるためには、部下のスキル・レベルを知る必要があるが、その際、認識能力や強み、弱み等を測るために設計された多くの心理テストも役に立つ。最近のトレンドは、部下に弱みを克服することを求めるのではなく、強みを活かすようなアプローチである。

また、スキルとチャレンジのバランスのもたらす8つの心理状態に注目し、部下、若しくは自分自身の状況を分析することも有用である。

また、仕事をよりフローに近づけるためには、集中する機会を確保することも重要である。毎日、幾ばくかの時間を割いて自分を振り返ることをしないマネジャーは、燃え尽きてしまう可能性が高い。また、部下が集中を妨げられることを積極的に防ごうとしないマネジャーも、スタッフを欲求不満にする。

集中は、同僚だけでなくインターネットやe-mail等の新しい技術によっても妨げられる。もし他に手だてがなければ、企業は、他の仕事に悪影響を及ぼすことなくメールをさばく技術に関するワークショップを提供することを検討すべきだろう。

自分自身の仕事に対する「コントロール」を持つことも重要な要素である。ここで言うコントロールとは、完全に仕事を目標に沿って管理するということではなく、むしろ、予期せぬ状況が起こる中でも、柔軟に新しい戦略を立て、目標に向かって進んでいくために必要なスキルを持っていると感じられることである。

コントロールについて言えば、時間のコントロールも非常に重要な側面である。フローを経験している人は時間の感覚を失う。フローまで行かない場合でも、活動そのものと本人の内部の状態に基づいて、人は仕事に取り組むこととリラックスすることを有機的に繰り返す。抽象的な時間のシステムに従っているわけではないのである。この点については、現在時間のフレキシブルな配分について注目が集まり、事例も増えているようである。

最後の条件は、自我の忘却である。私たちの自意識は非常に強く、もし何らかのきっかけで自意識が喚起されると、私たちの集中力の多くがそちらに奪われ、仕事に完全に集中することが出来なくなる。ゆえに、フィードバックをするような場合でも、あくまでその人の人格ではなく、パフォーマンスに焦点を置くことを銘記する必要がある。

また、過度に自意識が過剰になっている従業員は、おそらく十分な心的資本を蓄積できていないのであり、フローを経験することも困難であるし、フローの状態にとどまることも困難である。そのような従業員は、カウンセリングを受けることも有用であるし、信頼を責任を与えられ、不安を乗り越えて仕事に集中するという経験によって成長することもある。

この点について、マネジャー自身の模範的行動も組織の雰囲気を決める。もし上司が全部手柄を取ってしまうような人であったり、仕事の質よりも個人的な成功を重視するような人であった場合、どこに優先順位が置かれているのかということは誰にも明らかになってしまうだろう。このような視点から、リーダーの後継者をどのようなタイプの人間にするかということも非常に重要である。



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