私、まいどおなじみくまのサンタというものでございます。
今日は何日かみなさん御存知でしょうか?そう、11月21日。
それがなんなんだといわれますと、これが、何もないのでございます。
いつもと何も変わらない、洗濯機をまわして、洗濯物を干して、ご飯を食べて、ちょろっとテレビを見て。
こんなことを書き連ねると、専業主婦と思われるでしょうが、たまたま仕事が休みだったというだけの社会人でございます。
せっかく休みに入っても、普段となんら変わらない。みんなボケるわけですね。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「いや~、今日も大繁盛。お~い、みんな聞いとるか?これからクリスマスシーズン。お客もこれから増えるで健康管理と、この
寒さで怪我もしやすなるさかい、気いつけえよ」
「はい。ところで店長、そのでっかい段ボール、なんですか?」
「これか?これはやな」
店長の背後には小学生の身長はあろうかという大きな段ボールが置いてありました。店の商品ではないし、誰かの荷物でもないだ
ろう、と、みんなひそかに気になっていたのです。店長が段ボールをあける瞬間、そこにいた全員の視線が集中しておりました。
「これやこれ。クリスマスといえば、サンタクロースやろ」
「それ、どないするんですか?」
「どないするって、せっかく用意したんや。店に飾るにきまっとるやんけ」
「出入り口に座らせるとか?」
「それはちょっとじゃまになるやろ。この時期、電気カーペットとか、でっかい荷物さげて帰る客も大勢おるし」
「それじゃあ、試食販売の隣に座らせますか?」
「それもちょっとなあ。試食商品の段ボールを置いてることもあるし、そうやなあ・・・」
(アルバイトの学生がサンタクロースをつつきながら)
「こいつにレジさせたらお客さんも喜ぶし、ぼくらも仕事減るのになあ」
「ははは。そらええなあ。でもそんな機能、このマネキンにはないわ」
「で、どうします?」
「そうやなあ、まあ、他店とかでもやってるみたいに、天井からぶらさがっとってもらおか」
「うちの天井、だいじょうぶですか?」
「いや、見かけよりこのマネキン、軽いんや。持ってみ?」
みんなそれぞれに持ち上げてうなずいておりました。
「飾るんは明後日でええやろ。明後日やったら店1時間ほど早いこと閉めるし、お客さんがみんな帰った後にでも、残ったもんで飾ったらええがな」
こういうことがあってそれまでの2日間、サンタクロースは事務所におかれることになりました。しかし、仕事がばたばたして
いると、みんなそういうことは忘れるものです。
~ ~ 次の朝~ ~ ~ ~
(早朝出勤の一人が事務所のカギを開けて)
「おはようございまーす。・・・・って、誰もいないか」
(パチン 電気をつけて・・・・)
「うわっあ、あなた、どこから」
社員さん、びっくり仰天。きのう聞いたことも忘れて辺りをきょろきょろ。ほうきを手に身がまえます。
「なんとか言ったらどうなのよ。ねえ、なんとか言いなさいよ」
暑くもないのに汗を流しながら必死に問いかけます。彼女がすったもんだしているうちに、他の社員もやってきました。
「おはようございまーす。・・・愛田さん、何してるの?」
「ああ、木ノ元さん、いいところに。あそこに不審者が」
「不審者って。愛田さん、きのうの夜いなかったっけ?あれ、マネキンよ?」
(愛田さん、そおっとマネキンの前にまわりこんでしかじかとながめたあと)
「いやだ、私ったら。マネキン、そう、マネキンだったわね。よかった、もうちょっとで警察呼ぶところだった」
「しっかりしてよ?」
しかし、勘違いをしたのは愛田さんだけではありませんでした。二人が更衣室へ入っている間に出勤してきた倉金さんも叫び声をあげました。
~ ~ ~ ~ ~
「店長、あのサンタクロース、はやいとこ飾っちゃいませんか?今朝も私、何人とめたか分かりませんし、そのうち誰かが警察呼
びかねませんよ」
「でもなあ、朝はみんな仕事があるし、まさかお客さんのおる前で飾るわけにはいかんやろ」
「なんなら明日の朝、私が手が空いたときにでも飾っときますよ」
「そうか、なら頼むわ」
そんなわけで、サンタクロースは予定よりも早く飾られることになりました。しかし、それがさらなる騒ぎの発端となったのです。
この事実はその日の朝礼で皆に伝えられたのですが、その日、その朝礼に出られていない者も当然おりました。
~ ~ ~ ~ ~
(当日の夕方、アルバイトの篠元がやってきました)
「おはようございまーす」
そのとき、他の社員は全員外へ出払っておりました。この篠元、ひそかにいたずらを考えておりました。
― 今、誰もいないのか。あのサンタクロースの前に今日俺が持ってきた女の子サンタを置けば、ははっ楽しみだ。
しかし、休憩室をのぞいてみるとあるはずのサンタクロースが、ない!おかしい、どこにも、ない!
