「どすこい行きますか！」
「はい！」
２０２４年パリーグペナントレース
打席に一人の選手が入った
山川だった
チームはソフトバンク！
「また戻ってこれたんだな、自分は」
「この場所に！」
「バッターボックスに！」と山川
もう二度と立てないかもしれないと思った
NPBのバッターボックス！
でも立てた
しっかりと自分の２本の足で！
山川に手を差し伸べてくれたチームがあった
ソフトバンクだった
昨年までいた西部ライオンズと
同じパリーグのチーム、ソフトバンク！
３年連続でオリックスに敗れ、
優勝を逃（のが）していた
投手王国、オリックス！
ソフトバンクはその牙城を崩せなかったのだ
山本がいたからだ
節制の鬼、山本由伸！
人生のすべてを野球にささげた男、山本由伸！
ソフトバンクはその球を打ちあぐねた
というか全く打てなかった、といっていい
格が違っていた
もうそういうしかないくらいだった
まるで昭和の大投手、金田正一を彷彿とさせる
令和の大投手、オリックス山本！
ソフトバンクも他のライバルチームも山本に対して
手も足も出なかった
仕方がない、格が違うんだから
でも今年は山本がいない、オリックスに！
山本はアメリカ大リーグドジャースに移籍した
夢を追って！
それは日本一だけでなく、
ワールドチャンピオンをめざしての雄飛だった
ソフトバンク、チャンス到来！
今年こそ優勝への千載一遇のチャンス！
そしてソフトバンクは山川に声をかけた
昨年不祥事を起こし、長く試合に出ていなかった
パリーグの主砲に！
「山川、ぜひウチに来てくれ！」と
「もう一度ウチで野球をやらないか！」と
そして山川はソフトバンクにやってきた
偉大なホームラン王の王貞治が会長を務める
ソフトバンクの門を叩いた山川！
山川は去年までの実績をすべて忘れて
一介の選手になっていた
そして２０２４年パリーグ公式戦の打席へ！
打席に立った山川は来たストライクを思いきりスイングした
打球は美しい放物線を描き、
レフトスタンドに飛び込んだ！
ゆっくりとダイヤモンドを一周する山川！
もう夢見心地だった
山川はダイヤモンドを回りながら
再び自分が野球がやれている喜びをかみしめた
そして彼はベンチに戻ってきた
そして山川はスタンドのファンに向かって
両手を大きく広げて叫んだ！
「どすこい！」と！
スタジアムのファンも声を出して応援してくれた
「どすこい！」と！
「いやあ、うれしいなあ！」
山川の眼に熱い涙があふれた
