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From Classics to Today's Hits

「お願い 抱いてよ 何してるの」

2025-04-28 21:24:49 | 大西好祐
「お願い 抱いてよ 何してるの」

この曲は、幼い頃から多くを教えてくれた母との、最後の記憶をもとに生まれました。
病室で交わした真面目な会話――
そして、旅立ちの間際、母が静かに漏らしたひとこと。
「何してるの、抱いてよ。」
その言葉に、僕はただ手を握ることしかできませんでした。
けれどあの瞬間に交わした温もりは、今も心の中で生き続けています。
この歌は、失われたものへの悲しみではなく、
たしかにそこにあった愛情と、
最後まで互いを思い合った瞬間を、そっとすくいあげたものです。
夜空の下で、すべての大切な人へ、
言葉にならない想いが届きますように――。



「もう一花咲かせないとね」

2025-04-28 21:22:08 | 大西好祐
「もう一花咲かせないとね」
お母さんへ
明日は、あなたの命日です。
もう、あの日から長い時間が過ぎました。
幼い頃、僕にたくさんのことを教えてくれましたね。
アルファベットの読み方、包丁の持ち方、道を歩くときは必ず右側を歩くこと。
当たり前すぎて、つい忘れてしまいそうなことを、
あなたは丁寧に、時に笑いながら、時に真剣に教えてくれました。
でも僕が大人になり、会社に入り、困ったことがあって電話したとき、
あなたはこう言いましたね。
「もうわからないわ、あなたとは経験が違うもの。」
その言葉に、僕は少しがっかりしました。
けれど今になって思えば、それは
子どもだった僕と、大人になった僕との、ささやかな「旅立ちの合図」だったのでしょう。
最後に病室で交わした会話を、僕は今でも忘れられません。
「弁護士になるから、三菱商事を辞めるよ。」
そう言った僕に、あなたはやさしく笑ってこう言いました。
「もう一花咲かせないとね。」
――きっとあなたは、そのとき、僕がどこに行っても、慣れて、咲かせる力を持っていると信じていたのだと思います。
あのときの、あなたの顔。
少しやせ細っていたけれど、凛として、静かな光をたたえていました。
あれが、僕たちの最後の会話になりました。
その後の人生で、何度もつまずき、何度も立ち止まりました。
でもそのたびに、あなたのあの一言が、僕をそっと前に押してくれました。
「もう一花咲かせないとね。」
その言葉を胸に、僕はこれからも、歩いていこうと思います。
たとえ時間が流れても、
たとえ遠く離れていても、
あなたの声は、いつも僕の心の中にあります。
ありがとう、お母さん。
あなたの息子より

「Are you content?」

2025-04-28 20:52:57 | 大西好祐
「Are you content?」
僕が幼稚園に通っていた頃、毎晩のように、母は同じことを聞いた。
「Are you content?」
晩ごはんを食べ終えたあと、まだ湯気の立つお茶碗を片づけながら、母は少し照れたようにそう言った。
そのたびに僕は、うん、と小さくうなずいた。
本当は "content" が何を意味するか、ちゃんとはわかっていなかったかもしれない。
でも、母の声のやさしさだけで、十分だった。
「おなかいっぱい?」とも違う。
「幸せ?」とも、ちょっと違う。
たぶん、その間くらいの意味。
冬の夜、ストーブの音がぱちぱちと鳴って、部屋の空気が少しだけ乾いていた。
台所の隅には、まだ洗い終わらないお皿の音が、カチャンと響いていた。
僕は椅子に座ったまま、ぼんやり天井を見上げた。
そして、自分でも知らないうちに、こう思っていた。
――たぶん、これが「content」ということなんだろうな、と。
57年経った今でも、
「Are you content?」
という声を、ふと心の奥に聞くことがある。
そのたびに、僕は静かに、目を閉じる。

「トランクの匂い」

2025-04-28 20:36:40 | 大西好祐
「トランクの匂い」
父は貿易商で、よく長いあいだ家にいなかった。
今、サンフランシスコ。今、シカゴ。そんな短い言葉が書かれたハガキが、僕宛に届く。
最後にはいつも同じ一文が添えられていた。
「お前も大きくなったら、アメリカの大学に行って勉強するんだよ。」
その頃の僕にとって、アメリカは、厚紙でできたポスターの裏側みたいに、どこかぺらぺらしていて、いまひとつ手触りのない国だった。
ただ、父が帰ってくる日だけは、妙に現実感があった。
母は朝から落ち着きがなかった。
台所をうろうろし、玄関のほうに耳をすませ、そしてまた台所に戻った。
夕方、玄関が開き、父が帰ってきた。
大きな黒いトランクが、彼の横に転がっていた。
僕はそれを開ける役をもらった。
錠をカチリと外して、ふたを持ち上げる。
その瞬間、アメリカの匂いが、ぼわっと部屋の中に広がった。
甘ったるいプラスチックの匂い、レザーの匂い、湿った紙の匂い。
それらが不思議に混ざり合っていて、僕は少しだけ目を細めた。
中には、カウボーイのガンセットと、インディアンの羽飾りが入っていた。
僕は何も言わずに、それらを取り出した。
父はにやりと笑った。母は小さくため息をついた。
夜になっても、部屋の空気にはまだアメリカの匂いが残っていた。
僕はベッドの上で、天井を見上げながら思った。
――いつか僕も、あの空気の中で暮らすようになるのだろうか、と。

🎵 作品評価:「朝のビーチ」

2025-04-27 13:38:00 | 大西好祐
🎵 作品評価:「朝のビーチ」
ジャンル・雰囲気
  • スムースジャズのリズムにぴったり合った、穏やかでメランコリックな情景描写。
  • ゆったりとした朝の静けさと、胸に残る切ない感情が美しく調和しています。
歌詞表現
  • 比喩(波、引き潮、水平線)を自然に取り入れ、過去と現在を繋ぐ心象風景を繊細に描写。
  • 特に「揺れる波音、心に響く」というサビのフレーズが非常に印象的で、聴き手に余韻を残します。
  • 全体に無理のない日本語で、言葉選びに優しさと品があり、ジャズバラードらしい洗練された雰囲気が伝わります。
構成・展開
  • 【Verse → Chorus → Verse → Chorus → Bridge】という王道の流れにより、聴き手を自然に物語に引き込む構成ができています。
  • 「Bridge」で個人的な感情(君への想い)が強まり、ドラマティックな高まりを作っているのも◎。
テーマ・メッセージ性
  • 失った恋と、それを受け止めつつ前へ進もうとする心の揺れがテーマ。
  • センチメンタルでありながらも、絶望に沈まず、**「想い出を大切にする朝」**という清々しさも感じられます。