ところにより霊的解釈

映画の感想です。

ニキータ

2020-06-10 18:25:50 | 日記
レオンに並ぶ、リュック・ベッソンの名作。

警官を殺害した非行少女が、国の隠密
(暗殺者)に教育されて、暗躍する話。

内容は血なまぐさいのだけど、
ある意味でジブリの『魔女の宅急便』
のように、女性が一人立ちする様子が
描かれていたりもする。

恋愛要素もあるけれど。

ニキータは、最初から不安定な性質。
薬物中毒のせいではなくて。
癇癪持ち。

ニキータが、序盤のシーンで
薬を打たれる時に、お母さんを呼ぶのが
とても、悲しい。

すぐ泣いたり怒ったりで、
暗殺者に向かない気もするけど、
動物的な勘は優れていて、身体能力が
高かったり。

こういう職務の人って、表に出ないだけで
実際にいるのだろうけれど、
普通の感覚ではやってけないと思う。

普通の社会で生きられないような、
絶妙なアンバランスさを持ち合わせた人が、導かれて仕事に就いているように
思う。

ニキータの訓練風景が、楽しかったりする。
同じ境遇を越えて来た、おばあさんも
指南役で出てくる。


ニキータの上司(教官)のボブに対しての
ニキータの気持ちって、恋愛というより
親愛な気がする。
ニキータは、その辺りの区別を
つけていない。

ボブにとっては、恋愛。
でも、仕事上、ニキータを
どうこうすべきじゃないから
抑制している。

卒業する時に、ボブに心を籠めたキスをするニキータ。
狼狽するボブ…。

この組織、恋愛には寛容らしく
外に出た途端、ニキータは恋人を作る。

うーむ。
私が長官(司令官?)なら、AKBばりに恋愛禁止にしておくが。
風紀が乱れますからね。

つっても、人は恋愛する生き物なので
禁じても無駄、という最初から合理的
な考えなのかもな。

人権もクソもない組織のはずが、
恋愛は可。
あのハゲチャビンの長官は、実は
恋愛体質だったりして。

恋人のマルコに仕事を隠しながら、
つらい生きかたを強いられるニキータ。

彼女は、純真だから
マルコに嘘をつきながら生きていく未來が
見えなくなっていったように思う。

マルコが彼女の仕事に気付いてしまい、
マルコを守る為に
逃亡をする

のだけど、それだけではなく、
ちょうど、仕事の嫌な面
(人を殺すことの残虐さ)
に対峙することになったので、

ニキータはちょうど、
仕事を出来なくなる時、
限界だったのだと思う。


最後に、マルコとボブが
語り合うシーンで終わる。

二人の男性の心の中に、ニキータは
ずっと留まるけれど

孤独な生涯を
送ったのだろうと感じる。

ボブも孤独だし、
マルコも孤独。

フランスの映画の終わりかたは、
日本の映画に似て
フワッとしていて、好き。

叙情やりっぱなし、放置
みたいな感じが好き。







リップヴァンウィンクルの花嫁

2020-06-08 18:18:00 | 日記
ひとことで表すと、
『虚構の中の真実』
のお話。

主人公の七海の、最初の結婚のエピソードは観ていて退屈なのだけど、
それが中盤から生きてくる。

胡散くさい仕事の安室が
七海を随所で助けるのだけど、
この人は本来、純粋に生きたい想いが
強い気がする。

嘘で塗り固めた仕事で、成功している。
けれど、真ん中は虚無。

七海を花嫁にした真白は、
純粋そのもの。
この真白に、恋愛というよりは憧憬、尊敬
の念を抱いているのが安室。

彼が、真白を弔うシーンで泣き崩れる。
何とも言えない、感情の爆発の仕方。
彼の生きかた、そのものに対しての
哀愁にも見える。

でも、彼はこの生きかたしか出来ない。
真白とは対照的。
真白の近くにいたかったのだろうな、
と。
話をするだけで、
心が洗われていたりしたんだろうな。

真白のお母さん役の女優さんが、
あまりにも自然で
自然な、自然な悲しみを表す。
このシーンは、この女優さんがいないと
成立しなかったはず。

主人公の七海も、純心なのだけど
意志、意思がない。
それを獲得するまでの、話。

人が本当の意味で、自立と自活を
していくまでの話。

真白が、コンビニで買い物をしたら
店員さんが袋詰めしてくれることの、
有り難みを
七海に話すシーンがある。

これは、真白役のCoccoさんの
感じていることだな…
と思った。

Coccoさん、映画内で唯一、
『演技をしてない人』。
演技が出来ない人でもある。
それが、このかたの持ち味で、特性で、
神様に演技をしてはならない
と言われてる人だとも思う。




