気になる異性と仲良くなるにはどうすればよいか?という問題に取り組んだことのある人は多いと思います。
そして、おそらく、人それぞれ取り組み方は違うでしょう。
《落窪物語》が書かれた平安時代の貴族社会であれば、たいていは男性が女性に歌や手紙を送り、恋心を伝えます。
女性の方から先に、手紙や歌で気持ちを伝えてくる場合は少なかったようです。
女性は家でジッと男性からのアプローチを待つ身でした。
ここでふと、私はある一つの疑問が浮かびました。
『もし、自分がその時代に貴族の娘として生まれて、誰も手紙や歌を送ってくれる男性がいなかったらどうしよう!』
誰からも何のアプローチがないからと言って、現在のように婚活パーティーや合コンに参加して積極的に自分をアピールすることもできません。
そもそも、平安時代の身分の高い家の娘が一人でこっそり家を出て遊びに行くことなどありえないことだったでしょう。
もちろん、娘の親も、家から簡単に出る機会のない娘が誰とも出会わず、一生独身で過ごすことのないように、娘がある程度の年齢になると、宮中へ出仕できるように取り計らうのが一般的でした。
あるいは、生まれた時から結婚相手(いわゆる許婚者)が決まっている場合もありました。
最近、結婚もせず、付き合っている人もいない人に、その理由を尋ねてみると、「出会いがない」という答えが返ってくることが多いそうです。
平安時代に、自分の娘を宮中へ働きに出すということは、親にとっては娘を有力な血筋の家の子息と親しくさせる好機でもありました。
つまり、親が出会いの場を用意するようなものです。
運が良ければ、帝の目に留まり、寵愛を受けることも可能性は低いながらゼロではなく、そうした親の期待や思惑を背負って、娘たちが良縁を得ようと宮中で、日々火花を散らしていた様子は、清少納言の書き残した《枕草子》からも窺い知ることができます。
さて、《落窪物語》の主人公、女君は幼くして母親を亡くしてしまい、継母の北の方からは娘としてではなく、下働きの召使のような扱いを受けていました。
これでは、当然、宮中へ出仕できるような状態ではなく、女君はただ一人、部屋で言いつけられた繕い物をする日々を送っていたのです。
世の中の男性は、誰一人、女君の存在を知ることがないのですから、手紙や歌が送られてくることはありません。
女君自身も、実母のいない自分が両親のいる名門の姫君と同じような人生が送れるとは思っていませんでした。
出会いがないどころか、結婚もできず、子供を持つこともないと、自分のみじめな運命に絶望していた、そんな時、男君から思いもよらないアプローチの手紙が届いたのです。
女君にとっては、生まれて初めてのラブレター。しかも、相手は左大将の息子、左近の少将というエリート男子です。
女君にしてみれば、「そんなきちんとした身分の男性が、自分のような頼りない立場の女と釣り合うわけがない。真剣に付き合う気持ちがあるとは思えない。きっと、遊ばれて、捨てられてしまうだろう。だったら、関わらない方がよい…」
そう考え、女君は男君の歌や手紙に一切返事をしませんでした。
反応がなければ、諦めて他の女性へ興味を向けるだろうと思っていたのです。
ところが、宮中でも美男子ともてはやされ、多くの女性から好意を寄せられていた男君は、自分になびかない女君にかえって興味を持つようになるのです。
恋の駆け引き、なんて言いますが、女君にはそんなつもりはなく、ただただ身分違いの分不相応の関係から身を遠ざけたいだけだったのですが、男君は焦らされている気分になったのかもしれません。
ここで、冒頭の問題が浮上してきます。
気になる異性と親しくなるには、いったいどうすればよいか?です。
実際、男君が女君にどんなアプローチをしたのか見て行きましょう。
最初の歌を送っても、女君から返事はありませんでした。
しかし、一度で諦める男君ではなく、続けて第二、第三、第四と、まめに歌を送りました。
けれども、女君はすでに書いた事情から、気が進みませんし、加えて、北の方から頼まれる繕い物に追われて、ゆっくり手紙を書く暇さえありません。
女君には女君の事情があるとはいえ、再三のラブレターに一度も返事をもらえなかったら、いい加減諦めてもよさそうなものですが、女君が慎重な性格だということを知っていたので、男君はまだチャンスはあると、望みを捨てずにいました。
二人の間を取り持つ侍女・阿漕は、女君の気を引くためのアイテムが必要だと進言します。
新しいアプローチ法です。
男君の妹で、宮中に出仕している姫が沢山絵巻物を持っているので、それを見せるという口実で親しくなれば、というものです。
物で釣る作戦ですが、これは男君にはしっくりこなかったようで、代わりに自分で落書きのような絵を描いて、歌と一緒に女君に送るのです。
☆第7位☆
つれなきを うしと思へる 人はよに
ゑみせじとこそ 思ひがほなれ
《落窪物語》巻の一より 男君の歌
渋い顔をした男の絵を描き、君が冷たいから僕は「笑顔にならないよ」ということと「絵なんか見せてあげないよ」をかけたダジャレの一首を送ったのです。
結局、女君に会いたくてたまらなくなった男君が、こっそり女君のもとに忍び込み、二人は結ばれます。
最後は実力行使でしたが、平安の貴公子・左近の少将の女性へのアプローチは、粘り強く、安易な小細工はせず、最後は思い切りよくという感じでした。
ご参考までに。。。(ならなかったかな?)
