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答えはいつでもそこにある。『徒然草』の人生訓【動画紹介】ヒトコトリのコトノハ vol.63

2024年07月19日 | 動画紹介
☆本記事は、Youtubeチャンネル『本の林 honnohayashi』に投稿された動画を紹介するものです。
 ご興味を持たれた方は是非、動画の方もチェックしてみて下さいね!

 ●本日のコトノハ●
  筆をとれば物書かれ、楽器をとれば音をたてむと思ふ。
  盃をとれば酒を思ひ、賽をとれば攤うたむことを思ふ。
  心は必ず事にふれて来る。かりにも不善の戯れをなすべからず。

 〔現代語訳〕
  筆を手に取ると自然、物を書く気になり、楽器を持つと音を立てようと思ふ。
  盃を持つと酒を思ひ、賽を持つと雙六をやらうと思ふ。心は必ず物事に関係して起る。
  だから仮りにもよくない戯れをしてはならない。
                       (―第百五十七段より)
 『改訂 徒然草』今泉忠義訳注(1957)角川書店


 時々、無性に『徒然草』を読みたくなることがあります。
 職場や家庭での人間関係がうまくいかなくなったり、外出先でたまたま見かけた嫌な光景や、なぜか居合わせてしまう気まずい空気の現場など。
 いろいろと骨折って、良い結果を得ようとしても、なかなか思う通りにはならなかったり。

 一つ一つは小さなことがいくつも重なって、しまいには大きなストレスとなってのしかかってくるのです。
 そんな時、『徒然草』の妙に達観した「世の中ってこうだよね」と言わんばかりの雰囲気が、苦しい気持ちを軽くしてくれるのです。

 『徒然草』に書かれていることは、決してポジティブなことではありません。
 流行の自己啓発本のように、読み手の意識を変えようなどという小細工もありません。
 ただただ、物事の道理とはこうであろうと、淡々と教えてくれているだけなのです。

 その内容の中には現代社会に当てはめて考えられることも沢山あり、昔から人間社会というものは根本的に変わっていないのだと思わされます。
 著者の吉田兼好がまともな価値観を持っているとか、『徒然草』に書かれていることが全て正しくて、その考えに従うべきだとは思いません。
 自分にとって都合の悪い出来事、不愉快な人間との出会い、望むと望まざるとに限らず起こってしまう不幸に対して、昔から、人々はこんなふうに思い、対処をしてきたのだよという、教訓というよりは処世の知恵のような印象を受けます。

 『徒然草』の良いところは、一つ一つのエピソードが簡潔であり、それでいて説明不足でもない点です。
 物事を端的にズバズバと捌いていく様が痛快で、読んでいると胸のすく想いがするのです。
 私自身も、簡潔に核心をついた言葉で、なおかつユーモアを含ませたオシャレで格好いい文章を書きたいと、常日頃思ってはいますが、つい、だらだらとどうでもいいことを書き連ねてしまい、結局何が言いたかったのか分からなくなってしまいます。
 まさに、「筆をとれば物書かれ」です。なんだかこちらを見透かされているような兼好の言葉を念頭に置きつつ、簡潔でかつ面白い文章がかけるように、今後も精進していこうと思います。



ヒトコトリのコトノハ vol.63


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