「花」

花に水をあげるように
毎日きみに笑顔を見せられたら
綺麗な花が咲くのかな

わかっていても
水が湧き上がってこない
いまはそんなとき

作り笑いは
余計に心配させるだけだから
まずはわたしの花が
ゆっくり芽をだすのを待とう
そのうち恵みの雨が降るかもしれない
-------------------------------------
夢路

「冬の蝉」

冬に蝉がいるはずない
そう思っていたのに

いました
わたしの心のなかに

夏にみんなと一緒に
鳴くことを恥ずかしがって
過ぎた季節を悔んでは

好きだった人のことを
思い出して鳴きます

周りの音にかき消されても
伝えればよかった
その気持ちを　ミンミンと
--------------------------
夢路

「美味しい珈琲がはいったよ」

もうすぐ旅立つ人に
なんて声をかけたらいいか
そんなことは
迷うことなんてない

今まで過ごしてきた
素晴らしい日々に
答えはもう出ているのだから

その人が
ちらちらと腕時計を気にする
時間になったとしても

今ね、美味しい珈琲がはいった
ところだよ
飲んでから行きなよ　と

言えるぐらいがちょうどいいんじゃないかな
----------------------------------------
夢路

「世界の果て」

君がもしも
過去の記憶のなかでしか
もう生きる場所がないのなら

君という世界の果てに
もう立っているのかもしれないね

どんな景色が見えるのか
僕にはわからないけれど

君がもしも
その場所から前進しようとすれば
世界の果てはずっと先の方へ
新しい道を作りながら　
遠ざかっていくよ
きっと
------------------------------------
夢路

「ピンボール」

昔流行った
ピンボールゲームの
ボールが今のわたし

何度も弾かれては
高得点を狙いに行って
また戻ってきては弾かれて
ゲームに飽きが来るように
わたしも飽きてきたけれど
周りの人だかりが辞めさせてはくれない

前に一度だけ言ったんだ
「辞めさせてください」と

でも、ゲームオーバーは
わたしが判断することではないらしい

今まで考えてもみなかった
ピンボールゲームのボールが
こんなにつらかったなんて
----------------------------------------
夢路