中華人民共和国とサウジアラビア王国が戦略的包括協定に署名した。原油などエネルギー分野での協力拡大も推進していく(「中国とサウジが包括協定 習近平氏、サルマン国王と会談」 2022/12/9 日本経済新聞WEB版)。習主席は、石油取引の人民幣決済も希望している(『習近平氏「石油取引で人民元決済を」 アラブ首脳会議』 2022/12/10 日本経済新聞WEB版)。習主席がリヤドに到着した時には、サウジアラビアの護衛の戦闘機が中国旗を象徴する赤と黄色のカラースモークで大歓迎した(「習近平主席、リヤドに到着 サウジ訪問を開始」 2022/12/8 新華社通信)。会談で醜態をさらしたバイデン大統領より、習主席の方がよほど協力する価値があると感じでいるのだろう。一方、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子がG20会合後に日本も訪問する予定であったが、大韓民国訪問の後、訪日をキャンセルしてカタールを訪問し、サッカーW杯の開会式に出席した。緊急の情勢変化があったのかもしれないが、日中間に対応の違いを感じる。
カタールW杯開会式といえば、地中海の天然ガス開発やリビアをめぐって対立していたトルコのエルドアン大統領とエジプトのシシ大統領が握手した。「エジプトは東地中海の天然ガス開発で、トルコを排除する形で沿岸国のイスラエルやギリシャなどと協力する枠組みを主導している」(「トルコ・エジプト大統領握手 カタール、W杯で外交得点」 2022/11/23 日本経済新聞WEB版)が、トルコはエーゲ海の島嶼部の領有権等をめぐってギリシャと対立している。この握手に何か意味はあるのだろうか?ウクライナ支援のためにNATO加盟の欧米諸国では兵器や弾薬の在庫が不足していると報じられている。弾薬の備蓄が払底すれば、欧州で新たな戦端が開かれた場合に抵抗することはできない。また、トルコはシリアやイラクのクルド人武装組織の拠点を攻撃していた。攻撃がエスカレートすれば、中東全体を動揺させることにならないだろうか?
ロシアの副首相が上限価格を設定する国には原油を輸出しないと述べた(『ロシア副首相「原油輸出しない」 上限価格設定国に』 2022/12/4 日本経済新聞WEB版)。日本政府はサハリン2産出の原油は上限価格の対象外にするが(「ロシア産原油価格上限、サハリン2除外 経産相表明」 2022/11/25 日本経済新聞WEB版)、ロシアのエネルギー担当のノワク副首相は「検討しなければならない」と明言しなかった(「ロシア副首相、サハリンから日本への石油輸出明言せず」 2022/12/6 日本経済新聞WEB版)。日本政府は中朝ロのミサイル技術向上を理由に反撃能力を持とうとするなど(「反撃能力、60年経て政策転換 中国・北朝鮮・ロシアのミサイル技術向上」 2022/12/2 日本経済新聞WEB版)、ロシアに対抗意識を燃やしている。敵対的な日本に対して、ロシアは原油を輸出することはないと覚悟した方がいいだろう。サウジアラビアの件といい、日本は原油調達が難しくなっていくのではないだろうか?
日本は、第二次世界大戦の敵国だった国が大戦で確定した事項に反したり、侵略政策を再現する行動を起したりすれば国連安保理の許可がなくても軍事制裁できる、いわゆる敵国条項の対象国である。反撃能力獲得は、敵国条項を理由に軍事制裁を正当化される恐れは捨てきれない。同条項は死文化しているなどの意見はある。しかし、ウクライナ事変に係る対ロシア制裁を見ても「先進国」側の決議案に賛同しない国が多数出てくるようになっているように、日本の言い分なぞ通る保証はないのだ。無能な「先進国」の制裁につき合うより、エスカレーションを止めるが賢明だろう。