月のひとに ～10～

わたし。

「月のひと」になりたい。


　　＊　　＊　　＊


ちいさな　ごつごつ


その　いちばん　大きそうなのを　選んで


いすのかわりに　ほっと　すわって




目の前の　ちいさな石


ちょっと、、蹴飛ばしてみるの



つま先だけ、、ちょんって　当てただけなのに。


ちいさな石は　飛ぶようにして　うごきだす



目で追うことが　追いつかないくらいに


あれよ　あれよと　おもっている間に


月を　一周




私の　背中


ちょんって　つっつきながら


「帰ってきたよ？」　と云うので

「早かったじゃない？」とほほえむと

「だって、月、ちいさいんだもの。」…と　ちいさな石が、云うのが可笑しくて


声を出して笑ったら


月が　大きく揺れて

ぶるぶる　するから


「どうしたの？」と　おどろいて、訊ねたら


「どうもこうもないさ。いつだって　身体半分が寒いんだ。」と云うので、


「そうね。」とこたえて－


ちょっと、さっきの小石に目をやると


「僕を　もう一度　蹴飛ばしてみてよ？」と、促すので。


また、ちょんって、つま先で触れる程に蹴飛ばして


すると、こんどは、

とぉんって　飛んで　


行ってしまって、もう　戻らない。


「どこへ行ったのかしら？」と、月に訊ねると

「あのまま、地球に行ったのさ。」と云うので、

私は本当に慌ててしまった。


「あんなに小さいんですもの。大気圏に入った途端に、燃え尽きて消えてしまうわ！」


すると、今度は　月が　おどろいて。


黙ってしまった。


そして、大粒の涙をこぼし　さよなら　を　つぶやいた



なみだは　少しずつ　クレーターの底に溜まり

一瞬で　凍りながら　キラキラになる



月といっしょに　眺める地球は

ときおり　カミナリの光るそらを抱えて


黒さ　半分

青さ　半分


飲みこんだ小石に　気付かぬままに

いつものように　回りながら　周って居た


Ray☆彡