―計画は中止、か。でも、飾るの今日の夜って言ってたよな。てことは何?盗られたってこと?もしかして、へたすりゃ俺が犯人?
なんとも思い込みの激しいの学生でございます。このまま逃げることも考えました。でも―
―このまま逃げたらますます俺が犯人だよな。仕事まではあと30分あるんだからなんとかなるかも
と考えたのはなんと変装。篠元は財布をつかんで店にすっ飛んで行くとサンタクロースの衣装を買って、事務所へかけもどりました。サンタクロースの衣装に着替えて正座して待ちます。
そこへ店長が入ってきました。
「よっと。・・・、え、お前、篠元?そんな格好してなにやってるんだ?」
「これにはちょっと事情が。店長が用意していたサンタクロースのマネキンが誰かに盗まれてしまったようで、それで僕が代役を務めようと思いまして」
「盗まれたって、あのマネキンのことか?今見てきたけど、別に盗られた様子はなかったぞ?」
「僕がここに入ってきたときにはなくなってました。信じてください」
店長は首をかしげて、じゃあ、いっしょに見に行こうか?と手招きをしました。なんのことだか分かっていない篠元は目に涙を
ためながら、店長は何の事だかわからずますます首をかしげながら。
「篠元、あれ、みてみ?」
店長に言われるままに上を見上げた篠元はぽかん。
「え?あれ?なんで。今日の夜飾るはずじゃ?」
その様子を見た店長もようやく状況を察しました。
「そうか。お前は知らなかったのか。あれ、みんな朝びっくりするから、きのうのうちに飾ったんだよ」
今日は何日かみなさん御存知でしょうか?そう、11月21日。
それがなんなんだといわれますと、これが、何もないのでございます。
いつもと何も変わらない、洗濯機をまわして、洗濯物を干して、ご飯を食べて、ちょろっとテレビを見て。
こんなことを書き連ねると、専業主婦と思われるでしょうが、たまたま仕事が休みだったというだけの社会人でございます。
せっかく休みに入っても、普段となんら変わらない。みんなボケるわけですね。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「いや~、今日も大繁盛。お~い、みんな聞いとるか?これからクリスマスシーズン。お客もこれから増えるで健康管理と、この
寒さで怪我もしやすなるさかい、気いつけえよ」
「はい。ところで店長、そのでっかい段ボール、なんですか?」
「これか?これはやな」
店長の背後には小学生の身長はあろうかという大きな段ボールが置いてありました。店の商品ではないし、誰かの荷物でもないだ
ろう、と、みんなひそかに気になっていたのです。店長が段ボールをあける瞬間、そこにいた全員の視線が集中しておりました。
「これやこれ。クリスマスといえば、サンタクロースやろ」
「それ、どないするんですか?」
「どないするって、せっかく用意したんや。店に飾るにきまっとるやんけ」
「出入り口に座らせるとか?」
「それはちょっとじゃまになるやろ。この時期、電気カーペットとか、でっかい荷物さげて帰る客も大勢おるし」
「それじゃあ、試食販売の隣に座らせますか?」
「それもちょっとなあ。試食商品の段ボールを置いてることもあるし、そうやなあ・・・」
(アルバイトの学生がサンタクロースをつつきながら)
「こいつにレジさせたらお客さんも喜ぶし、ぼくらも仕事減るのになあ」
「ははは。そらええなあ。でもそんな機能、このマネキンにはないわ」
「で、どうします?」
「そうやなあ、まあ、他店とかでもやってるみたいに、天井からぶらさがっとってもらおか」
「うちの天井、だいじょうぶですか?」
「いや、見かけよりこのマネキン、軽いんや。持ってみ?」
みんなそれぞれに持ち上げてうなずいておりました。
「飾るんは明後日でええやろ。明後日やったら店1時間ほど早いこと閉めるし、お客さんがみんな帰った後にでも、残ったもんで飾ったらええがな」
