その後、イエスはガリラヤを巡り続けられた。ユダヤ人たちがイエスを殺そうとしていたので、ユダヤを巡ろうとはされなかったからである。(1)
イエスは、十字架で死ぬことに拠って御父のご計画を全うするために地に下って来られた神の子であり、死を恐れてのことではなく時が満ちていなかった。
父なる神のみこころを成し遂げるための時が必要なのである。神の愛をご自身によって知らせ、福音を伝え続ける弟子を育てなければならない。イエスの時は神の緻密なご計画に在るのである。
時に、仮庵の祭りというユダヤ人の祭りが近づいていた。
そこで、イエスの兄弟たちがイエスに言った。「ここを去ってユダヤに行きなさい。そうすれば、弟子たちもあなたがしている働きを見ることができます。
自分で公の場に出ることを願いながら、隠れて事を行う人はいません。このようなことを行うのなら、自分を世に示しなさい。」(2~4)
イエスの弟たちの言葉はイエスを揶揄っているような言い方をしている。此処からイエスを兄として敬意を払っていなかったと分かる。まったく罪を犯さない兄を尊敬してはいなかったのだ。それはイエスが罪を持った彼らのようでは無かったからである。
たとえ近くに居ても罪を認めて義に渇き、救いを求めて十字架のイエスの血潮に洗われなければ神を知ることはなく、家族だからといって救いの近さ遠さが物理的な距離の問題ではないことがわかる。
今イエス・キリストを礼拝する者は肉の兄弟であるイスラエルよりも、霊による兄弟とされた異邦人の方が多いのである。
兄弟たちもイエスを信じていなかったのである。(5)
神の救いの計画はイエスをユダヤの片田舎、平凡な大工の家に遣わされたことから始まった。これが神の方法である。人類の救世主は隠れた所に置かれ、普通の父と母の元で罪びとの兄となることを選ばれた。
初めに救われた者は家族の意見に一喜一憂させられることがある。ある時は応援団であり、ある時はサタンが働いているかのように働きを塞がれる。救いには時があり、まだ彼らには何もわかっていないからである。
家族の救いはご真実な神のわざであって、人の方法や手段によるものではない。イエスの兄弟も後に良い働きをしており、救いには時が必要なのだった。このことを知るとき家族の救いがキリスト者の手枷足枷とはならず、主に信頼して平安を得るのである。
そこで、イエスは彼らに言われた。「わたしの時はまだ来ていません。しかし、あなたがたの時はいつでも用意ができています。(6)
イエスは寸分の狂いもなく神のご計画を歩まれ、全人類の救いの道が歴史に現れて行く。人の救いはキリストの十字架のご計画に拠って、すでに成就しておりイエスを主と礼拝する時に彼らは救いを得たのである。
世はあなたがたを憎むことができないが、わたしのことは憎んでいます。わたしが世について、その行いが悪いことを証ししているからです。(7)
救いは悔い改めを通って与るものである。イエスが兄弟の罪を指摘することで彼らは兄に反発したのであろう。
宗教者は自分を正しいとして民の上に君臨しており、イエスが彼らの行いの矛盾を指摘した時イエスを殺すことを決めたのである。イエスのことばが正しく反論できなかったからである。
彼らは、イエスのみことばにひれ伏し幼子のようになって礼拝する必要があり、先祖代々積み上げて来た権勢やプライドを捨てて、イエス・キリストを受け入れ従順することでいのちを得る。それは、この世の限りある繁栄を選ぶのか、主が準備してくださった永遠を選ぶのかということである。
あなたがたは祭りに上って行きなさい。わたしはこの祭りに上って行きません。わたしの時はまだ満ちていないのです。」
こう言って、イエスはガリラヤにとどまられた。(8~9)
イエスが神のわざを行われるときに御許に居る者は、霊によって結ばれている兄弟である。イエスは彼らと共に働かれる。
「わたしの母、わたしの兄弟たちとは、神のことばを聞いて行う人たちのことです。」(ルカ8:21)
しかし、兄弟たちが祭りに上って行った後で、イエスご自身も、表立ってではなく、いわば内密に上って行かれた。(10)
神の計画は刻々と時を刻んでイエスは十字架に進んで行かれる。
キリスト者も主に従順するとき、すべてのことに置いて聖霊の導きは明確であって、導きの中でみこころを成すのである。
この世の命には限りがあり、昨日に続く今日があり明日があるわけではない。命は信じる者にも信じない者にも神のものであって、すべての人にとって今生きているのは憐みによる猶予である。
命のある間にイエス・キリストを礼拝して永遠を頂かなければ、罪を解決することなく終わりを迎えて、永遠のさばきを受けることになる。愛の神によるキリストの贖いを受け入れなかったからである。
「神は正しい人も悪しき者もさばく。そこでは、すべての営みとすべてのわざに、時があるからだ。」(伝道3:17)