これまで何度か書いてきていることだが、小学校時代の私は、授業中漫画ばかり描いている漫画少年だった。勉強面では私は不真面目な少年だったと思う。
そんな私であったが、クラスで一番勉強ができた秀才タイプのN君とは私はよく遊んでいた。
勉強をやらず漫画ばかり描いていた私と、N君のような秀才君が、よく仲良くしてくれてだもんだ・・・と、今では思う。
彼の家と私の家がすぐ近くだった・・・というのが大きかったのかもしれない。
幼稚園も一緒だったから、幼稚園時代から一緒に遊んでいたというのも大きかっただろう。
また、家が近いから、親同士もよく交流があった。
私はN君とはどんな遊びをしていたんだろう。
今となっては覚えていない部分が多いが、でも断片的には思い出せることもある。
例えばある時、東京に大雪が降り、かなり積もった日。
そんな時、N君と一緒にいた私は、「今日は何して遊ぼうか?」と私が切り出したら、N君はニヤッと笑って「落とし穴、作らないか?」と言ってきた。
考えてみれば、落とし穴など、私はそれまで作ったことはなかった。
なので、N君のその提案に私は乗り、落とし穴を掘る場所を探すことに。
だが、場所は東京。それも23区内。
道はどこも舗装されていた。
土の道ならともかく、舗装されてる道など、子供が掘れるわけがない。
ならばどこに作ろうか。
掘るなら舗装されていなくて、土の場所を掘るしかない。
探してみたら・・身近なところにあった。
その場所は・・N君の家の裏手の狭い庭であった。
だが、その庭に行くためには、N君の家の狭い横手をすり抜けて奥まで入っていかねばならない。
完全に、N君の家のプライベート空間であった。N君の家の敷地の最深部。
とりあえずそこまで行ってはみたが、はたしてそんな所に落とし穴を作って、誰が通るというのか?(笑)。
一般人が通るとは、とても思えない。
通るとしたら、N君の家族の人だけだろう。
となると・・そんな所に落とし穴など作ってしまったら、ピンポイント的にN君の家族が犠牲になるだけで、迷惑をかけることになる。
落とし穴というのは、誰が通るかわからないから面白いのだ。
ランダムに一般人が通り、誰がその落とし穴にひっかかるかわからないから面白いのだ。
明らかにN君の家族だけがひっかかることになるということが分かっている状態では、作ってもねえ・・。
「こんなところに作っても、誰もひっかからないよ」
そう思った私の顔は、たぶん「乗り気ではない」感じにN君には見えたのだろう。
結局、落とし穴作りは、実現しなかった。
落とし穴を作り、誰か一般人がひっかかるのを待つ・・・という発想は面白かったが、あらかじめ誰がひっかかるか分かっている状態では作っても面白くない。
だいいち、そんなことしたら、N君の親に嫌われてしまうのは確実。
場所が場所だけに、そんな場所に作るのはN君と私ぐらいしかいないから、犯人はすぐにバレてしまうのは必定。
それでは、何一ついいことはない。
結局、落とし穴作りは実現せず。
その代わり、N君の家の裏手に積もってた雪でミニサイズのかまくらを作る。だが、そのかまくらとて、あまりにも小さすぎて、誰ひとり入れないミクロかまくら(笑)。
庭にあった雪をかき集めて、せいぜい雪だるまの胴体部分だけのサイズのかまくら。
その「雪だるまの胴体部分だけのサイズの雪玉」の一部をくりぬいて空洞を作ろうとしたが、その空洞部分は小学生の私でも、せいぜい入れても、頭だけ。
しかも、雪はかき集めたものだから、ところどころ土が混じっていて、なにやら汚くもあった(笑)。
結局、落とし穴を作る目論見は簡単に崩れ、その結果出来たのは、雪だるまの胴体部分だけのマイクロかまくらで、誰ひとり入れない代物であった。
なにもかも中途半端に終わってしまった・・・。
それなら、中途半端にマイクロかまくらを作るぐらいなら、大人しく雪だるまを作ったほうが・・・マシだった・・・。
落とし穴は・・どこへ??・
土の道がふんだんに残っている田舎などで、落とし穴を掘ったことがある方は、いるだろうか?
私もN君も・・・子供時代に、そんな落とし穴を一度でいいから掘ってみたかった。
後年・・・高校の頃だったが、私は遊びで「落とし穴」という曲を作ったことがあった。
幼少時代に聴いたクレイジーキャッツの曲に影響を受けたような、コミカルな曲だった。
その曲を作ってる時、小学校時代にN君と落とし穴を作ろうとしたことを思いだしていたような気もする。
ちなみにそのN君は、小学校卒業した後は、私とは別の中学に進んだ。
勉強が良くできたN君だったから、きっと進学率の高い中学に進んだのだろうな・・。
中学生になってから、N君と私が顔を合わせたのは、偶然電車の中でばったり会った1回だけ。
その時はそれなりに話も弾んだ。久々だったから。
だがその後はもう、互いに行き来はなくなり、一緒に遊ぶこともなかった。
そして・・
更にその後、N君は他県にあった遠い町に引っ越してしまった。
それによって、彼の連絡先を知るすべは・・なくなった。
かつてN君と私で落とし穴を掘ろうとした場所にあった家には、その後見知らぬ人が住みついた。
時空の落とし穴でも存在しない限り、その場所に私とN君が一緒に行くことはないのであろう。
誰か、時空の落とし穴の掘り方を知ってる人、いませんか?
女の子ではなく。
一緒に遊んだ記憶が多いからでしょう。
N君が住んでた家は、とうの昔に取り壊され、新しい家が建ちました。
落とし穴を作ろうとした場所は、もう裏庭ではなくなってると思われます。
かわりに建物が建ってるようです。
Nさん家族が暮らしていらっしゃった家は、今では全く違う建物ですか?
落とし穴を作ろうとした場所さえ今では鋪装されて土さえ見えないですか?
時空の落とし穴…。
私も掘って、再会したい人、何人かいます。
Nさんは、今でも見果てぬ夢を描いて、走り続けているでしょうね。
どこかで…。