オール55 by トム・ウェイツ
私がこの名曲を初めて知ったのは、イーグルスのカバーによって・・だった。
イーグルスの3枚目のアルバム「オンザボーダー」に、この曲のイーグルスのカバーバージョンが入っていた。
聴いた時、なんていい曲だろうと思った。
最初はイーグルスのオリジナルかと思ったが、作詞作曲のクレジットを見たら、トム・ウェイツだった。
それを見て、良い曲を作る人だなあと思ってトムに興味を持ち、トムのアルバムも買って聴いてみた。
そうしたらさすがオリジナル、トムのバージョンも素晴らしかった。
イーグルスのバージョンの方は洗練されて聴きやすい感じだったが、トムのバージョンは渋くて味わい深かった。
この曲は数多くのシンガーによってカバーされてる名曲で、実際そのメロディラインは素晴らしい。
歌詞に関しては色んな解釈はできるかもしれないが、深いものがある。
メロディにこの歌詞が乗り、なおかつトムの歌声によって歌われることで、この曲全体に説得力が生まれてきて、なんとも魅力的に仕上がっている。
タイトルの「オール55」というのは省略した言い方で、フルに書くと「オールド1955」という意味だそうで、55年製の古い車のことを指すようだ。
主人公は55年製の古い車に乗り、古いせいかスピードが出ないでフリーウェイを走っており、道を走っていると色んな車に追い抜かれていくが、それでも自分はこの車に乗っていたい、このまま走っていきたい・・そんな内容。
周りに左右されず、自分は自分の道を自身の速度で行く・・・そんな風にも受け取れる。
車というのは、ひとつの例えだったり、象徴だったりするのかもしれない。
老成した内容の歌詞にも思えるのだが、トムがこの曲を発表したのは彼が23歳の頃だったという。
そういえば、私が昔バンド仲間とアメリカ本土に旅行した時、レンタカーでフリーウェイを走った。ロサンゼルスからラスベガスまで向かうために。
フリーウェイでは色んな車が走っていた。
決して渋滞はしておらず、ドライブは快適だった。
都会を過ぎると、あたりは広大な大地が広がっており、中には西部劇のような風景もふんだんにあった。
道はひたすらまっすぐ。
遠くのほうには山が見え、時には雨雲が大地の上にかかり、その雲は大地に雨を降らしていた。だが、雲がかかっていない大地は、太陽光線で乾いていた。
そんな風景も見えた。
かとおもえば、塩湖みたいなものが広がっていたり、ガラガラヘビが出てきそうな荒涼とした場所もあった。
フリーウェイの途中には、デスバレー方面への分岐もあったりした。
ラジオからはベルリンやヒューイ・ルイスなどの曲がかかっていた。
それらの曲に耳を傾けながらも、私の心のどこかにこの「オール55」も鳴っていたと思う。
私たちが乗ってたレンタカーは55年製ほどの古い車ではなかったかもしれないが、5人乗ってたし、メンバー人数分のスーツケースも積んであったせいか、あまり速度は出なくて、けっこう他の車には抜かれたと思う。
でもそんな時間が楽しかったし、気分もハイになっていた。
そんな時に、「オール55」の歌詞は個人的に合ってたのかもしれない。
トム自身のシングルカットではさほどヒットはしなかったらしい。
世に広く知られるようになったのは、やはりイーグルスがカバーしたのが大きかったようだ。
イーグルスがこの曲のカバーバージョンを収録したのは、前述の通りサードアルバムの「オンザボーダー」。
イーグルスのグレン・フライがある時スタッフからこの曲のデモを聴かされ、この曲をいたく気に入ったグレンはドン・ヘンリーに持ちかけ、晴れてイーグルスのアルバムにイーグルスのカバーバージョンが収録されることになったらしい。
そのアルバムには全米1位になったヒット曲「我が愛の至上」が収録されていたこともあり、アルバム自体多くの人に聴かれたはず。
なんてったって、あのイーグルスのアルバムなのだし。
で、そのアルバムを買った人は、当然トムの「オール55」も聴くことになった。
で、この曲の知名度はアップし、さらにそれは多数のシンガーによってカバーされることにも繋がったのであろう。
ただ、トム自身はイーグルスのカバーバージョンは、さほど気に入ってはいなかったらしい。
イーグルスのバージョンは洗練された出来になっていたからかもしれない。
とはいえ、私はイーグルスのバージョンは大好きだし、「オンザボーダー」の中でも特にお気に入りの曲のひとつだ。アルバムの出来への貢献度では重要な存在だったと思う。
一方で、オリジナルであるトムの渋いバージョンも味わい深い。
やはり名曲なんだよね。
トムによってこの歌が生で歌われるのを私が聴くとしたら、どこかあまり大きくない店で、トムを等身大で観れる距離で、酒でも飲みながら聴かせていただきたい。
そう、例えばライブハウスなどで。
トムの歌声を聴きながら1人で飲むのもいいし、女性と飲むのも素敵。友達と飲むのも楽しいだろうね。
ちなみに、私はトムのアルバムは数枚持っているが、初期のこういう声質のほうが聴きやすくて好きだ。
トム・ウェイツとイーグルスVer
まったく別の曲のように聴こえますね。
ジャズ的なエッセンスが漂ってて、お酒を飲みながら
そんな雰囲気が合いますね。
私はこの曲も好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=0P5jV4lHHR0
個人的な感じ方ですが、ブルース・スプリングスティーンが歌ってもおかしくない曲みたいに聴こえました。
この動画に寄せられたコメントを見ると、リスナーのそれぞれの人生のしんどい過去などが書かれていますね。この曲は、そういう人たちに寄り添う曲なのでしょう。
オール55は、イーグルスとトムのバージョンではちょっと雰囲気が違い、イーグルスのバージョンは洗練されて、より聴きやすい雰囲気になってる気がします。
私はどちらのバージョンも好きです。