そして、おそらく、人それぞれ取り組み方は違うでしょう。
《落窪物語》が書かれた平安時代の貴族社会であれば、たいていは男性が女性に歌や手紙を送り、恋心を伝えます。
女性の方から先に、手紙や歌で気持ちを伝えてくる場合は少なかったようです。
女性は家でジッと男性からのアプローチを待つ身でした。
ここでふと、私はある一つの疑問が浮かびました。
『もし、自分がその時代に貴族の娘として生まれて、誰も手紙や歌を送ってくれる男性がいなかったらどうしよう!』
誰からも何のアプローチがないからと言って、現在のように婚活パーティーや合コンに参加して積極的に自分をアピールすることもできません。
そもそも、平安時代の身分の高い家の娘が一人でこっそり家を出て遊びに行くことなどありえないことだったでしょう。
もちろん、娘の親も、家から簡単に出る機会のない娘が誰とも出会わず、一生独身で過ごすことのないように、娘がある程度の年齢になると、宮中へ出仕できるように取り計らうのが一般的でした。
あるいは、生まれた時から結婚相手(いわゆる許婚者)が決まっている場合もありました。
最近、結婚もせず、付き合っている人もいない人に、その理由を尋ねてみると、「出会いがない」という答えが返ってくることが多いそうです。
平安時代に、自分の娘を宮中へ働きに出すということは、親にとっては娘を有力な血筋の家の子息と親しくさせる好機でもありました。
つまり、親が出会いの場を用意するようなものです。
運が良ければ、帝の目に留まり、寵愛を受けることも可能性は低いながらゼロではなく、そうした親の期待や思惑を背負って、娘たちが良縁を得ようと宮中で、日々火花を散らしていた様子は、清少納言の書き残した《枕草子》からも窺い知ることができます。
さて、《落窪物語》の主人公、女君は幼くして母親を亡くしてしまい、継母の北の方からは娘としてではなく、下働きの召使のような扱いを受けていました。
これでは、当然、宮中へ出仕できるような状態ではなく、女君はただ一人、部屋で言いつけられた繕い物をする日々を送っていたのです。
世の中の男性は、誰一人、女君の存在を知ることがないのですから、手紙や歌が送られてくることはありません。
女君自身も、実母のいない自分が両親のいる名門の姫君と同じような人生が送れるとは思っていませんでした。
出会いがないどころか、結婚もできず、子供を持つこともないと、自分のみじめな運命に絶望していた、そんな時、男君から思いもよらないアプローチの手紙が届いたのです。
女君にとっては、生まれて初めてのラブレター。しかも、相手は左大将の息子、左近の少将というエリート男子です。
女君にしてみれば、「そんなきちんとした身分の男性が、自分のような頼りない立場の女と釣り合うわけがない。真剣に付き合う気持ちがあるとは思えない。きっと、遊ばれて、捨てられてしまうだろう。だったら、関わらない方がよい…」
そう考え、女君は男君の歌や手紙に一切返事をしませんでした。
反応がなければ、諦めて他の女性へ興味を向けるだろうと思っていたのです。
ところが、宮中でも美男子ともてはやされ、多くの女性から好意を寄せられていた男君は、自分になびかない女君にかえって興味を持つようになるのです。
恋の駆け引き、なんて言いますが、女君にはそんなつもりはなく、ただただ身分違いの分不相応の関係から身を遠ざけたいだけだったのですが、男君は焦らされている気分になったのかもしれません。
ここで、冒頭の問題が浮上してきます。
気になる異性と親しくなるには、いったいどうすればよいか?です。
実際、男君が女君にどんなアプローチをしたのか見て行きましょう。
最初の歌を送っても、女君から返事はありませんでした。
しかし、一度で諦める男君ではなく、続けて第二、第三、第四と、まめに歌を送りました。
けれども、女君はすでに書いた事情から、気が進みませんし、加えて、北の方から頼まれる繕い物に追われて、ゆっくり手紙を書く暇さえありません。
女君には女君の事情があるとはいえ、再三のラブレターに一度も返事をもらえなかったら、いい加減諦めてもよさそうなものですが、女君が慎重な性格だということを知っていたので、男君はまだチャンスはあると、望みを捨てずにいました。
二人の間を取り持つ侍女・阿漕は、女君の気を引くためのアイテムが必要だと進言します。
新しいアプローチ法です。
男君の妹で、宮中に出仕している姫が沢山絵巻物を持っているので、それを見せるという口実で親しくなれば、というものです。
物で釣る作戦ですが、これは男君にはしっくりこなかったようで、代わりに自分で落書きのような絵を描いて、歌と一緒に女君に送るのです。
☆第7位☆
つれなきを うしと思へる 人はよに
ゑみせじとこそ 思ひがほなれ
《落窪物語》巻の一より 男君の歌
渋い顔をした男の絵を描き、君が冷たいから僕は「笑顔にならないよ」ということと「絵なんか見せてあげないよ」をかけたダジャレの一首を送ったのです。
結局、女君に会いたくてたまらなくなった男君が、こっそり女君のもとに忍び込み、二人は結ばれます。
最後は実力行使でしたが、平安の貴公子・左近の少将の女性へのアプローチは、粘り強く、安易な小細工はせず、最後は思い切りよくという感じでした。
ご参考までに。。。(ならなかったかな?)
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