BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説22-11「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-03-22 11:51:17 | ★ディスティニー22章
ー親父さんも、自分も業界の人間だから男同士なんて見聞きはしていたけれど、でもまさか自分の息子がこんなことになるなんてと言ってた。
 そして、諒には耳の痛くなるようなことも…
ー…お前たちには悪いけど、親父さんには自分の息子が恋愛的に男である麻也を好きになってしまったことがかなりショックだったらしい。
「はあ…」
 だがこのとき諒はそのことの本当の意味をまだわかってはいなかった。
ーあとお前は聞きたくないだろうけど、鈴音には響子は、自分が19歳で今の旦那を前の妻から奪ったことを話して、その気にさせていたらしい。麻也があまりにも素っ気ないのでそんなことまで言って焚き付け続けたらしいんだ。
 諒はようやく、頭の中が「普通のパニック」程度になってきていた。
 社長が言うには鈴音の事務所の方はそんな鈴音の暴走を最初は止めていたけれど、新人としても期待ほど売れてないので、売名にでもなれば、と響子がついているのをいいことに黙認どころか最近では積極的に手伝っていたらしい。
ーそれがあの雑誌の写真だよ。ホテルの廊下での。
 そして、諒は、社長の何げない言葉にはっきり傷つくことになる。
ーあの女性、そこまでしてお前たちを引き裂きたかったんだな…
(それは俺が響子を…無碍にしなければ…ってこと?)
 動揺しながらももっと強く知りたいことに諒は気づく。
 あのオヤジ…鈴音の社長の坂口と麻也は…しかし尋ねる勇気が出ない。すると社長はそれを察したらしく、
ー坂口のオヤジほどの強欲なドンが黙認だったっていうのは、個人的にそれを望んでいたってことだろう、って、藤田さんは。
 そして、
ー俺が思うには、あのドンとやらはきっと何としても麻也のことを手に入れたかったんだろう。つまりそれは、麻也はあの男のものじゃなかったってことだ。
「…」 
 諒は携帯を握ったまま愕然としてしまった。
それが伝わったのだろう。気の毒に思ったのか社長は、
ーあと、藤田さんがこっそり教えてくれたけど、あの響子という人は病気ということにして、今の仕事を全部降板させてそのまま女優をフェードアウトにするんだって。
「え…?」
ー旦那の関村氏は大御所の脚本家だ。藤田さんへの詫びの意味もあるんだろう。女房に顔に泥を塗られた形で…混乱してるそうだけど離婚の話もあるって言うから彼女は全てを失うんだろう…夫がいながらお前に勝手に本気になったんだから、離婚されても不思議はないよな。でも彼女を増長させた自分にも責任があるからって悩んでるらしい…
 あまりのことに諒は驚き、しかし、これまでの不満を社長には知って欲しかったせいかか、つい口走ってしまった。
「俺なんて人工授精に協力してくれって言われましたよ。旦那さんからも。いくら若い奥さんが可愛いからってわがまま聞きすぎだったと思いますよ。こっちは大迷惑ですよ」
ーえっ? それ本当だったのか?
社長はびっくりしていたが、
(知ってたなら守ってくれよ…)
諒はがっかりしてしまった。