レオン

2020-06-07 12:18:00 | 日記
言わずと知れた、名作。
30回は観てる。

ファザコンの女の子と、
ロリータコンプレックス風味がある男性は
グッと来るものがある、
気がする。

すごく孤独で、純粋で優しい二人。

この二人の過ごした時間は、
完成されていて
永遠だと思う。

レオンが自己紹介の時間に、
弟を喪って泣いているマチルダに
子ぶたさんのミトンをつけて
不器用に

『ハロー。
マ、チ、ル、ダ』
と言うシーンで
いつも泣いてしまう。

レオンの優しさを、とても感じる。

ところで、
スタンスフィールド役の俳優さんって
演技が上手いのレベルじゃない。

クスリでイッちゃうシーンが
真に迫り過ぎてる。

俳優さんは、映画の中のその時
その時で
同じような境遇に置かれた誰か、
の魂を掴んで具現化する
ことが出来る。

一種のシャーマン的な。

終盤は
レオンが、かわいそうで
何だかもう、観たくないくらい。

マチルダを守る、切り抜ける
しか考えてない。

スタンスフィールドが悪い人だとか、
わりとどうでも良さそう。
マチルダに頼まれたから、
最期まで遂行したのだろうけれど

殺しておかないと、マチルダのこれからを
守れないから
というのもある。

彼女の生涯を守りたかったんだよね。
一緒に生きられないとしても。

レオンは、でも、
ずっとマチルダの傍にいると思うな。


マチルダの未來がどうなったか
って、よく楽しく議論されるけれど

案外、ふつうの人生を送ると思う。

殺し屋になったという意見もあるけど。

レオンは自分と同じ生活を、
マチルダに対しては望まない。
殺し屋なんて、不幸を吸い寄せるだけだ
って、わかってるのだから。

マチルダは何とか、周囲の人に馴染む
ように見せかけて、
やっぱり心底は孤独だけど
静かに暮らしたんじゃないかな。

ふつうの人と結婚して、
子供を産んで
大事に育てて。

そしてマチルダの心にも、
常にレオンは
住んでいると思う。











【エスター】

2020-06-06 01:05:00 | 日記
ホラーというか、サイコです。
この映画を観るのは、2回目。

ざっくり内容を。

孤児院から養子に迎えた女の子が

どこか変。


言動がいちいちおかしかったり、

不気味なのです。


が、第一印象は〝良い子〟。


以下、

観ながら感じていたこと。


この子、エスターは実は

物凄く純粋なんじゃないかな、….

と。


他害は許せないけれど、

苦しんでいる鳩を殺した時も

『楽にしてあげたい』

という、彼女なりの優しさだったり。


理解が出来ないわけじゃない、

賛成もしないけれど。


男性を好きになり、

手段を選ばない。

それくらい愛を求めている。


強い本能。


満たされず、

焦がれていて。

それが暴力性に繋がる。


お父さんを殺めてしまうのも、

『愛してくれないなら、死んで』

というくらいの、愛の裏返し。


だから、殺めかたが烈しい。

愛の怒りだと思う。


先天性の障害を持つことと、

凶暴性は無関係に見えるけれど、

実際は連動している。


頭の良い人だから、二次障害として

サイコパスなのだろう

と。


自身に都合の悪いことを掘り下げて来る者は、敵。


敵と捉えたら、命を絶つ。


過激なので、この人に愛を注げるのは

神様だけ。かも知れない。


彼女は聖書を持つ。

良い子を演じるポーズに見えるけれど、

心から祈りを捧げている。


最期にお母さんの愛を求めるけれど、

ナイフを隠しながらも

本心から告げたのだと思う。


これは哀しい物語なのじゃ

ないかしら。


夫妻は身勝手かも。

養子を育てるというのは、簡単ではない。

すでに二人の子がいる中で、

エゴでエスターを連れて来る。


…ようにも、見える。


お酒の依存を乗り越えて、

失った子への気持ちが癒えない、

まだ不安定な中で

孤児院に行って、


お金があるから

育てられる

みたいな傲慢さ、も感じる。

傲慢は0じゃなかったはず。


すでにいる二人の子に愛を注ぎ、

失った子への弔いだけで良いような。


貰って来る子をモノみたいに

感じてる部分があったのでは。


エスターは最初から

そう感じていたし、

隙だと見ていたと思う。


サイコパスの人は、

他者の心理をよく読む。


エスターは人の気配を読んで

動いている。

感覚が鋭いから。


彼女が

クリニックで

自身の運命への無念さ

みたいなものを感じて、叫んでいるシーンが

悲しかった。