もっとも印象に残った球児
24.静岡
田中 健二朗 投手 常葉菊川 2007年 春夏
甲子園での戦績
07年春 1回戦 〇 2-1 仙台育英(宮城)
2回戦 〇 10-0 今治西(愛媛)
準々決勝 〇 2-1 大阪桐蔭(大阪)
準決勝 〇 6-4 熊本工(熊本)
決勝 〇 6-5 大垣日大(岐阜)
夏 1回戦 〇 12-4 日大山形(山形)
2回戦 〇 4-3 日南学園(宮崎)
準々決勝 〇 6-1 大垣日大(岐阜)
準決勝 ● 3-4 広陵(広島)
静岡と言えば『サッカー王国』と思われがちですが、
野球もなかなか強い。
長らく静岡、静岡商、浜松商などの公立勢が引っ張り、
それに東海大勢(旧一高、工業)が絡むという勢力図でしたが、
近年常葉菊川、常葉橘の常葉勢が絡んできて、
混沌とした状態となっています。
ワタシのイメージとしては、
静岡県は『夏の予選では全国のしんがりで代表校が決まる』地区というもの。
なんだか遅い決まり方だということが染みついています。
さて、
静岡勢でセンセーショナルを巻き起こしたチームといえば3校が思い浮かびます。
まずは73年の静岡。
植松、白鳥を中心とした”豪打”で勝ち進み決勝まで進出したチームです。
この年は”江川大会”と言われ作新の江川に注目が集まっていましたが、
打線では静岡がNO1.
江川を打ち崩すとしたら、この静岡しかなかったでしょう。
植松はこの後法政大学に進学し、
江川、金光(広島商)らと黄金時代を作り上げました。
そして78年。
この年はセンバツで浜松商が優勝。
大会前はまったく注目されていないチームでしたが、
浜松商得意の『粘りの野球』をこれほどまでに体現したチームはありませんでした。
エースの樽井、そしてキャプテンの森下らが印象に残りますが、
その森下主将は後年常葉菊川の監督になって全国制覇。
主将・監督として2度の全国制覇を体験する稀有な存在となりました。
その後長らく、
静岡の野球は『行きつ戻りつ』を繰り返してなかなか上位に進出できませんでしたが、
約30年の時を経て森下監督が率いて甲子園にやってきた常葉菊川は、
森下監督の現役時代の細かい野球とは全く対照的な、
『強気に打ちまくる&走りまくる』
という野球で全国を制覇しました。
07年センバツでは、
初戦で155キロの剛腕・佐藤の仙台育英を田中-戸狩の好投で破ると波に乗り、
2回戦では今治西に対して田中が17奪三振の快投。
田中はこの日、
本当に切れの良い速球を投げ込んで、
強打の今治西に付け入るスキを与えませんでした。
そして迎えた準々決勝。
相手はこの大会【絶対本命】と言われた大阪桐蔭。
驚愕のHRを連発する中田に対して、
田中は『これでもか』とばかりに内角の速球で勝負。
見事に抑えきって2-1で勝ち、
その後も勝ち進んで初優勝を成し遂げました。
準決勝、決勝こそ打ち込まれたものの、
田中投手は難敵ぞろいだった序盤の3戦での力投は見事。
特に大阪桐蔭戦は、
記憶に残る好投でした。
春のセンバツで全国制覇した常葉菊川は、
その後苦しみながらも夏の甲子園にたどり着き、
甲子園で再び躍動。
3回戦の日南学園戦は、
劣勢の8回に代打伊藤の起死回生の3ランで追いつきサヨナラ勝ち。
準々決勝ではセンバツの決勝の再現となった大垣日大戦で、
リベンジに燃える相手を返り討ち。
しかしこの大会、
春に見せたような投手陣の安定感がなく、
厳しい試合の連続を何とかすり抜けるという勝ち方でした。
田中投手も、
春のいい時に比べると今ひとつという内容。
それでも勝ち進むところにこのチームの凄さもありましたが、
準決勝の広陵戦では、
投打に充実しきった広陵に常に試合を支配され続けての敗戦。
夢の春夏連覇はなりませんでした。
町田、酒井、長谷川、石岡、伊藤らをそろえた打線は破壊力十分でしたが、
なんといってもその守りを一手に引き受けて好投した田中投手の奮闘が、
このチームのベースになっていたと思われます。
『静岡の野球を変えた』
とまで言われた常葉菊川は、
翌年も戸狩投手を押し立て前年にも増す強打で決勝に進出しました。
3回戦の倉敷商戦でのビハインドを一挙にひっくり返す5回の7点。
準々決勝・智弁和歌山戦での1イニング10点。
準決勝・浦添商戦での1イニング9点など、
ここぞという時にたたみかける打線の迫力はものすごいものでした。
しかし、
エース戸狩が肘を痛めて、
毎試合大量失点を喫しながらの【魂の打撃戦】に持ち込んだチームでしたね。
結局決勝では序盤に戸狩が力尽き、
大阪桐蔭に前年選抜のリベンジを手痛い形で許してしまいましたが、
この07,08年の2年間は明らかに高校野球界が、
常葉菊川を中心に回っていました。
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