こういうことがあってそれまでの2日間、サンタクロースは事務所におかれることになりました。しかし、仕事がばたばたして
いると、みんなそういうことは忘れるものです。
~ ~ 次の朝~ ~ ~ ~
(早朝出勤の一人が事務所のカギを開けて)
「おはようございまーす。・・・・って、誰もいないか」
(パチン 電気をつけて・・・・)
「うわっあ、あなた、どこから」
社員さん、びっくり仰天。きのう聞いたことも忘れて辺りをきょろきょろ。ほうきを手に身がまえます。
「なんとか言ったらどうなのよ。ねえ、なんとか言いなさいよ」
暑くもないのに汗を流しながら必死に問いかけます。彼女がすったもんだしているうちに、他の社員もやってきました。
「おはようございまーす。・・・愛田さん、何してるの?」
「ああ、木ノ元さん、いいところに。あそこに不審者が」
「不審者って。愛田さん、きのうの夜いなかったっけ?あれ、マネキンよ?」
(愛田さん、そおっとマネキンの前にまわりこんでしかじかとながめたあと)
「いやだ、私ったら。マネキン、そう、マネキンだったわね。よかった、もうちょっとで警察呼ぶところだった」
「しっかりしてよ?」
しかし、勘違いをしたのは愛田さんだけではありませんでした。二人が更衣室へ入っている間に出勤してきた倉金さんも叫び声をあげました。
~ ~ ~ ~ ~
「店長、あのサンタクロース、はやいとこ飾っちゃいませんか?今朝も私、何人とめたか分かりませんし、そのうち誰かが警察呼
びかねませんよ」
「でもなあ、朝はみんな仕事があるし、まさかお客さんのおる前で飾るわけにはいかんやろ」
「なんなら明日の朝、私が手が空いたときにでも飾っときますよ」
「そうか、なら頼むわ」
そんなわけで、サンタクロースは予定よりも早く飾られることになりました。しかし、それがさらなる騒ぎの発端となったのです。
この事実はその日の朝礼で皆に伝えられたのですが、その日、その朝礼に出られていない者も当然おりました。
~ ~ ~ ~ ~
(当日の夕方、アルバイトの篠元がやってきました)
「おはようございまーす」
そのとき、他の社員は全員外へ出払っておりました。この篠元、ひそかにいたずらを考えておりました。
― 今、誰もいないのか。あのサンタクロースの前に今日俺が持ってきた女の子サンタを置けば、ははっ楽しみだ。
しかし、休憩室をのぞいてみるとあるはずのサンタクロースが、ない!おかしい、どこにも、ない!
―計画は中止、か。でも、飾るの今日の夜って言ってたよな。てことは何?盗られたってこと?もしかして、へたすりゃ俺が犯人?
なんとも思い込みの激しいの学生でございます。このまま逃げることも考えました。でも―
―このまま逃げたらますます俺が犯人だよな。仕事まではあと30分あるんだからなんとかなるかも
と考えたのはなんと変装。篠元は財布をつかんで店にすっ飛んで行くとサンタクロースの衣装を買って、事務所へかけもどりました。サンタクロースの衣装に着替えて正座して待ちます。
そこへ店長が入ってきました。
「よっと。・・・、え、お前、篠元?そんな格好してなにやってるんだ?」
「これにはちょっと事情が。店長が用意していたサンタクロースのマネキンが誰かに盗まれてしまったようで、それで僕が代役を務めようと思いまして」
「盗まれたって、あのマネキンのことか?今見てきたけど、別に盗られた様子はなかったぞ?」
「僕がここに入ってきたときにはなくなってました。信じてください」
店長は首をかしげて、じゃあ、いっしょに見に行こうか?と手招きをしました。なんのことだか分かっていない篠元は目に涙を
ためながら、店長は何の事だかわからずますます首をかしげながら。
「篠元、あれ、みてみ?」
店長に言われるままに上を見上げた篠元はぽかん。
「え?あれ?なんで。今日の夜飾るはずじゃ?」
その様子を見た店長もようやく状況を察しました。
「そうか。お前は知らなかったのか。あれ、みんな朝びっくりするから、きのうのうちに飾ったんだよ」