英国でストライキが頻発している。鉄道労働者に続いて、看護師や入国審査官などにもストが波及している。食品価格や光熱費が高騰し、生活苦が広がっているためだ。『英メディアによると、公務員を代表する組合側は10%の賃上げを求めているが、政府と折り合いがつかない。組合の代表者であるマーク・セルウォトカ氏は「困窮して食事を抜くこともあり、暖房もつけられない。政府が直ちに資金を出さなければ状況はエスカレートする」と主張した』(「英国で33年ぶり大規模スト、スナク政権の火種に」 2022/12/13 日本経済新聞WEB版)。英国では生活苦のため窃盗が増加している。“Shoplifting rose 18% in UK stores in the year through June”(「万引きは6月までの1年間で英国の店舗で18%増加した」(Theft Is On the Rise in UK Stores as Cost-of-Living Crisis Grows) 2022/11/19 Bloomberg)という。英国政府は、自国の治安も守れないのにウクライナでの戦闘に入れ込んでいる。英国政府は優先順位を間違えているのではないか?
今冬のフランスも電力不足で停電が懸念されている。エレベーターの使用禁止だけでなく、「一部の緊急通報用の電話番号が使えない可能性があると警告」(『[FT]「エレベーターは使用禁止」フランス襲う停電の不安』 2022/12/13 日本経済新聞WEB版)されている。『国際エネルギー機関(IEA)は12日、天然ガスの需給の逼迫で、欧州連合(EU)にとって2023年後半に迎える冬は「さらに厳しい試練となる」と警告した』(『EU、次の冬「さらに厳しい試練に」 IEAがガス不足警告』 2022/12/13 日本経済新聞WEB版)。フランスは、スペインやポルトガルとイベリア半島のLNG基地などからフランスを経由してEUと相互接続する海底パイプラインを新設することに合意した。しかし、スペインとドイツなどが提案するピレネー山脈を経由するパイプライン計画なら建設費用推定3億7千万ユーロ、工期8カ月で接続できるのに対し、海底パイプラインの工期は5年以上と、工期も建設費用も大幅に増えると予想されている(「イベリア半島とフランスを結ぶ海底パイプラインの新設で合意(スペイン、フランス、ポルトガル) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ 2022/10/24)。わざわざ次の冬には完成が間に合わないパイプラインを建設するなど、フランスには何か思惑があるのだろうか?
エネルギー不足は、ノルドストリームを破壊されたドイツも同様だ。ウクライナへの気前のいい武器支援で、武器弾薬も不足している。そんな中、ポーランドなどからは戦時の賠償を迫られている。国連の敵国条項の対象国であるため、大戦開始直前のドイツ系住民への弾圧(戦後の国際政治状況下で無かったことにされているが実際にはあったようだ)など、不満はあっても大戦で確定した事項に反した行動をとることは許されない。先日、ドイツ検察は国家転覆未遂で25人を逮捕したが(「ドイツ検察、国家転覆未遂で25人逮捕 議会襲撃を計画か」 2022/12/7 日本経済新聞WEB版)、国際協調でがんじがらめになり、自国を顧みない政府に対する不満があるのではないだろうか?
エネルギー不足は日本も同様で、光熱費は上昇傾向だ。日本政府は来年の3月31日まで節電の協力を呼びかけている(「冬の節電期間開始 ポイントで後押し、需給なお厳しく」 2022/12/1 日本経済新聞WEB版)。補助金でガソリン価格は抑えられているが、補助金投入はいつまでも続けられるわけではない。そんな中、防衛費増額に伴い、与党は増税をもくろんでおり、「増税には法人、所得、たばこの3税を充てる方針を示し」(『岸田首相「防衛力強化が外交の説得力に」 記者会見』 2022/12/16 日本経済新聞WEB版)ているが、所得税増税は市民生活をさらに苦しくする。英国の状況は日本人にとって他人ごとではない。
今回のウクライナ事変で明らかになったことは、ロシア製兵器の優秀性である。ロシアの極超音速ミサイルによる攻撃は実戦で成果を残したが、米国はまだ実験段階にある。ウクライナという「実戦試験場」での経験はフィードバックされ、不具合などが改良されてさらに優秀さを増すと考えられており、ロシアの「鉾」と米国の「鉾」の性能には雲泥の差がある。日本政府は「反撃能力」の獲得などといっているが、相手の「鉾」との間には「反撃能力」を無効化させるような追いつけないほどの性能差があるのだから、「反撃能力」獲得を目指すより、人口を分散させたりして全滅を避け、生き残る方法を考えた方が賢明でないのか?
バイデン政権では、迎撃ミサイル「パトリオット」をウクライナへ提供することが検討されている(『米国とロシア「パトリオット」で駆け引き 長期関与巡り』 2022/12/16 日本経済新聞WEB版)。ウクライナへ武器支援したため、武器弾薬の不足で自国防衛さへ危うくなっている米国政府にとっては大きな賭けだろう。支援武器を横流しされないようにするために、アメリカ政府の人間が設置場所で立ち会う必要もある。また、「パトリオット」がロシア軍によって破壊されれば、米国製兵器は高いわりに性能はたいしたことないという評判が立つことになる。そうなれば、米国製兵器は「同盟国」のような米国としがらみのある国にしか売れなくなる。米国の兵器産業にも試練の時期である。
追記:
2022/12/20
↓パトリオットミサイル(PAC3)は、フーシ派のミサイルからサウジアラビアを守れなかった。
フーシ派のミサイルを撃ち落とせなかったPAC3は頼りになるのか 2017/12/6 ニューズウィーク日本版
↓イエメンは、PAC3を破壊したとも主張している。
イエメン軍が、サウジのミサイル防衛システム・パトリオットPAC-3を破壊 2018/2/10 parstoday
スカッドミサイルをベースにしたフーシ派のブルカンH-2が、PAC3の防衛網をすり抜け着弾できるなら、それより性能の優れたロシアの最新兵器がPAC3の防衛網をすり抜け、PAC3を破壊する可能性は十分にあるだろう。