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あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

金の翅の居場所(ニアス中心)

2020年05月16日 | 創聖のア◇工リ〇ン関係

 

 

これは2007年11月11日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。

ピエールの過去生「ナイトシェード」ばかりかグレンの過去生もそのまま俺設定で出てます。

腐的表現がありますので、大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

<金の翅の居場所>


渡された書類を受け取り、新米兵士グレンは頬を上気させた。
手渡したのは緋色の天翅アポロニアスの官吏ナイトシェードだ。
彼は、アポロニアスの傍付きの官吏として、機械天翅のエレメントとして、
または城きっての救護隊長として、その名を馳せている。
アリシア城では有名な剣士だ。
機械天翅のエレメント候補としてアリシア城に来たばかりのグレンは、
その蒼い目、蒼い髪を見るだけで緊張してしまう。

「分かったか?グレン」

名を呼ばれグレンは我に返る。
慌てて視線を戻すと、サファイアのような一対の青い碑石が見返して来た。
肩まで掛かった長い髪に、真っ白な鷲の羽根が射してある。
その羽根が生き物のように揺れた。
ナイトシェードは長身で寡黙な男だった。
鼻筋の通った均整な顔立ちが男らしさを際立たせている。

「はははは、はい!」

背筋を伸ばし大声で返事をすると、剣士の無表情な顔は一転して、悪戯っ子のような表情を見せた。
これがナイトシェードが人好きされる理由なのかもしれない。
普段は憮然としてとっつき難そうな彼は、本当は人懐っこく面倒見がいいと、城の皆が知っている。
只、部族の掟なのか、本来の性質なのか、かなりの人見知りで内弁慶なのだ。
気を許した者にしか心を開かない。
彼の心を占めているのは数人だけなのだ。

「そんなに畏まらなくていい。アポロニアスは自室にいるだろうから、
この書類を手渡し読んでおくように伝えてくれればいい。
後で私も行くから、その事も伝えておいてくれ」

目を輝かせ大きな返事をするグレンにナイトシェードは微苦笑する。
この城に来たばかりのグレンは、街を焼き払われ親を亡くし、捨てられた子猫のように警戒心が強かった。
飛び抜けた戦闘力と見え隠れする特殊能力から、エレメント候補としてアリシア城へ連れて来られた。
その際、街を焼き払ったのは、太陽の翼アポロニアスと思い込み、
彼を責め、その命まで狙おうとした。
今では、それが全て勘違いと分かりアポロニアスとは和解している。
しかし二人の関係は今でもぎこちなく、ナイトシェードは心配していたのだ。

「それでは、行って来ます」

憧れの剣士に声を掛けられ上機嫌のグレンは、預けられた書類を手に王室の者の住む塔へと向かった。


椅子にも座らずアポロニアスは立ったまま、じっと窓から見える風景を眺めていた。
深まる秋は物寂しさを感じずには居られない。
葉が自らの髪と同じように紅く色付いていく様は、まるで世界が炎に呑まれていくかのような気さえした。
アポロニアスは小さく嘆息すると、またあの出来事を思い出す。
あの青年が叫んだ言葉。

「何であんたが此処でのうのうと暮らしてるんだ!大勢人を殺している癖に!何故だ!?」

青年の村は堕天翅の攻撃で焼かれ、家族は皆殺され、攫われてしまったという。
それが自分の仕業だと言うのだ。
結局街が焼かれた時期から、アポロニアスが加担した襲撃ではなかった事が分かったのだが、
もし自分が命じた攻撃だったら、自分が攻め滅ぼした街だったらと思うと、
胸が締め付けられるように苦しかった。
銀の瞳を憎しみの炎で揺らし、短剣だけで向かってきた青年に、アポロニアスは全く動けなかった。
自分はまだ倒される訳にはいかない。
それなのに、余りもの苦しさに殺されて楽になりたいと願ってしまったのだ。

「……私は…とんだ臆病者だ……。そして…卑怯者だ……」

呻くように囁くとアポロニアスは静かに涙を落とした。


遠慮がちなノックにアポロニアスは急いで頬を拭う。
ナイトシェードだろうかと平静を取り繕う。
しかし問うと今一番逢いたくないあの青年の声がした。
ぎくりと身体を緊張させる。
しかし追い返す訳にも行かず、静かに入るように命じた。
あの時と同じように音も無くドアが開かれる。

「お寛ぎの処、申し訳ございません。ナイトシェード様の使いで参りました」
「いや、大丈夫だ。詳しく聞こう」

グレンは軽く礼を述べるとナイトシェードの伝言を明確に伝え、
断りを入れてからアポロニアスに書類を手渡した。
アポロニアスは緊張しつつも無表情な顔を装い、書類を受け取ると簡単に目を通した。

「分かった。下がっていい」

視線を逸らし、アポロニアスは書類を飾り棚に置く。
グレンは頭を下げたまま、その姿を覗き見た。
そして驚愕する。
アポロニアスの頬に残る涙の痕を見てしまったのだ。
目許が仄かに赤くなっている。
きっと先程まで泣いていたのだろう。
グレンと視線と合わそうとしなかったのは、そのせいなのだ。
命まで狙ったのだ。
自分は嫌われていると思い込んでいた。
嫌われているのではない。
恐らくは自分という存在が、殺戮の天翅として罪の意識を呼び起こさせるのだ。
自分が苦しませている。
グレンは言いようも無い後悔に苛まれる。
今では、この天翅がどれだけ人の為に尽力し、傷付いているか教えられているのだ。

「あの…太陽の…いえ、アポロニアス様…」

名を呼ばれ、アポロニアスは僅かに肩を揺らし、ゆっくりと銀髪の青年を振り返る。

「失礼を承知で申し上げます」

紅玉の瞳が陽炎のように揺れているのを意識しながらも、グレンは続ける。
この天翅を救いたかった。

「あなたの罪は消える事は無いでしょう。でも…」

グレンは伏せていた視線を上げ、アポロニアスを見詰めた。
それが自分の本意だと知って貰う為に。

「あなたが居たいと思う場所に、ずっと居ていいと思います。
そこがあなたの居場所だと信じているのならば願いはきっと叶います」

アポロニアスは大きく目を見開く。
そしてその意味を噛み締める。
ずっと夢見て叶わなかった願い。
自分を自分として認めてくれる居場所。
自分を自分として見詰めてくれる人々。
其処に居ていいのだろうか。
唇を戦慄かせ堪えるが、自然と涙が溢れてきた。
しかし部下の前で泣くなとナイトシェードにきつく言われているので、何とか零さないように堪える。
そしてそっと涙を拭うと、春風のようにふわりと微笑み掛ける。
グレンはその余りもの可憐さに言葉を失った。
まるで魅了されているかのような錯覚さえしてしまう。

「ありがとう…」

仄かに花の薫りがするのは気のせいだろうかと危惧しながら、グレンは急いで頭を下げた。
普通なら首が飛ぶような失礼な事を言ったのだ。
太陽の翼なら灼熱の炎で消し炭にされてしまうかもしれない。
グレンはこのままアポロニアスの綺麗な顔を見ていたいと思う反面、
早く床に頭を擦り付けて命乞いをしなければと言う二つの思いで葛藤していた。
暫くして部屋に入って来たナイトシェードに「何、愉快な顔をしているんだ?」と、
髪の毛を掻き回されるまで、グレンはその場で青くなったり赤くなったりしていた。
アポロニアスは二人の遣り取りに笑いながら、そっと「私の…居場所…」と囁いた。


<了>


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私の書く大きい人はすぐ泣きます。男の人が涙脆いのが好きなんです。

 

 

 

 



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